地域医療ルポ
都市のこれからの地域医療を、過疎の町で開発する

鳥取県日野郡日南町 日南病院 高見 徹先生

鳥取県日野郡日南町
日南町は鳥取県の南西部に位置する内陸の町。総面積約341㎢(東京23区の半分の面積)。町内にある医療機関は、日南病院のほかに診療所が一箇所。島根県奥出雲町との境には、ヤマタノオロチの神話で有名な船通山がそびえており、古事記伝説に縁のある町である。
先生

人口約5千人、高齢化率約47.2%――鳥取県日南町は、日本で最も高齢化が進んだ自治体の一つだ。その町の唯一の病院に、高見先生が大学の人事で赴任したのは30年前のことだった。

「都市部でも、いずれ高齢化が進むのはわかっていること。その時のために、高齢化が進む地域の医療を経験し、勉強しようと思ってここに来ました。」

1年で日南を離れるも問題意識はくすぶり続け、8年後に大学を辞めて日南病院に復帰する。ここで、日本の30年後の姿である超高齢社会の地域医療を実践したいと決意したのだった。

離れている8年の間に、住民たちの様子は変わってきていた。かつては「寝たきりで家にいられても困るから、どうか病院に置いてください」と頼んでいた家族が、「落ち着いてきたら家で看ます」と言うようになっていた。家で、地域で、支え合いながら看ていけるという感覚が、少しずつ根付いてきていた。

「地域医療とは、過疎の町で医療をすることではありません。自立した生活ができなくなっても安心して暮らせる地域にすることこそが大事。すなわち地域医療とは、『地域づくりをする医療』なのです。」

地域医療における『地域づくり』には、3つの段階があるという。第1段階では、保健・医療・介護・福祉に携わる多職種が、その地域で誰がどのように生活しているかを把握する。第2段階ではこれらの関係者が情報を共有し、一体となったサービスを提供する。第3段階では、住民の理解を得て、行政も巻き込んで地域づくりをしていく。「まず、第1段階が特に重要です。多職種の力も結集すれば、人口1万人くらいの地域を把握できるはずです。そして第2段階を続けていくと、自然に地域が変わっていく。これは基本原則であり、過疎地でも都市部でも通用するでしょう。」

地域医療とは、医療における最も基本的なシステムである、と高見先生は語る。

「大病院に勤務する専門医も含め、全ての医師がこの基本的なシステムを理解していなければ、高齢社会は支えきれません。例えば、病院に搬送される高齢者は、薬が飲めていないなど、生活自体に問題を抱えている場合がある。『病気は治した、その後は知らない』では、皆が安心して暮らせる地域づくりなどできません。これからは、積極的に地域に出て情報を集め、戦略性をもって医療にあたる医師が求められると思います。」

高見先生は今後、近くの中核都市である米子市で、都市型の地域医療の実践にも取り組んでいくという。

 

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(写真左)病院から徒歩10分の生山駅。岡山と米子・出雲を結ぶ特急が、2時間に1本停車する。
(写真中央)穏やかな語り口の高見先生。
(写真右)病院の外観。
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