日本歯科医師会常務理事(歯科医師)
佐藤 徹先生

チーム医療のリーダーシップをとる医師。円滑なコミュニケーションのためには他職種について知ることが重要です。今回は口腔分野を専門とする職種である、歯科医師と歯科衛生士の2職種を紹介します。

歯科医師の専門性

佐藤先生口腔診療の専門家である歯科医師は、地域で歯科診療所を開業して一人で診察をするケースが多いです。みなさんも一度は診療を受けたことがあるでしょう。ひと言で口の中を診ると言っても、口腔に関わる職種は多岐にわたります。口腔外科や耳鼻咽喉科の医師はもちろん、看護師・言語聴覚士・管理栄養士など、摂食・嚥下障害や言語障害の分野で専門性を発揮する職種もいます。専門職同士の業務が重なりあうなかで、歯科医師の専門性はどのようなものなのでしょうか。

今回は日本歯科医師会の常務理事であり、自らも新潟市で歯科診療所を営む佐藤徹先生にお話を伺いました。

「口腔に関わる職種のなかでも、歯科医師は歯学の知識にもとづいて口腔内傷病の予防や治療にあたる専門家です。失われた口腔機能を入れ歯やインプラントなどで補填することは歯科医師にのみ許されていますし、近年は歯科疾患を予防するためのケアを求めて診療所に来る患者さんも増えています。今後はそういった我々の専門性を、医師側に発信していく必要があると考えています。」

スケジュール

これからの医科歯科連携

高齢化が進み自力で歯科にかかれない患者さんが増えるにつれて、歯科医師に訪問診療を望む声は大きくなっています。しかしそうした声に応えるためには、地域の歯科医師同士がチームを組むことなど、各々の診療所を閉じずに訪問できるような体制を築く必要があります。また歯科疾患のなかには、治療に多くの機器を必要とするものも少なくないため、そうした疾患の治療を在宅でいかに行うかは今後の課題だと言います。

「来院が難しい患者さんに訪問診療をすれば、むし歯の治療だけでなく、ご自分ではなかなか手入れの行き届かない口腔内をケアして、誤嚥性肺炎などを予防することができます。今は診療所が午後休診の日に訪問診療を行うことが多いのですが、今後は患者さんが診療を求めた時にすぐ駆けつけられる環境を作っていく必要があります。」

また、かかりつけ医が在宅の患者さんに対して歯科医師の診療が必要だと考える場合、現状では病院の歯科に依頼することが多いそうです。しかし今後は、地域の歯科医師がかかりつけとなり、継続して診療やケアをしていくことが求められます。

「私が開業している新潟市では、医師・歯科衛生士・理学療法士・市会議員などと情報交換会を開いています。今後より多くの患者さんを在宅で診ていくことになれば、医科と歯科の連携はますます重要になるでしょう。地域の医療資源を有効に活用するためにも、医師と歯科医師の情報交換を密にして信頼関係を築くことで、地域レベルの連携を進めていかなければならないと考えています。」

※この記事は取材先の業務に即した内容となっていますので、施設や所属によって業務内容が異なる場合があります。