FACE to FACE
interviewee 平田 まりの × interviewer 前田 珠里
前田(以下、前):平田は、日本プライマリ・ケア連合学会*の学生・研修医部会にずっと関わっていたよね。
平田(以下、平):そうそう。1年生の冬から関わり始めて、4年生では夏期セミナーの副実行委員長をやって。5年生で1年間代表を務めて、今に至ります。
前:いつの間に代表なんてやっていたのって驚いたけど、思い返せば平田は高校時代から自由に色々な活動をしていたよね。使わない文房具を海外に寄付しようって企画を、学年を巻き込んでやっていたりして。
平:高校全体に自由な雰囲気があった気がする。みんな好きなことをやっていたし、お互いの活動にも協力的だったよね。
前:自治医科大学を選んだのは、高校時代から、へき地医療やプライマリ・ケアなどの分野に興味を持っていたからだったの?
平:ううん、最初は全然考えていなかった。自治医に行ったのも、試しに受けてみたら受かったというくらいで、卒後へき地に行くことについても、その時点では深く考えていなかったかな。プライマリ・ケア連合学会に関わるようになったのも、素敵だなと思っていた先輩に勉強会に誘われて、何となく参加したのがきっかけだったし、結構行き当たりばったりで生きてきてるんだよね(笑)。だけど、プライマリ・ケア連合学会で学んだことは私にとってはすごく大きくて、どの診療科の医師になっても、そこで身につけたプライマリ・ケアの姿勢は大事にしていきたいって思ってる。
前:平田にとって、それって具体的にどういうこと?
平:家族や地域を視野に入れながら、患者さん自身をしっかり診て、必要に応じて他科の医師や他職種から力を借りていくことかな。そのときに一番大切なのは、患者さんが何を求めているのか、そして自分はそれにどう関わっていくかについて、患者さんと一緒に決定していくことだと思う。
前:患者さんと一緒に決めるとなると、その人の人生にどこまで関わるのか、線引きが難しいよね。例えば、運ばれてきた急病人が、実はアルコール依存症で、それがもとで失職してホームレスになってしまっていた、というケースがあったとして、依存症の治療や就職支援にまで目を配るかどうかとか。
平:難しいね。でも、患者さんの希望を聞き出しながら、一緒に良い方法を考えていくしかないんじゃないかなあ。もし「自分はこのままでいい、治療なんて必要ない」って言われたら困ってしまうけど、そんななかでも、患者さんが持つ漠然とした悩みに対して、何が一番問題なのかを医学的・社会的な観点から考えて、整理するのが医者の役割なんじゃないかな、と思う。
前:平田は来年から臨床研修だけど、こんなことができるようになりたい、みたいな目標はある?
平:臨床研修の間は、まずは3年目でへき地に行ったときに即戦力になれるよう、ちゃんと知識と技術を身につけられるように頑張ろうと思っているよ。
将来のイメージは正直まだ持てていないけど、最近になって、私が本当にやりたいのは、人々の健康維持に関わることなのかな、と感じていて。プライマリ・ケアも、更には医師という職業自体も、本質的には一つのツールに過ぎないと思うんだよね。どんな方法でもいいから、自分の関わる一人ひとりが、主観的に「自分は健康だ、楽しい」って思って過ごせることに貢献できるような医師になれれば、と思っているよ。
*日本プライマリ・ケア連合学会…2010年、日本プライマリ・ケア学会・日本家庭医療学会・日本総合診療医学会が合併して成立。人々が健康な生活を営むことができるように、地域住民とのつながりを大切にした、継続的で包括的な保健・医療・福祉の実践及び学術活動を行うことを目的としている。
※医学生の学年は取材当時のものです。
平田 まりの(自治医科大学6年)
1992年埼玉県生まれ。国立お茶の水女子大学付属高等学校を卒業後、自治医科大学に入学し、様々な地域に足を運び見聞を広める。日本プライマリ・ケア連合学会 学生・研修医部会2015年度代表。原動力は、運命に対する責任感、家族と友人、そして日本酒。
前田 珠里(千葉大学4年)
高校の同級生で、当時は毎日くだらないことを話しては笑い合っていた平田でしたが、改めて卒業目前になった彼女の将来の展望を聞くことができてとても新鮮でした。
これからもこの高校時代の出逢いに感謝し、同じく医療を担う者として、良き友人同士、互いを高め合えたらと感じます。
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