看護職員の養成
地域医療を支える人材を確保するために、医師会は看護職員の養成を行っています。
地域医療体制を守るために
現代の医療は、様々な職種でチームを組んで行うのが当たり前になっています。特に、看護職の果たす役割は年々高まってきていると言われます。しかし看護職は慢性的に不足しています。ここ数年は診療報酬の7対1看護の導入により、さらに不足に拍車がかかり、医療機関は看護職の確保に大変苦労しているのが現状です。
看護職を一所懸命養成しているのは、実は医師会です。各地に、それぞれの地域医師会が設立した看護師・准看護師養成機関が数多くあり、それぞれの地域の医師会員がボランティアで支えているのです。そして日本医師会は、それぞれの地域医師会を取りまとめる立場から、また医療界全体を見渡す立場から看護職養成のさらなる必要性を発言しています。
最近は都市部の病院への人材の集中が問題となっています。地方の看護大学・看護学校を出た看護職が、地元には就職せずに都会に出ていってしまうのです。もちろん、都会で働いてみたいという思いもあるでしょうが、地方の中小病院における看護職不足には拍車がかかり、地域医療崩壊の一因となっているのも事実です。
また、看護師養成を大学に移行していく流れについても、問題がないわけではありません。日本医師会の藤川謙二常任理事はこう指摘しています。
「国や看護協会は、看護師養成の軸足を看護大学に移そうとしています。もちろん、大学や大学院で学ぶ看護師が増えることは悪いことではありませんし、医療の高度化に合わせて技術や知識を持った看護師が増えるのは歓迎すべきことです。しかし、看護大学出身の看護師が急性期の高度医療を担うだけでは、安心で安全な社会は作れません。都市部の学校に出る経済的余裕がない家庭の出身であっても、地元の学校で資格を取り、その地域の急性期・慢性期の医療に貢献する人材も必要です。様々な医療機関や医療人材が役割分担をすることで、充実した医療体制ができるわけです。」
このような考えのもとに、国の看護職養成機関に対する補助金が減らされる傾向の中でも、各地区医師会は地域医療に携わる看護職員の養成を続けています。実際、平成23年度の医師会立の看護師・准看護師養成機関の卒業生の進路を見ると、「医師会管内」と「医師会管外」を合わせた県内就業率は、准看護師課程で47.1%。また准看護師として就業しながら進学した場合を合わせると約7割が地域医療を支えています。看護師2年課程は83.0%、看護師3年課程は83.9%と、いずれも全国の養成機関の平均と比べて県内就業率が高いと言えます。(図出典:医師会立看護師等養成所卒業生の進路〈平成23年3月〉)
世間では「医師会は自分たちの利害のためだけに准看護師制度に固執している」といった語られ方もしますが、実際には地域医療を守るために、養成機関への財政支援をしながら、その地域の医療に貢献する人材を一所懸命育てているのです。
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