地域における健康づくりの取り組み(前編)

地域における予防と健康づくりの一例として、石川県能美市の取り組みを紹介します。

データからリスクのある人を見つけ、個別の関わりで「気付き」を促す

石川県能美市では平成20年度以来、糖尿病の重症化予防に、市と医師会、かかりつけ医が連携しながら取り組んできています。この取り組みについて、能美市医師会会長の松田健志先生、能美市健康福祉部健康推進課課長で保健師の川本素子さん、保健師の南芳美さんにお話を伺いました。

糖尿病重症化予防への注目

――この取り組みが始まった経緯を教えてください。

川本(以下、川):平成20年度より、40歳から74歳までの健康保険の加入者とその家族のうち、生活習慣病のリスクの高い人(いわゆるメタボリックシンドローム)を対象に、特定健康診査・特定保健指導が始まりました。これを受けて、能美市では糖尿病対策に重点的に取り組むことにしました。

――なぜ糖尿病に注目されたのですか?

:市民の健診データによって、平成20年度以前から、血糖値・ヘモグロビンA1cが基準値を超える人が、県内でもかなり多い方であることがわかっていました。糖尿病治療者も年々増えており、40代以下の糖尿病治療者も少なくないという状況でした。

:さらに、BMIや腹囲が基準を超えていない、いわゆる非肥満高血糖の方が多いこともわかりました。この方々は、特定保健指導の対象ではないのですが、いずれ糖尿病になるリスクがあると考えられます。

:そこで能美市では、そのリスクを減らすべく、特定保健指導の対象とならない方へも保健指導を実施することにしました。

松田(以下、松):糖尿病は重症化するまで症状が出ないため、健診で所見があっても病院に行かない方も少なくありません。その結果、気付いた時にはかなり重症化してしまい、神経障害や腎症などの合併症を発症してしまうことがあります。そのリスクを減らすために、市と医師会、さらに専門医の先生方が協力して取り組んできました。

:取り組みを始めるにあたり、まずは保健指導の対象者を明確化しました。市と医師会が話し合って、ヘモグロビンA1cが6・5%以上の方には医療機関を受診してもらい、5・6~6・4%の方には、市の職員による保健指導を行うことにしました。

住民の「気付く力」を支援する

――保健指導はどういう体制で行っているのでしょうか?

:能美市では保健師と管理栄養士が指導にあたっています。保健師11名と管理栄養士2名、パートの栄養士2名の計15名でそれぞれ40~50名を担当しています。

――どのような働きかけをするのですか?

:保健指導が必要な方に、できる限りご自宅を訪問する形で健診の結果をお渡しします。

:住民が検査結果を理解するために、注目してほしい数値に色をつけて目立たせています。黄色は注意が必要な値、オレンジは医療機関を受診してほしい値といったようにです。数値に色がついていると、「どうしてだろう?」と考えてもらうきっかけになります。

住民の方から「どうしたらいい?」という言葉が出たら、私たちとしては「しめた!」という感じですね(笑)。それをきっかけに、普段の生活についてお聞きし、改善できる点を探していきます。

――「どうしたらいい?」が出てくるまで、様々な働きかけをするのですね。

:そうです。すぐに質問してくださる方もいれば、なかなかその言葉が出ない方もいます。色々な方がいるので、相手を見ながら働きかけを変えています。糖尿病について説明するためのツールも色々あるんですよ。手を替え品を替え、その方に一番響く伝え方を探すんです。

:他人から言われてやらされているうちは長続きしないものです。住民の方ご自身に「こうしよう」と決めていただき、かつ決めたことを尊重しながら関わっていかないといけません。ですから、相手の表情を見て、その方の気持ちを尊重した働きかけをすることが大事ですね。私たちがお会いして説明することで、住民の方々の気付きを引き出せたらいいなと思っています。

 

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