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夏かぜ(手足口病等) 

夏かぜとは

 夏かぜはひとつの独立した病名ではなく、何種類もあるのが特徴です。エンテロウイルスとアデノウイルスが原因ウイルスです。

エンテロウイルスのかぜ

 エンテロウイルスは腸管ウイルスとも呼ばれ、ウイルスが腸管で増殖するのが特徴です。一般のかぜと同様に、飛沫(ひまつ)感染や経口感染で腸管に入り、そこで増殖して体内に入っていきます。病気は改善しても、腸管にいるウイルスはなかなか排除されず生き残り、そして便から排泄され、感染源になります。元気になってからも約1か月はウイルスが排出されます。症状のあるあいだだけ園を休んでも意味がないため、集団生活においての登園の可否は、子どもの症状で決めてください。そのためには、エンテロウイルスの特徴を保護者に理解してもらう必要があります。
 エンテロウイルスによる代表的な夏かぜが、手足口病(てあしくちびょう)とヘルパンギーナです。手足口病は字のごとく手、足、口に発疹ができる病気です。特に手のひら、足の裏に特徴的な水疱のある発疹ができます。ときに、手足口だけでなくひざ、おしりにも少し盛りあがった発疹ができます。口には口腔粘膜に軽い発疹や痛みの強い潰瘍(かいよう)のような口内炎などができます。
 口内炎が悪化するとものが食べられなくなり、困ることはありますが、1週間もすれば治ります。ほとんどの場合、熱は出ませんが、ときに微熱程度の熱が出ることもあります。 ヘルパンギーナは突然の高熱で始まり、ときに40度近く発熱することもあります。翌日熱が下がったにもかかわらず、非常にきげんが悪くなり、ものを食べることができなくなります。口内を見ると、のどの奥に潰瘍や口内炎ができており、のどが痛く食事ができない状態ですが、長くは続かず3~4日もたてば治ります。エンテロウイルス感染症は、ほかに全身に発疹ができる発疹症もあり、下痢嘔吐を伴う急性胃腸炎にもなります。目の白いところが出血して赤くなる出血性結膜炎も、実はエンテロウイルスが原因です。

無菌性髄膜炎の心配

 特に知っていただきたいのがエンテロウイルスによる無菌性髄膜炎です。頭痛・嘔吐などの症状のときにはこの髄膜炎を疑います。ときに意識障害にもなります。近年、手足口病の後、意識障害が起こり髄膜脳炎になるといった死に至るケースもある重症の病気が話題になりました。手足口病そのものは軽い病気ですが、その後こういった重症の髄膜脳炎に注意する必要があります。

アデノウイルスのかぜ

 アデノウイルス感染症には、のどの痛みのある咽頭炎や肺炎もありますが、夏かぜとして有名なのが咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)と流行性角結膜炎です。このふたつの病気は集団生活において登園基準のある病気です。咽頭結膜熱は発熱し、のどが赤く、目も赤くなる病気で、プールを介して感染することからプール熱とも言われています。 流行性角結膜炎は非常に感染力のある結膜炎で「はやりめ」とも言われています。家族全員に感染することがよくあるため、目に触れるタオルなどの共同使用を避けることが大切です。

エンテロウイルス感染症まとめ

・手足口病
 手、足、口、特に手のひら、足の裏に水疱のある特徴的な発疹ができる。口は、口腔粘膜に軽い発疹から痛みの強い潰瘍のような口内炎ができることもある。

・ヘルパンギーナ
 突然40度近い高熱で始まる。
 翌日熱が下がっても、のどの奥に潰瘍や口内炎ができ、のどが痛く、食事ができなくなる。

・無菌性髄膜炎
 頭痛・嘔吐などの症状、ときに意識障害にもなる。死亡するケースもあるため、重症の髄膜脳炎にも注意が必要。ほかに発疹症、急性胃腸炎、出血性結膜炎などがある。

アデノウイルス感染症まとめ

・咽頭結膜熱(プール熱)
 発熱し、のどが赤く、目も赤くなる。

・流行性角結膜炎(はやりめ)
 非常に感染力のある結膜炎。目に触れるタオルなどの共同使用を避ける。

夏の過ごしかた

 集団生活では一人でも流行する病気になると、次々と患者が出ます。夏かぜのようにいろいろなパターンを示す病気には、早い情報がとても重要です。夏かぜが発生したら園医や地域のかかりつけ医と密に情報交換をして早い対策が必要です。そういう意味で集団生活の場である保育者の病気に対する理解はとても大切です。
 夏は開放的になるうえ、蒸し暑いために生活リズムも乱れがちになります。生活リズムを整えることは、体力維持の基本であることを再確認してください。夏に限らず「早寝早起き」が生活の基本です。子どもたちは遅くとも夜10時までには寝かせたいものです。また、夏はどうしても基礎代謝エネルギーが多くなります。そのためにも午睡(ごすい)は大事な時間ですが、生活リズムに影響するほどの午睡は避け、1時間ほどにしましょう。1時間以上の午睡はかえってよくありません。そして日ざしが少し和らいでからまた外で元気に遊ぶことが、夜の睡眠を熟睡へと導きます。健康対策の基本は、このような生活リズムが大事であることを知ってください。

冷房とのつき合いかた

 なかなか寝かしつけることができない蒸し暑い夏は、冷房をうまく使いこなしましょう。冷房は使い方によっては決して体によくないものではありません。外気温より5度以上冷やすのはよくありませんが、少し冷やすことによって快適なサマーライフが送れることも事実です。就寝後の冷房は2時間が限度です。それ以上つけておくと、夏かぜを誘発することもあります。

夏かぜが発生したら

 園医や地域のかかりつけ医と密に情報交換をし、早く対処しましょう。集団生活の場にいる保育者の病気に対する理解はとても大切です。
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