日本医師会の取り組み
医療事故調査制度の創設

もしもの事故が起こったときに医師個人の責任追求よりも原因究明と再発防止に重点をおく必要があります。

医療事故はゼロにできない

これまで、医療界は様々な工夫や取り組みを重ね、医療事故を防ぐ努力をしてきました。しかし医療には不確実性がつきもので、医療事故をゼロにすることはできません。今も頻繁に医療事故のニュースが報じられ、多くの医療者が事故への不安や恐怖を感じながら働いています。特に、2004年の大野病院事件*で医師が刑事訴追されて以降、産婦人科医の不足が深刻化するなど「医療事故の責任を個人が追求されることへの恐れ」の影響が色濃くなりました。大野病院事件の無罪判決が確定した後、むやみに医師の刑事責任を問うことへの反省から、医療事故調査制度の創設に向けた議論が本格化しました。医療事故をゼロにできない以上、再発を防ぐための調査制度が必要ですが、同時に医師個人が、法的責任を負わされるという不安を軽減するための仕組みも必要だったからです。

第三者機関を設立

医療界・患者団体・法曹界などが参加して長期間の議論が積み重ねられ、ようやくこの10月に医療事故調査制度がスタートすることになりました。

この制度の大きなポイントは、最初の調査を当該医療機関が行うこと、そして医療事故調査・支援センターという第三者機関が設立されることです。第三者機関は、事故の原因究明と再発防止のための調査を行い、その結果は警察や検察などの刑事司法には提供されません。

医療事故発生時の流れ

この制度において「医療事故」と定義されるのは、「診療行為に関連する予期しない患者の死亡、死産」です。その事故が起きた際には、当該医療機関が最初の調査を行い、その結果を遺族に説明するとともに第三者機関に報告します。ここで、遺族が納得できない、医療機関側が原因を突きとめられないといった場合には、その依頼に基づいて第三者機関が再度調査を行うことができます。この再調査の結果は、医療機関と遺族に報告されることになっています。

「医療界が刑事司法と切り離された自律的な事故調査に取り組むことは、医師が萎縮することなく、リスクのある患者の治療に取り組むうえでも重要です。そして、専門家による原因究明や再発防止のための仕組みだからこそ、医療機関も安心して情報・データを開示することができ、それは患者や市民の医療への信頼にもつながるでしょう。

しかし、この制度にも課題は残ります。最初に原因究明を行うのが当事者である医療機関である以上、医療機関としての体面や利益が優先されるリスクがあります。また、Ai**など、事故調査のための資源がなく、十分な調査が難しいケースもあります。これらの問題に対しては、都道府県医師会が公平・中立な委員を医療機関に紹介したり、地域のネットワークを作り事故調査の際に中小病院をサポートできる体制を構築することで貢献していきます。」
(今村定臣常任理事 日本医師会常任理事)

*福島県立大野病院の産婦人科医が、帝王切開手術を受けた産婦が死亡した件で逮捕・起訴された事件。逮捕から2年半後に、無罪判決が確定した。 **死亡時画像診断

 

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