interview MBA取得×USA 山本 雄士 (後編)

――帰国後は大学に戻らず、就職されたそうですね。

はい。本当は卒業後に公衆衛生大学院にも行ってみたいと思ったのですが、先生に「インプットばかりじゃなく、さっさと社会に貢献してこい」と言われ、それはもっともだと感じました。時間は限られているから、やるなら無駄なことはできないなと思い、すぐ就職しました。MBAを卒業した人は、投資銀行やコンサルティング会社に就職することが多いのですが、僕は本当に医療をよくするためにはどうしたらいいのか、自分のミッションを実現するにはどのポジションがいいかを考えました。その結果、政策サイドに近い科学技術振興機構(JST)と、実業サイドの医療ベンチャーの両方でやってみることに決めました。JSTではシンクタンク部門で研究開発戦略を立てるところに携わり、ベンチャーでは病気になる前の人にどうアプローチしていくかという部分に携わりました。その後、病気にさせない医療の実現に向けて、「誰もやらないなら自分でやろう」と思って起業して、現在に至ります。

さらに起業と同時期に、ケーススタディーを通じてこれからの医療を学ぶ「山本ゼミ」を始めました。ゼミをやろうと思ったのは、僕自身が海外で感じた、「これまで僕は自分で物事を考えたことがなかったのかもしれない…」という戸惑いがベースにあります。僕が一番つらかったのは、ディスカッションで自分の主張を述べる場面に立たされたときに、内なる何かを言葉にして語れないことでした。そのときに、日本でそういう訓練を受けていなかったことをすごく後悔したんですよ。学生のうちにそういうことを考えるチャンスを逃したら、後からが結構大変です。だから今の学生たちにも、「何のために生きている?」「何がしたい?なぜ?」といった質問をどんどん投げかけていかなくてはと思いました。

――ゼミでは、具体的にどのようなことを伝えているのでしょうか?

まず「医療はすばらしい!」ということを伝えています。今の医学生たちを見ていると、医療の未来に悲観的だったり、暗いイメージを持っている学生が結構多いんです。まだまだ全然医療のことを知らないのにもったいないですよ。それならば、今の時代の医療はより重要だし、これからもっとよくできるんだってことを伝えたいなと。
そして、参加者自身に気づきを与えることも大事にしています。これから先のキャリアをどうしていこうか考えたら、みんな悩むわけですよね。うっかりすると、凝り固まった価値観から抜け出せないと思うので、僕がビジネススクールで聞いたり学んだりしたキャリアパスの考え方も伝えていきたいと思っています。
実際のゼミの時間は、講義ではなくディスカッションスタイルです。「みんなの発言で作っていく授業だから、気がついたらどんどんしゃべるように」と言っています。そうすると、同じ日本の中で育っていても、人によって見方や感じ方が違うことを体感できると思うんです。参加者も、年齢・性別・社会的背景が違った人を敢えて集めていて、半分ぐらいは社会人なんですよ。
このゼミは、留学の疑似体験のようなものだと思っています。留学に行ってみると、確かに行くだけで気づくこともたくさんあるでしょう。でも、普段と違う経験をするための手段は、何も留学だけではないのです。みんなが留学できるわけじゃないし、転職できるわけではない。だからこそこのゼミで、僕が留学で得たのと同じような経験ができる時間をプロデュースしていきたいと毎回思っています。

山本 雄士
株式会社ミナケア 
代表取締役
1999年、東京大学医学部卒業。同附属病院などに勤務、循環器内科、救急医療などに従事したのち、2007年、ハーバード・ビジネス・スクール修了。現在、会社経営の傍ら、教育活動として山本雄士ゼミを主宰している。

MBAって何?

MBA(Master of Business Administration)は、経営大学院で取得できる修士号です。経営大学院は、ビジネスリーダーにふさわしい人材を短期間で育成することを目的としています。

具体的には、マーケティング、ファイナンス、人材マネジメントなどの経営実務に必要な専門知識や、論理的思考力などのスキルなど、経営に関わるノウハウを学ぶことができます。授業は実際の企業の事例を素材に、ディスカッション中心で行われます。

山本先生は、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得する中で学んだ一番大きなものは、一つの問題を多角的に捉え、責任をもって決断を下すという考え方だったと言います。経営大学院は、具体的なスキルだけでなく、マネジメントを行ううえでの姿勢や態度を学べる場だといえるかもしれません。

※一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース、早稲田大学ビジネススクールなどのホームページを参考に作成。教育機関によって、カリキュラムや教育目標が異なる場合があります。

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