地域包括ケアを支える取り組み SCENE04
医療・介護従事者をつなぐ(山形県鶴岡市)(前編)

医療機関や介護施設が連携して、一体的にサービスを提供できるよう、山形県鶴岡地区医師会が行っている取り組みを紹介します。

医療・介護従事者の相談を受け付ける

ここまでの話から、医学生のみなさんには、地域包括ケアを提供するためには様々な仕組みが必要であるとご理解いただけたと思います。では、みなさんが将来、地域の医療機関で働くことになったり、開業したとしたら、どのように対応しますか? 

目の前の患者さんには様々なケアが必要だとわかったとして、ケアを提供する体制を整えるためには、どの機関・施設と連携していったら良いのでしょうか。

大きな病院であれば、先に述べたように地域医療連携室などがあるかもしれませんが、中小病院や診療所などでは、専門の部門がないことも多くあります。こうした課題にうまく取り組んだのが、山形県鶴岡市にある地域医療連携室「ほたる」です。「ほたる」は鶴岡地区医師会内に設置されており、地域の医療機関・介護施設の連携をサポートする役割を果たしています。

地域には様々な医療機関や介護事業所が存在しています。しかし、それぞれの機関は目の前の患者・利用者のケアに精一杯で、なかなか他施設の持つ機能までは把握しきれません。そこで「ほたる」は、地域を俯瞰し、地域のほぼ全ての医療機関・介護事業所についての情報を集約したのです。「目の前の患者・利用者に必要なケアを提供したいが、どこに頼んでいいかわからない」という医療・介護従事者からの相談を受けて、適切な機関や事業所につなぐハブのような機能を担っています。

こうした医療・介護従事者からの相談を受ける窓口を担うのは、地域の医療資源を把握できる地域医師会が良いのではないかと、日本医師会は考えています。

 

地域包括ケアを支える取り組み SCENE04
医療・介護従事者をつなぐ(山形県鶴岡市)(後編)

医療・介護従事者に対する窓口機能

地域医療連携室「ほたる」は、地域の医療・介護についての総合的な相談窓口です。相談員1名と事務員2名が働いており、主に医療・介護従事者からの相談を受けて、適切な機関・施設同士の橋渡しを行っています。例えば、病院から介護サービス事業所を紹介してほしいと相談が来れば、地域や医療依存度などを踏まえたうえで適切な所を紹介しますし、利用者本人や介護サービス事業所から訪問歯科診療・訪問服薬指導などの要望があれば、それらを担う地域の歯科診療所・調剤薬局につなぎます。

また「ほたる」では、WEBサイト上で地域の在宅医療資源を検索し、地図上に表示することができる「在宅医療地域資源マップ」を作成しています。アクセスすると誰でも、医療機関や介護・福祉施設などを条件別に検索することができます。さらに、地域のショートステイの空き状況などは、利用申請の手続きをして、会員登録すると閲覧できる仕組みになっています。また平成23年度には、介護施設における医療依存度の高い利用者の受け入れ状況の調査を行いました。調査結果は「ほたる」の相談業務に役立てられているほか、地域の医療機関や介護施設にも提供されています。

(写真)「ほたる」の相談員、渡邊田鶴子さん

医療・介護従事者向けの研修会の支援

「ほたる」は、地域で行われる研修会を総括し、「顔の見える関係」の構築を総合的に支援しています。様々な団体が行っている研修会・講習会などの情報をカレンダー形式に集約し、WEB サイト上で発信しています。また、「ほたる」が現場のニーズを聞き取り、多職種を対象とした研修会の企画・運営を行うこともあります。市の長寿介護課と共催している「医療と介護の連携研修会」は2014年11月に第11回を迎え、176名の医療・介護従事者が参加しグループワークを行いました。最近では、認知症や終末期医療がテーマになることが多いそうです。

また「ほたる」では、介護サービス事業所などから研修講師の紹介依頼があれば、適切な人を探して仲介する役割も担っています。

(写真)2014年11月に行われた、医療と介護の連携研修会の様子

ソーシャルネットワーク「Net4U」

「ほたる」では、地域内の病院・診療所・訪問看護ステーション・調剤薬局・介護サービス事業所などが患者さん・利用者さんの情報を共有することができるソーシャルネットワーク「Net4U」を開発・活用しています。それまで電子カルテとして利用されていたシステムを、施設や職種を問わず、患者さん・利用者さんに関わる全ての職種がフラットに利用できるツールとして全面改定したのがこの「Net4U」です。「Net4U」を活用することで、ケアマネジャーは主治医と連携が取りやすくなり、また医師も、それまで介護側しか持っていなかった患者さんの生活の情報を知ることができるようになったそうです。

No.13