大学紹介

高知大学

【教育】地域とつながった医学教育の展開

高知大学 医学部 家庭医療学講座 教授 阿波谷 敏英

高知大学医学部は前身の高知医科大学当時より、県内唯一の医学部として、地域に根差した教育・研究・臨床活動を行ってきました。卒業生も県下で数多く活躍しており、本学に対する県民の期待も大きいものと自負しています。そうした期待に応えるべくカリキュラムポリシーにも「医師の社会的使命を理解し地域医療に貢献する意欲を醸成する」と掲げ、初年次の地域医療機関での早期医療体験実習から、地域医療関連授業や、診療参加型臨床実習など、6年間を通して地域医療への関心を育むような卒前教育を行っています。

本学の特徴的なカリキュラムの一つとして「家庭医道場」があります。これは、年2回、県内の中山間地にある自治体において開催する1泊2日の課外実習です。参加者は医学科および看護学科の学生30~40人程度ですが、希望者が多いため断らざるを得ないこともあります。「地域に赴き、地域の人々と接し、地域を知る」を目的としており、毎回、数名の学生実行委員がテーマ、企画を準備します。講演(首長、医療者、患者や家族)・グループワーク・フィールドワークなど趣向を凝らした内容が準備され、救急、介護、看取り、子育て、保健予防活動、防災・減災など多岐にわたり能動的に学習し、地域包括ケアシステムについて理解を深めています。開催にあたり自治体・地域の医療従事者・住民の皆さんに全面的にご協力いただいています。これまで21回開催され、卒業生が指導者となったり、多数の受験生が「家庭医道場」を志望動機に挙げたり、本学の特色あるカリキュラムとしてすっかり定着しています。実際の様子はWeb上に動画*が公開されていますので、ぜひご覧ください。

さて「地域医療」というと「へき地医療」のことを指して言われることもあります。しかし、ここには二つの誤解があります。一つ目は「へき地医療」は「地域医療」の一つのパーツですが、すべてではないということ。生活の場である地域にあわせた医療を提供するのが「地域医療」の本質であり、課題は違えども都会にも、へき地にも「地域医療」が必要なのです。二つ目は「地域医療」は医療の一部ではなく、地域の一部であるということです。地域を深く理解することで「地域医療」のあり方を考えることができるのです。これからも高知大学は地域との強いつながりを活かして、地域に貢献する医療人の育成に取り組んで参ります。

*動画…「医学部|高知大学〈2012年〉」
(https://www.youtube.com/watch?v=BT7toWhc4MM)

【研究】先端医療学コースと未来の研究者たち

高知大学 医学部 附属医学情報センター 教授 奥原 義保

高知大学医学部には、先端医療学コースというユニークな科目があります。2年生で、選択必修科目としてこのコースを選んだ学生は、本学医学部の研究活動拠点、先端医療学推進センターの研究班に4年生まで所属し、最先端の医学研究に携わります。毎週4コマを使って研究の方法を学び、研究遂行と学会発表、論文作成までを目標とします。

私が担当するメディカルデータマイニング研究班は、附属病院が開院以来36年間蓄積してきた病院情報システムの33万人のデータを匿名化したデータベースを使い、通常は知りえない知識や法則を膨大なデータから獲得することを目指しています。当班の学生は、最初の半年でデータ解析に必要な知識と技術を身につけ、その後は自分が選んだテーマを研究し、今まで全員が全国学会での発表を行っています。日本腎臓学会学術総会優秀演題賞や日本医療情報学会研究奨励賞を受賞した学生もいます。また、筆頭著者として英文誌に論文が掲載された学生もいます。全国学会では、私の班だけではなく、様々な班の学生が14名受賞しています。普通、学部の学生が学会で発表することすらほとんどありませんが、医学部の学生は機会さえ与えられれば、学部のうちから研究者として十分に能力を示せることを証明したといえます。そもそも、医学部には最も優秀な学生が集まっているはずですが、入学後は、国家試験合格という目標のためにほとんどのエネルギーを費やしているように思われます。これは我が国にとって、優秀な頭脳の壮大な浪費とも言えるのではないでしょうか。本学の先端医療学コースは、そうした流れに一石を投ずる存在ではないかと思います。先端医療学コースで学び、研究の進め方とその面白さを身につけた学生が、将来の我が国の医学研究を担い、経験を臨床の場で活かしてくれれば、教員にとって何よりもうれしいことです

【学生生活】「やるときはやる」雰囲気に支えられる

高知大学 医学部 医学科 5年 浦川 愛

高知大学では2年生に進級するときに、選択必修としてPBLコースと先端医療学コースのどちらかに参加することになります。私は先端医療学コースを選んで、2年生から4年生までの3年間、大学の先端医療学推進センター内の研究班に所属し、研究を行いました。麻酔科の研究班に所属して、術後の疼痛管理に関するデータを集め、学会発表も経験させていただきました。指導していただいた先生方の、研究熱心な姿が印象に残っています。

私は医学部のダイビング部に所属しています。東京出身で、これまでダイビングは未経験だったのですが、「ダイビング部でライセンスを取りませんか?」という勧誘が新鮮で、入部を決めました(笑)。深さ20メートルぐらいまで潜るのは、少し怖さもありますが、タンクを背負って呼吸しているだけでワクワクするんです。県の南西部の大月町に全国的に有名なダイビングスポットがあるので、休日に都合の合う部員たちと潜りに行っています。

毎年12月には学生主体で運営される体育祭があります。体育祭は看護学科と合同で行い、親交を深めるいい機会になっています。体育祭では、一般的な競技のほかにも、後輩たちが6年生の国家試験の合格を祈願して組体操を披露したりするんですよ。

勉強以外の楽しみもたくさんありますが、高知大学の学生は勉強熱心で、やるべきときにはみんなのめりこんで勉強します。試験勉強は友人同士の小さいグループや個人個人で行っていますが、学年全体の熱心な雰囲気にはいつも励まされています。

※医学生の学年は取材当時のものです。

 

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