まだまだ知りたい専門医、どうなるの? part2
(前編)

前号に引き続き、新たな専門医の仕組みに関する、医学生の様々な疑問・質問を、 日本医師会常任理事で、日本専門医機構理事の羽鳥裕先生にぶつけてみました。

Q.基本領域の専門医資格を取らないとサブスペシャルティは取れないのですか?

A.これまで、例えば内科領域では、臨床研修修了後に内科認定医を取得した後に、「循環器専門医」などの臓器別の専門医資格を取る人が多かったといえるでしょう。しかし循環器専門医であっても、中小規模の病院では「内科」の医師として、呼吸器や消化器の患者さんも診ることになります。また、「内科当直」という形で夜間に内科全般を診る機会もあるでしょう。そんなときに「専門外だからわかりません」という医師ばかりでは困ります。

そこで、内科全般に関して、初療対応が可能か、臓器別の専門医につなぐ必要があるか、などを判断する基本的な診療能力を身につけるために、基本領域を修めたのちにサブスペシャルティに取り組む、という仕組みになっているのです。

Q.専門医の仕組みにおける「標準的な診療能力」はどの程度のレベルですか?

A.実際のところ、学会によって異なるイメージを持っているようです。例えば総合診療分野では、「最低限の診療がきちんとできれば専門医と言って良い」という意見もありますが、外科系の先生の中には、「外科を目指す医師のうち3分の1くらいが専門医と名乗るべきだという意見の方もいます。

領域によって「専門医」のレベルが異なることは、国民の皆さんや、これから修練を積む学生や研修医の皆さんの混乱を招くことになりますが、領域によって認識が異なるのも事実です。実際に医療を提供し、医師を育成しながら仕組みを作っていかなければならないので、試行錯誤しながらより良いあり方を考えていくしかありません。できる限り皆さんの不安・不信を減らすべく、このような形で議論の過程をオープンにしていくことも重要だと思っています。

Q.結局のところいつになったら一人前の医師になれるんですか?

A.難しい質問ですが、医師という職業に「あがり」はありません。医学部で学ぶ疾患と、臨床研修で学ぶ疾患、そして専門研修で学ぶ疾患が大きく異なるわけではありませんが、その「深さ」には大きな差があります。同じ疾患であっても、学部生が教科書で学ぶとき、臨床研修において指導医のもとで診るとき、専攻医となって担当医として診るときで、考えなければならない範囲・深さが全く異なります。

医師は、同じような疾患に出会い、同じような仕事を繰り返しながら、そこでいかに学んでいけるかが大事なのではないでしょうか。専門医資格を取る際にも、制度としては「症例数」をカウントしますが、医師としての成長を考えればその「内容」が重要なのです。一つひとつの症例に向き合うなかで、ちょっとした異常が気になって論文をいくつも読んで調べたこと、様々な先輩医師に質問したこと――それらの蓄積が、その医師の診療能力を下支えすることになります。そういう不断の努力は、経験症例数や筆記試験で測れるものではないでしょう。

Q.医師である以上自分の時間を削って勉強しなければならないのでしょうか?

A.医師一人ひとりの、勉強や医学の修練に対する思いや姿勢に差があるのは当然のことです。決められた勤務時間の中でも集中して診療にあたり、必要なことを調べることは可能ですから、定時を過ぎたら仕事のことは考えない、という働き方もあって良いでしょう。少なくとも専門医資格に関しては、決められた時間の仕事にきちんと取り組んでいれば取得できるのではないかと思います。

ただ、専門医資格は医師個人に与えられるものであり、その取得は自己研鑽の一環です。専攻医はプログラムを提供する医療機関で「仕事」として勤務するわけですが、そこで勉強して診療能力を身につけるのは自分自身のためです。ですから、論文作成などの学術活動、専門医試験のための勉強、担当患者について気になったことを調べるといった活動は、基本的に自分の時間を使って行うことになるでしょう。

 

 

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