看護師(緩和ケア・在宅)(前編)

これから医師になる皆さんは、どの医療現場で働いても、チーム医療のパートナーとして看護師と関わることになるでしょう。本連載では、22号より、様々なチームで働く看護師の仕事をシリーズで紹介しています。今回は、クリニックで在宅での緩和ケアに携わる看護師と、共に働く医師・看護師にお話を伺いました。

在宅で緩和ケアを担う

先生 ――神田さんは、どのような経緯で緩和ケア認定看護師になったのでしょうか?

神田(以下、神):私は以前、急性期病院で働いていましたが、いずれは在宅分野の仕事がしたいと思っていました。その時の上司に、これから在宅医療に関わるなら緩和ケアの認定を取ると良い、と勧められ、勉強する機会を頂きました。

学校では、自分自身を振り返り、死生観を見つめ直すような機会が多かったです。専門的知識を得て、しっかりと自分を見つめ直したことで、以前よりも確信を持ってきちんとした看護ができるようになりました。

深澤(以下、深):当法人は長く在宅医療に携わっていますが、緩和ケアを必要としている患者さんはどんどん増えていると感じます。きちんとした専門性に根差して緩和ケアをリードすることができる認定看護師が、在宅のクリニックにいる意義は非常に大きいと思います。

――在宅医療における緩和ケアとは、どのようなものですか?

多井(以下、多):私たちは、この地域全体を病棟、患者さんの家を病室のようにとらえています。そして、在宅でできる過不足ない医療を提供することを目指しています。法人内はもちろん、地域の他の医療機関や訪問看護ステーションなどとも連携を深め、地域の方が安心して自宅で過ごせるよう力を入れています。近年はよほど重篤でない限り、在宅でも病院と遜色のない医療を提供できるようになってきました。様々な疾患や医療機器に対応できるよう普段から準備を重ね、自宅で療養したいという思いに応えられるよう努めています。

:当クリニックには、様々な分野で経験を積んだ看護師が集まっており、経験者を中心に皆で学び合いながらケアを行っています。初めてのできごとに遭遇したり、未経験の医療機器を取り扱うことになったりしても、必ず「知っているよ」とか「こうしたらいいよ」と言ってくれる人がいるんです。

:私たちのみる患者さんのうち、がんの終末期の方は半数くらいですね。緩和ケアはがんと診断された時点から始まるという考え方が浸透してきたこともあり、積極治療と並行して緩和ケアを受ける患者さんも多いです。心不全やCOPD、神経難病など、がん以外の終末期の方もみています。

:大学病院の外来で化学療法を受けている患者さんに対し、日々の病気や怪我のフォローを行うことも多いです。患者さんはがんだけ治療すれば良いわけではなく、日々の生活のなかで風邪をひくこともあれば、転倒することもある。でもこの地域には大学病院がなく、患者さんは遠方の大学病院まで通っていて、小さな病気や怪我で通院するのは難しい。私たちは大学病院の主治医から依頼を受けてそうした対応を引き受け、全身状態も確認して、必要があれば主治医に報告しています。

認定看護師としての役割

――認定看護師として緩和ケアに携わるにあたり、特に力を入れていることはありますか?

:私は緩和ケア認定看護師として、医師を含めた周囲の多職種に、正しい知識や技術を伝えることに力を入れています。苦痛緩和に関する知識・技術や緩和ケアの考え方が時代とともに変わるなか、最新の知識や技術を周囲に伝えることで、クリニック全体の緩和ケアの質を向上させることができていると感じています。

また、日々の看護をスタッフ同士で振り返るためのカンファレンスも主導しています。スタッフたちが「私たちはこんなふうに頑張ってきたよね」と承認し合い、「次はこんなふうに頑張っていこうね」と前向きに仕事に取り組めるようなカンファレンスを目指しています。

:確かな知識と技術を持った認定看護師が、現場のレベルアップを図ってくれることには、非常に大きな意味がありますね。一緒に働く仲間が神田さんの看護ケアに接して、もっと学びたいという気持ちになることも多いのではないかと思います。そういう自発的な学びが促進され、看護の質が上がることを期待しています。

――急性期病院と在宅とで、ケアの仕方に違いは感じますか?

:在宅だと、病院にいた頃よりも、使う麻薬の量が少ないように感じます。病院はあくまで「病気の治療」が中心に据えられた場で、ご家族がずっと付き添っていたとしても、やはり患者さんの生活の場とは違います。そんな非日常的な環境のなかでは、痛みや苦しみと向き合いながら過ごす時間が長くなるため、どうしても苦痛を感じやすくなり、薬が増えてしまうのかもしれません。対して在宅では、痛みを感じても、家族の声や日々の生活の音が聞こえて安心できたり、自分の好きなことができて気が紛れるということもあって、苦痛の感じ方も違ってくるのかな、と思っています。

 

 

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