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わが国では国民皆保険のもと、医療サービスの価格は診療報酬体系の中で定められています。そしてそれは、医師の診療の対価に直結します。今回の特集では、将来の皆さんの仕事の対価を決める診療報酬制度について詳しく見てみましょう。

 

医学生の皆さんは、医師の仕事一つひとつにどのくらいの対価が支払われているか、意識したことがあるでしょうか。日本には国民皆保険があることや、患者さんは医療費の3割を負担することなどは知っていると思います。では、医療機関はどのように収入を得て、そのお金をどう使っているのか、イメージできますか?

医療サービスにはそれぞれ、国が定めた点数が付いています。医療機関は、提供した医療サービスについて、ルールに従って点数を計算し、報酬を請求しています。これが診療報酬の仕組みです。そして、医療機関は得た収入を、医師をはじめとした医療従事者の人件費や、医薬品費などにあてています。つまり、皆さんが将来医師になった際の給与は、診療報酬から出るのです。具体的には、医療機関の支出のうち約56%が人件費、約23%が医薬品・医療材料費、約7%が委託費、約5%が経費等という内訳になっています(2017年)*。

そこで今回の特集では、医療を受ける側からではなく、医療を提供する側の視点から診療報酬の仕組みを見ていきます。前半は、厚生労働省保険局医療課の医系技官・中谷祐貴子先生をゲスト講師としてお招きし、具体的な事例における診療報酬の算出方法を医学生にレクチャーしていただきました。後半は、質の高い医療サービスが提供されるために、どのように診療報酬が調整されているのかを解説しています。

診療報酬が読者の皆さんにとって、少しでも身近なものになれば幸いです。

 

*中央社会保険医療協議会 第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 平成29年11月