医師への軌跡

医師の大先輩である大学教員の先生に、医学生がインタビューします。

やりたいことを見つけ
チャンスをものにする
実力をつける
山脇 正永
京都府立医科大学 総合医療・医学教育学教室 教授

神経内科と医学教育

稲葉(以下、稲):山脇先生は、神経内科医として経験を積まれた後に、京都府立医科大学で総合医療・医学教育学の教授になられたと伺いました。神経内科と医学教育は僕からすると少し離れた分野のように思えるのですが、どうして医学教育に取り組むようになったのか、教えてください。

山脇(以下、山):私の中では、神経内科をベースに医学教育も総合診療もつながっているんですよ。

神経内科医として勤務するなかで学んだのは、「神経だけを診ればいい」というわけではないということです。神経内科は高齢の患者さんも多く、褥瘡や肺炎の予防など、全身を診ることが大事です。また、私は神経内科の中でも嚥下障害を主に診ていました。そのなかで、飲み込むことや食べることは、ただ栄養の摂取という以上の意味があるのだと感じました。好きなものを食べたり、家族と一緒に食卓を囲む時間は、その人にとっての生きがいになる。そこで、患者さんの「生活をみる」「生活を支える」という視点や、医師だけではなく看護師・薬剤師・リハビリのスタッフ・介護士などの多職種の協働が必要であることを実感しました。

多職種連携は、各職種の養成課程での教育が重要と言われていて、そこから医学教育にも興味を持つようになったんです。

天野(以下、天):先生は、実習の期間を伸ばすなど、京都府立医大のカリキュラムを大きく改革されましたよね。

:はい。でも、本当に大事なのは実習期間の長さではなく、実習の質ですよね。これからの医療には、大病院から診療所・在宅、ひいては地域全体までを見通し、俯瞰する視点が必要だと考えています。私自身も、リハビリを専門とする病院での勤務を経験して視野が広がりました。急性期の医療を受けた後の患者さんがリハビリ病院に転院して、その後在宅医療に移行する…という流れを見られたことが、リハビリや介護に興味を持つきっかけになったのです。学外での実習は、大学の中では学べないことを学ぶ、またとない機会ですから、より充実したものにしていきたいですね。

将来に向けてできること

:医学生という立場は、医師免許は持っていないけれど一般の方よりは医学の知識があるという特殊な立場なのではないかと思っています。何か医学生だからこそできることや、やるべきことがあればぜひ取り組んでみたいです。

:大切なのは、自分のできる範囲で、医療に貢献することだと思います。例えば、突然人が倒れた現場に居合わせたとして、救急車を呼ぶことは今の知識でもできることです。今後一次救命処置(BLS)などの勉強をすれば、できることは広がるはずです。どんな状況でも、現在の知識と能力に応じてできることは必ずあります。知識や実力をつければつけるほど、できることの幅は広がっていきますよね。

:僕は、総合診療と神経内科に関心があります。できれば両方とも取り組んでいけたらいいなと思っていたので、先生のお話を聞けてよかったです。

:ぜひ、両方に挑戦してほしいですね。専門を突き詰めてから総合診療に向かってもいいし、最初からジェネラルな力をつけて、途中で専門性を開拓することも可能だと思います。

もちろん、自分が思っている通りにキャリアが築けないこともあるでしょう。例えば大学で医学教育に携わりたいと思っていても、そのときポストが空いていないということもあります。大切なのは、チャンスが訪れたときに挑戦できるような実力をつけて待っていることです。学生の皆さんには、まずは自分がやりたいことを見つけて、そこに向かってしっかり勉強してもらいたいと思っています。

山脇 正永
京都府立医科大学 総合医療・医学教育学教室 教授
1988年東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経内科に入局。2003年東京医科歯科大学医学部准教授(臨床教育研修センター)に就任。2011年より現職。日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医。

稲葉 哲士
京都府立医科大学 5年
大学の教授とじっくりお話をさせていただく貴重な機会になりました。先生と同じく総合診療や医学教育、神経に興味がある者として、キャリアの先輩としてのありがたいお言葉をたくさんかけていただき、これからに自信が持てました。

天野 将明
京都府立医科大学 2年
医学生である今を、そして医師としてのこれからをどう過ごしていくかについて熟考するきっかけになりました。これを機に様々な分野にアンテナを張りながら、将来本気で取り組みたいことを確立していこうと思います。

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