【耳鼻咽喉科】田中 亮子先生
(長岡赤十字病院 耳鼻咽喉科)-(前編)
――先生が耳鼻咽喉科を選んだ理由を教えてください。
田中(以下、田):5年生の臨床実習中に鼓室形成手術の見学をしたことが、耳鼻咽喉科に興味を持ったきっかけですね。「こんなに小さな骨が音を伝えているんだ!」と感動を覚え、6年生の時にもう一度耳鼻咽喉科を回ることにしたんです。その時は、1歳の先天性難聴の男の子が、人工内耳手術を受けてから、初めて人工内耳を通して音を聞くところまで、一連の流れに立ち会うことができました。診断から手術、術後のフォローまで全てに関われるところに強く惹かれ、耳鼻咽喉科に進むことを決めました。
――卒業後、臨床研修はどちらに行かれたんですか?
田:今の勤務先でもある、長岡赤十字病院です。臨床研修後は大学に入局するつもりでいたので、市中病院を選びました。1年目は主に必修分野を、2年目は耳鼻咽喉科を中心に、関連する様々な科を回っていきました。
――2年目には、どのような科を回っていったのですか?
田:耳鼻咽喉科は甲状腺関係の疾患を扱うことが多いので、内分泌内科は回っておこうと考えました。呼吸器内科も、耳鼻咽喉科と関連する疾患が多いので、勉強になりましたね。形成外科とは今も一緒に手術することが多いですし、綺麗な縫い方が身についたことで、手術にも自信がつきました。
――現在は専門研修2年目とのことですが、どのような経験を積んできましたか?
田:入局した卒後3年目の5月から、市中病院の外来でも診療するようになりました。それまでに、臨床研修で半年近く耳鼻咽喉科を回り、入局直後から診療の基礎についての集中講義も受けてはいましたが、外来初日はとても緊張しましたね。
現在は、週に4日外来に出ています。難しい症例や、手術の術式に迷う場合は上司に相談しますが、甲状腺の摘出や半切、耳下腺の良性腫瘍や扁桃摘出、内視鏡下副鼻腔手術などは、基本的に自分で診断して手術を決められるようになりました。
【耳鼻咽喉科】田中 亮子先生
(長岡赤十字病院 耳鼻咽喉科)-(後編)
――「ここは成長したな」と感じるところはありますか?
田:初診から患者さんを受け持ち、自力で検査をして診断をつけられるようになったところです。大学病院にいた頃は、既に診断がついて、ある程度治療方針も立ったところから担当していましたから。
初めて自分で患者さんの入院と手術を決めた時は感慨深かったですね。その手術は下鼻甲介骨切除術だったのですが、患者さんが「鼻の通りがよくなりました」と笑顔で退院していかれて、とても嬉しかったです。
――診療するうえで難しいと感じたり、やりがいを感じるのはどんなときですか?
田:悪性腫瘍の治療方針を決める部分には難しさを感じます。悪性腫瘍の根治には手術が一番ですが、場所によっては声が出なくなったり顔貌が変化したりと、QOLに大きく影響してしまうことがあるからです。ガイドラインはもちろん参照しますが、患者さんの希望にもできるだけ沿えるよう心がけています。
一方で耳鼻咽喉科は、QOLを劇的に改善することができる科でもあります。先日も、滲出性中耳炎の女の子の手術をしたら、術後回診の時に「聞こえるようになった!」と喜んでもらえて。そんなときは、やはりやりがいを感じます。
――今後はどのような道を進もうと考えていますか?
田:今はとにかく多くの症例を診て経験を積みたいです。将来も、基本的に大きな病院で手術をしていたいですね。医局に、お子さんが3人いながらフルタイムで働く女性の講師の先生がいて、その方に憧れています。私もいつか出産したいと考えていますが、その先生も「できた時が産み時」とよくおっしゃっていますし、医局の他の先輩方も色々な働き方をされているので、やる気と周囲の協力があれば、私もきっとなんとかなるはずだ、と希望を持っています。
――医学生たちに、一言メッセージをお願いします。
田:当科は細かい手術が多い印象があるかもしれませんが、解剖の知識をしっかり持ち、やり方を理解していれば、特別器用でなくとも十分やっていけます。むしろ、耳・鼻・喉にわたり、内科的なことも外科的なことも幅広くできるので、自分の強みを様々なところに活かしやすい科だと思います。実習や臨床研修の際は、ぜひ耳鼻咽喉科を回ってみてくださいね。
医学部卒業 | 2014年 新潟大学医学部 卒業 | 卒後1年目 | 長岡赤十字病院 臨床研修 |
卒後3年目 | 新潟大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 専門研修プログラム | 出身は群馬ですが、大学時代に培ったつながりを重視したことなどから新潟に残りました。 |
卒後4年目 | 長岡赤十字病院 耳鼻咽喉科 | 今はベテランの指導医のもと、4人のチームの 一員として修業中です。 |
2014年 新潟大学 卒業
2018年1月現在
長岡赤十字病院 耳鼻咽喉科
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