看護師(緩和ケア・急性期)(前編)

これから医師になる皆さんは、どの医療現場で働いても、チーム医療のパートナーとして看護師と関わることになるでしょう。本連載では、22号より、様々なチームで働く看護師の仕事をシリーズで紹介しています。今回は、がん診療連携拠点病院であるJCHO東京新宿メディカルセンターの緩和ケア認定看護師・榎本英子さんにお話を伺いました。

緩和ケア看護とは

先生 ――榎本さんは、呼吸器内科病棟の師長であり、緩和ケア認定看護師の資格をお持ちだそうですね。まず、緩和ケア領域の看護では、具体的にどのようなことが行われているのか、教えていただけますか?

榎本(以下、榎):緩和ケア領域の看護は、患者さんが重い病気になってしまっても、病と上手く折り合いをつけながら自分らしく生きていくことを支援する看護だと思います。例えばがんの患者さんの場合、告知のときにはとても動揺しますし、抗がん剤治療は吐き気や痛みなど、大きな身体的苦痛を伴うことが多くあります。病気になったことで起こる、そうした様々な体や心の苦痛を最小限に抑え、患者さんが前向きな気持ちで療養生活を送れるよう支援するのが、緩和ケアに携わる看護師の役割です。

当院では、緩和ケアの専門性を持った看護師が、早期から患者さんに関わるようにしています。例えば、かなり深刻な病状を告知する時などには、医師からの依頼があれば診察に同席します。また、がん専門看護師と緩和ケア認定看護師が連携し、がんと診断された患者さんやご家族の心配や不安を聴いて、一緒に解決策を考えていく「がん看護外来」も開いています。

――榎本さんが師長をされている呼吸器内科病棟では、主にどのような患者さんが緩和ケアを必要としているのですか?

:がんの患者さんはもちろん、COPD*などで呼吸が苦しい方へのケアも行います。私は師長かつ認定看護師として、病棟での緩和ケアの実践と、スタッフの指導・教育を担っています。また当院では、医師・薬剤師・認定看護師などの多職種による緩和ケアチームが各病棟を回診しており、専門的な薬剤調整や環境調整が必要な場合は緩和ケアチームに依頼しています。

できることを見つける

――患者さんのご家族をケアする機会も多くなりますよね。

:そうですね。特に終末期に近づくにつれ、後悔のない看取りができるようご家族を支援するという、家族看護の視点も大切になってきます。治療の限界が見えてくるにつれ、「もっと早く病気が見つかれば…」「もっといい治療ができたのでは…」と思うようになるご家族もいらっしゃいます。亡くなる直前には、つらさから、患者さんのベッドサイドを離れがちになってしまう方も少なくありません。医療者もご家族もできることが少なくなっていくなかで、一緒にできることを見つけ、亡くなった後に「やれることはすべてやった」と感じられるような関わりをしたいと思っています。

ただ、家族の形は様々です。それまで疎遠だった家族が、患者さんの病気をきっかけに結束し、今までにない力を発揮するようなことがある一方で、患者さんの病気に向き合えず、病院になかなか足が向かない、という方々ももちろんいます。看護師として様々な患者さんの看取りを経験していると、つい「もっとこうした方がいいのに」「このままでは患者さんが亡くなった後に悔いが残るのでは」などと思ってしまいがちですが、自分の思う理想の家族のあり方や、人生観・死生観を押し付けないように気を付けています。

病院では、患者さんが亡くなった後、ご家族のグリーフケアをする機会はほとんどありません。私たちも「その後どうしていらっしゃるかな」と思いながら過ごしていますが、ありがたいことに、ご挨拶に来てくださるご家族もいらっしゃいます。つらい時期を共に乗り越えた「同志」のように思っていただけているのかもしれません。

 

 

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