医学生×宗教者(僧侶) 同世代のリアリティー

宗教者(僧侶) 編-(後編)

社会の苦しみに寄り添える人材を

医C:医師は診察などの場面で患者さんと接して、身体だけでなく心もケアしていかなければなりません。お坊さんも、弱った人に対してお説教をすることがあると思うんですけど、それはどのように学んでいくものなんですか?

僧D:同じお寺の住職が説教するのを聞いて学んだり、自分で勉強したりもしますが、やはりそういう弱っている方に対しては、押し付けがましくせず、一緒に共感することが大切なんじゃないかと思っています。

医A:いま病院実習をしているんですが、入院患者さんのなかには、もう施せる治療のない、終末期の方もいるんです。そういう方に対して、もちろん医療側からできるケアもありますが、同時に別の側面から患者さんの心をケアしてあげられればなあと思うことがあります。お坊さんが患者さんにカウンセリングなどを行う機会はありますか?

僧F:キリスト教には、病院など教会以外の場所で働くチャプレンという聖職者がいます。私の宗派では臨床仏教師という、病院で終末期ケアなどを行う仏教者を養成し始めたところです。仏教の立場から、社会のいろんな苦しみに寄り添える人材を育てていければいいですね。

医B:患者さんの心に寄り添うという役割を今は主に医師や看護師が担っているのですが、そういうところでお坊さんたちと協力していければ、患者さんにとってもいいですね。

お寺の敷居・病院の敷居

医A:医学部の学生は、「頭良いんでしょ」とか「お医者さんになるんだ、立派だね」など、色眼鏡で見られることが多いんです。その点、お坊さんも同じなのかなと思っていて、「お坊さんは品行方正であるべきだ」とか「優秀で曲がったことはしないはず」といった目で見られることが多いんじゃないですか?

僧D:そうですね、例えば絶対に遅刻しちゃいけないとか、そういうことを意識することはあります。ただ、仏教に対するイメージという意味では、違うものを感じることが多いです。みなさんは「葬式仏教」という言葉を聞いたことがありますか?現代の僧侶はお葬式でしか一般の人と接する機会がないということを揶揄する言葉で、仏教に対する悪いイメージとして定着してしまっています。もちろん、お寺の外に出て社会に広く働きかけようとしている僧侶も多いのですが、そういう悪いイメージを払拭するためには、自分たちの活動をもっと外に発信しなければならないという反省を持っています。

僧E:ホームレス支援を行っているお坊さんもいますし、僕はお寺で電話相談室をやっていて、悩みがある方はどんなことでもいいので電話を下さいというチラシを配っています。

医C:それは無料でやってらっしゃるんですか?

僧E:もちろんです。そして、情報発信と同じくらい大事なのは、お寺の敷居を下げていくことなのかなと思います。例えば悩みがある時に、ふらっと教会に行く人はいても、お寺に来る人って本当に少ないんです。でも僕たちとしては、ぜひ若い人にも気軽にお寺に来てもらって、話をしていってほしい。そのためには、お寺に対する敷居を今よりもっと下げるための活動をしていかなければなりません。

医B:うちの近くには、お坊さんがやっているカフェバーがありますが、それも仏教に対する敷居を下げるための働きかけの一つなんでしょうね。

僧F:そうですね。土日に写経の教室を開くお寺や、他宗派だと座禅の体験を行っている所もありますね。そういうものをきっかけにして、話しやすい場を作っていくのが大事だと思います。

医A:ちょっと思ったんですけど、その敷居を下げすぎると逆に有り難みが減るということはないんでしょうか?敷居が高いからこそ、葬式に来てもらった時に有り難みが増すという側面があるのではないかと思うのですが。

僧D:たしかに、有り難みとは少し違いますが、僧侶をやっていくうえで信頼関係はとても大切だと思います。けれど、敷居が高ければ信頼が増すという訳ではないですよね。信頼関係をどう築くかという観点に立てば、仏教をもっと身近に感じてもらい、既存の仏教に対するイメージを変えていくことの方が重要だと思っています。

医C:確かに医療の世界でも、「自分は医師だから偉いんだぞ」という態度の医師からは、患者さんが離れていってしまいます。大学でも、患者さんと同じ目線に立つようにとよく言われます。

医A:結局のところ、医師がみているのは病気じゃなくて、患者さんなんだ、ということだと思います。パソコンの画面やカルテばかりを見ている医師と、しっかりと患者さんに向き合って話を聞く医師では、得られる信頼は自ずと変わってきますから。今日は日頃お会いする機会のないお坊さんから話をお聞きできて、人の心への寄り添い方にもいろんな形があるんだなあと感じました。これもご縁ですね。ありがとうございました。


* この記事は、今回お話を聞いた僧侶の業務内容に即した一例です。

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