10号-11号 連載企画
医療情報サービス事業“Minds”の取り組み(前編)(1)

EBMと診療ガイドライン

みなさんは「診療ガイドライン」を知っていますか?信頼できる診療ガイドラインをWEB上に掲載する医療情報サービス事業Minds(マインズ)の取り組みと活用方法を、2号にわたってご紹介します。
研修医になったあなたが担当するのは、80歳の大腸がんの患者さん。手術を行うのか、抗がん剤治療や放射線治療を選ぶのか、あるいはそれらを組み合わせるのか、治療方針を考えるよう指導医に言われました。手術にも開腹手術だけでなく腹腔鏡・内視鏡を用いた術式もあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。抗がん剤にも多くの種類があり、効果も副作用も異なります。さて、あなたは指導医に、どんな治療方針をプレゼンするでしょうか。そして、患者さんや家族にどのように方針を説明するでしょうか。

このように、多くの疾患には、様々な治療の選択肢があります。そんな複数の選択肢から、医師と患者は治療法を意思決定しなければなりません。その根拠の一つとなるのが診療ガイドライン(以下、ガイドライン)です。

今回は、日本で公開されたたくさんのガイドラインから、信頼できるガイドラインを収集して掲載し、医療関係者や一般の人向けにWEBページで公開する医療情報サービス事業Mindsを運営している、日本医療機能評価機構特命理事の山口直人先生、同機構EBM医療情報部部長の吉田雅博先生にお話を伺いました。

EBMの実践と診療ガイドライン

山口先生

――そもそもガイドラインとはどのようなものなのでしょうか。

山口(以下、山):みなさんの多くは、EBM(Evidence Based Medicine)という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。最新の臨床研究の成果を最大限に活かし、科学的な根拠に基づいた治療を行おうという考え方です。
ガイドラインは、EBMを実践するために、医学の分野で行われている幅広い研究の成果をまとめたものです。 ある疾患に対して、AとBという2つの治療があったとします。その疾患の患者さんの治療を選択するとき、一つの判断基準となるのは臨床研究の成果でしょう。しかし、世界中では、毎年2万件もの臨床研究の論文が発表されます。その全てに目を通し、またその信頼性を判断することは、なかなか医師の仕事をしながらできることではありませんよね。だから、学会などが疾患・症状について、多数の臨床研究に基づいた診療を行えるようにガイドラインを作っているのです。

――様々な研究の成果がまとめられているのがガイドラインなのですね。

吉田先生吉田(以下、吉):はい。そしてガイドラインにおいては、「益と害のバランス」を評価することが重視されています。医師はみな患者さんをよくしたいという思いがありますから、どうしても治療の良い面に目が向きがちです。けれど、治療の結果現れるのは必ずしも良いアウトカム(結果)だけではなく、悪いアウトカムもあります。どんなに大きな「益」が得られる治療でも、悪いアウトカム、すなわち「害」が大きいなら採用するべきではないですね。ある治療に対してどんなアウトカムがあるのかを総合的に明らかにし、その治療のポジティブな面もネガティブな面も平等に扱うことが、ガイドラインの特長なのです。

MindsのWEBページ

MindsのWEBページ、医療提供者向けカテゴリー一覧。例えば「がん」という大きなカテゴリーの下に、「胃がん検診」「肝癌」などの詳細なカテゴリーがあり、必要な診療ガイドラインを探すことができる。
URL:http://minds.jcqhc.or.jp/

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