チームで負担も喜びもシェアしながら、
大好きな栃木県で在宅医療に従事する
~鶴岡 優子先生~(後編)

信頼できる仲間を増やす

:それから先生は、多職種の勉強会「つるカフェ」を開催するようになったんですね。

:はい。直接のきっかけは、東日本大震災です。それまで、私たちは多職種で連携ができていると思っていたのですが、震災直後は思うように動きがかみ合わなかったんですね。携帯電話でいつでも連絡がとれるんだし大丈夫だと過信していたけれど、あうんの呼吸で動ける間柄でないと、いざというときうまくいかない。そんな反省から「つるカフェ」が始まりました。それから6年ほど経ちますが、現在は三つの部門に分かれています。一つは毎月の「つるカフェ」、一つは困難事例の振り返りやデスカンファレンスを行う「ふりカフェ」、そしてもう一つが市民講座です。

「つるカフェ」の参加者の多くは、医療・介護・福祉の専門職です。ケアマネジャー・訪問看護師・市役所職員・地域包括支援センターの職員・自治医大の医師など、50~60人が集まります。毎回5〜6人に分かれてグループワークを行い、 顔の見える関係を築いています。そして市民講座には、地域の方々も含め200人ほど集まります。

:「つるカフェ」を始めて、どんな変化がありましたか?

:私自身の経験やつらさを「つるカフェ」でシェアできるようになったことで、「仲間がいる」と思えるようになり、気持ちがとても楽になりました。また、顔の見える関係を築けていると、多職種連携もより円滑になりますね。私たちは、栃木県医師会が推奨する医療介護専用SNS「どこでも連絡帳」を使って患者さんの情報を共有しているのですが、誰もが義務感からではなく、「みんなに知らせたい!」という思いから書き込んでくれるんです。それぞれの業務の効率も上がった他、夜中のお看取りなどでもリアルタイムで声を掛け合って支え合うことができるので、チームの絆も深まっているように感じます。

:お互い「連絡帳に書き込めば必ずレスポンスやフィードバックが返ってくる」という実感が持てるからこそ、効果的に活用できるのでしょうね。

:ええ。栃木県のすごいところは、「どこでも連絡帳」が県全域の連絡ツールとして統一されたことです。だから私たちもその流れに乗って、うまく導入することができたんです。

:連携が進むことで、チームで仕事の負担もシェアできるようになったそうですね。

main 栃木県障害福祉課のマスコット「ナイチュウ」と記念撮影。

:はい。「つるカフェ」を始めてから、「主治医になる」とは、主治医である私が不在のときの采配までしておくことではないか、と考えるようになりました。

休息時間は、良い仕事をするためにも大切です。私たち夫婦も、初めは「二人合わせて1・5馬力くらいで働こう」というつもりで開業しましたが、結局うまく休むことはできませんでした。24時間365日主治医でいる重圧はあっても、休まずに全部自分で診た方がどこか「楽」だったんでしょうね。

:たしかに、休む方がよっぽど勇気がいる、ということはありますよね。

:そうなんです。でも、そこから徐々に信頼できる多職種を増やしてきたことで、医師も休めるようになり、患者さんも私たちをチームとして信頼してくれるようになりました。

私は今、なりたい主治医になるために、みんなから助けてもらっています。ですから私は、みんなと負担だけでなく、喜びもシェアしたいんです。患者さんから感謝の言葉をもらったら、他職種に積極的にフィードバックするようにしています。

:プロフェッショナルである多職種同士、対等な協力関係を築けているところが、「つるカフェ」の素晴らしいところですね。本日はありがとうございました。

 

語り手
鶴岡 優子先生
つるかめ診療所 所長
聞き手
滝田 純子先生
栃木県医師会 常任理事・女性医師部会長

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