【眼科】古川 達也先生
(神戸掖済会病院 眼科)-(前編)
――古川先生はなぜ眼科を選ばれたのですか?
古川(以下、古):実家が眼科でしたから、もともと眼科は選択肢の一つでした。でも、眼科医を目指して医学部に入ったわけではないんです。僕は人と話すのが好きだったので、色々な人と話せる職業に就きたいなと思って。臨床実習などで色々な科を回り迷いましたが、卒業するころには、眼科に進むことを決めていました。
――卒業後、臨床研修はどちらへ行かれましたか?
古:兵庫医科大学です。眼科に入局した後は、全身を診る機会は減ってしまうので、臨床研修では他科をたくさん見ておこうと考えました。そこで、1年目は救急や一般外科など、2年目は眼科のほか、糖尿病内科や神経内科など、眼科に関わりの深い科を回りました。「目の症状で眼科を受診したけれど、実は他科の疾患が原因だった」ということもありますから、研修の時に他科を経験しておいてよかったなと思っています。
――2年目で眼科を回った際は、どのように過ごしましたか?
古:まず、外来を担当する上級医の先生にべシュライバー*として付いて、診察の様子を見て学びました。手術に関しては、上級医の先生方の質問に答えるかたちで、手術内容をつぶさに復習しました。その他、眼科でよくオーダーされる検査についても一通り学びました。僕は、検査の方法や手順を、臨床検査技師さんの隣で見学させてもらうようにしていました。実際には、検査はすべて技師さんが行い、医師はデータを見て判断することがほとんどですが、どんな機械、どんな方法で検査しているかは、医師も熟知しておくべきだと考えたからです。
――臨床研修で眼科を回る際、大変だったことはありますか?
古:それまで学んできたことが、全く通用しなかったことです。眼科は非常に特殊な分野で、詳しく勉強する機会もなかったんです。国家試験でも眼科はほとんど出題されません。それに自分は昔から視力が良く、実家の眼科にもほとんどかかったことがないので、眼科の雰囲気を全然知らなくて。カルテを読むのも一苦労でしたね。英語の専門用語がわからないので、単語帳で地道に覚えていきました。大学受験も終わった後で、まさかまた単語帳を使うとは思いませんでした(笑)。眼科のカルテは説明がなく図示だけのことも多く、読み解くために、解剖も一から頭に叩き込んでいきました。
*べシュライバー…診察内容などを記録する役割のこと。ドイツ語で「記録係」「書記官」などを意味する。
【眼科】古川 達也先生
(神戸掖済会病院 眼科)-(後編)
――眼科の専門研修ではどのようなことをするのですか?
古:臨床研修に引き続き、外来の見学や記録は続けつつ、病棟管理も任されます。5年目前後で関連病院に出るようになります。僕も昨年から神戸掖済会病院に出て、外来のほか、白内障の手術に取り組んでいます。
――古川先生にとっての、眼科の魅力を教えてください。
古:眼科の手術は劇的に効果が出ることも多く、患者さんに非常に喜ばれます。例えば、白内障で視力がかなり低下していた方が、1.0まで回復したりします。患者さんの喜ぶ姿を見ると、非常にやり甲斐を感じますね。一方、手術だけでは治せない疾患もあります。その場合も、患者さんに長期的に関わるなかで人間関係を構築できるところには魅力を感じますね。
その他、目の症状の裏に隠れている内科や脳神経の疾患を発見し、他科につなぐのも、私たちの使命だと思っています。そのためにも他科に進んだ友人との情報交換は大切にしています。
――最後に、学生さんへのメッセージをお願いします。
古:眼科では、糖尿病網膜症などの慢性疾患を診る機会も多いです。患者さんとは長い付き合いになるので、信頼関係を築くことは重要です。それに、眼科医は比較的若いうちから外来を持つ一方、眼科にかかる患者さんはご高齢の方が多いんです。「こんな若者で大丈夫なのか」と思われないよう、しっかりと説明し、納得していただく力も必要です。学生のうちから、ぜひ色々な人と関わって、コミュニケーション能力を高めていただきたいです。
また、「最終的にどんな医師になりたいのか」ということも、今のうちからじっくり考えてみてほしいです。例えば専門医資格の取得は一つの区切りだと思いますが、それだけを目標にしてしまうと、その後に何をしたらいいかわからなくなってしまいます。様々な経験を積むなかで、自分が目指す医師像を固めていってほしいなと思います。
医学部卒業 | 2014年 川崎医科大学医学部 卒業 | 川崎医科大学の臨床実習は、一から患者さんのカルテをつけたり、2週間に1回は口頭試問と発表が課されたりと、非常に厳しいものでした。大変でしたが、この時頑張ったおかげで今があるな、と感じます。 | 卒後1年目 | 兵庫医科大学病院 臨床研修 |
卒後3年目 | 兵庫医科大学病院 眼科 専門研修 | 最初の頃は、本当に眼科に進んでいいのかという迷いがありましたが、迷いはすぐに消えました。教授や上級医の先生方は、こちらの意見も汲んでいただきつつ、温かく細やかにご指導くださるので、非常に感謝しています。 |
卒後4年目 | 神戸掖済会病院 眼科 | |
卒後5年目 | 神戸掖済会病院 眼科 | 再来年には専門医資格を取得する予定です。 |
2014年 川崎医科大学医学部 卒業
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