医師への軌跡

医師の大先輩である大学教員の先生に、医学生がインタビューしてきました。

働き続けることで
周囲に、社会に
恩返しする
大久保 ゆかり
東京医科大学 皮膚科学分野 教授

好奇心旺盛に何にでも挑戦

――先生は臨床と研究と教育、仕事と家庭を、全て両立していらっしゃいますよね。授業でお話を伺った時から、どうしたらそんなことができるんだろうと気になっていたんです。

大久保(以下、大):私は何にでも好奇心があるからかもしれないですね(笑)。実際は全て両立できている訳ではありません。全て完璧にしようとしたら続かないですよ。
もし、子育てせずに仕事だけを続けていたら、私はもっと前に今の肩書きを持てていたかもしれません。でも、いろいろ同時にやるからこそ面白いと思いませんか? 育児から学んだことが思わぬところで仕事に活きてくることもあるし、臨床での疑問を、研究で解決できることもある。教育は、より良い臨床の実践につながる。全部関係しているからこそ、相乗効果で良い仕事ができるのです。

働き続ける覚悟

――先生が医師を志されたきっかけは何だったのでしょうか。

:父が医師で、父親っ子でしたので、小さい頃から医師になりたいと思っていました。でも、高校1年生の時に父が肺がんで亡くなってしまいました。それはそれはショックで、受験の時期になっても立ち直れず、医学部に入るのには大変な苦労をしましたね。でも今思えば、ここでつらい思いをしたからこそ、生涯医師として働き続けようという覚悟を持てたのかもしれません。

研究に打ち込む日々

――皮膚科を選ばれたのはどうしてですか?

:循環器内科と皮膚科で迷っていたのですが、その頃結婚を考えていた外科医がいたので、救急が比較的少ない皮膚科を選びました。結局その相手とは、研修医の時に別れちゃったんですけどね(笑)。

――結婚しそうだった相手と別れてしまったんですか!

:そうなんです。でも、かえってよかった面もあります。ちょうどその頃先輩の指導で研究を始めたのですが、土曜や日曜も、いつでも研究室に行けたので、すごく楽しかったです。国際学会で発表する機会を頂いて、刺激を受けましたね。それが、海外留学への夢につながりました。

仕事で周囲に恩返しする

――研修医時代から、人並み以上にお忙しかったでしょうね。

:独身時代は、仕事はもちろん、料理学校やゴルフに英語など、本当にたくさんのことに打ち込んでいました。時間もお金も全部自分に投資できましたから、とても楽しかったです。

――家庭を持ってから、状況は変わりましたか?

:自分の時間を自分だけのために使うわけにはいかないですからね。でも、育児から得たものはすごく大きいですよ。子育てと言いつつ、自分が育ててもらった部分が大いにあります。
人間は、周囲の人たちに育てられて成長するものだと思います。研究も、患者さんの協力のおかげで成り立つわけですし、私生活では、例えばママ友にはたくさん助けられました。
私はそういう方々に、必ずしも直接恩返しができているわけではありません。ですから、仕事をきちんとして社会に貢献することが、医師ができる恩返しなのではないかな、と思います。

――どうしたら先生みたいになれるんでしょうか?

:皆さんは原石です。磨けば必ず輝きます。私から言えることは、仕事はとにかく続けること。また他の人と自分を比べないことです。自分が今何をやりたいのか、ということを考えてください。

悩み迷うことはたくさんあるでしょうが、道はどこかに必ずあります。何があっても諦めずに良い医師になって、周りに恩返ししてください。

大久保 ゆかり
東京医科大学 皮膚科学分野 教授
1984年東京医科大学卒業後、同大学病院に入局。2001年、アメリカ・スタンフォード大学医学部に留学。2012年より現職。

岩間 優
東京医科大学 4年
「『皆さんは磨けば光る原石』という言葉に勇気づけられました。私も先生のように、どんなことにも積極的に取り組んでいきたいと思います。」

内田 萌々
東京医科大学 4年
「先生に個人的にお話を伺ったのは初めてで、とても楽しかったです。医師になるからには、私もどんなことがあっても仕事を続けようと思いました。」

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