FACE to FACE

山田 達也× 長嶋 友希

各方面で活躍する医学生の素顔を、同じ医学生が描き出すこの企画。
今回は対談形式でお送りします。

 

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山田(以下、山):僕たちは互いに知り合いではあったけれど、面と向かってしっかり話すのは初めてですよね。長嶋くんは先日まで、ケニアで臨床実習をしていたと聞いています。

長嶋(以下、長):はい。外部実習に応募して、ケニアの公立病院に行っていました。医療以前にインフラが成り立っておらず、清潔な水もトイレもない、大変過酷な環境でした。

:ベースとなっている衛生状態を改善しなければ、医師がどんなに頑張って治療してもどうにもならないですよね。

:そう思います。発展途上国のインフラ問題が一気に解決することはあり得ないので、長いスパンで考えていかなければなりません。しかしその変化を待つ間にも、誰かが患者さんを治療し続ける必要があります。目の前のニーズを満たすために臨床医が必要とされているのを痛感した一方で、自分にできることの限界も感じました。そういう現実に直面するなかで、臨床医以外の働き方の可能性も見えてきたように感じます。山田くんは将来どんな働き方をしたいですか?

:僕は、これからの医療者が目指すべき形は、市民に近い場所で、医療というよりヘルスケアという観点から価値を提供することではないかと思っています。というのも、現在日本においては糖尿病や生活習慣病、認知症など、病院の中だけではなく、その人の生活まで見なければ解決できない問題が増えているからです。また、なかなか病院に来ないような人々の健康を守るためにも、医師や厚生労働省からの指導といったトップダウン型ではなく、地域住民によるボトムアップ型の医療が、これからますます求められると思います。そこで僕たちinochi学生プロジェクトでは、地域コミュニティの中にヘルスケアリーダーを一人置いて、周りを巻き込みながら行う医療を提唱しています。

:そういう医療なら、住民のネットワークが強い地域の方がやりやすいかもしれないですね。

:はい。そして、例えばAEDをタブレットと連動させ、心停止の方により素早く届けるシステムを作るなど、テクノロジーを医療に応用し、地域社会に根付かせることが、今後ますます重要になってくると思います。また医師には、地域住民を説得し、アイデアを実行に移していく能力も必要になるでしょう。

:興味深いですね。僕は高知での病院実習を通して、地域の様々な課題を見ています。少子高齢化が先進する高知にいると、東京や大阪の未来を一足先に体感しているような気分になります。また、昨年スタンフォード大学のヘルスハッカソンに参加し、未来のヘルスケアテクノロジーを創造する現場を経験しました。このように、未来の医療の課題と解決策の双方に、学生のうちに触れる機会を持てたことは、将来の糧になる気がします。高知・シリコンバレー・アフリカという極端に異なる環境に飛び込んできた医学生は僕だけだと勝手に自負しています。

:僕たちは団体や活動内容は違うけれど、現場の課題を解決することが大事だと思っているところは一緒ですね。僕は、課題解決に忠実でいたい。手段を問わず、課題に対して真摯に向き合っていくことこそが重要じゃないかと思っています。

:僕と山田くんに共通しているのは、臨床を基盤にしながら、現場の課題に価値があると信じる姿勢なのかもしれませんね。

:そうですね。現場に出て臨床研修をするのが楽しみです。

山田 達也(大阪大学4年)
1995年生まれ。大学2年の時にinochi学生プロジェクトに参加。関西の中高生・高専生、そして全国の大学生と「認知症の社会課題の解決」に取り組むプロジェクトのリーダーを経て、現在はinochi学生プロジェクト2018の代表を務める。

長嶋 友希(高知大学5年)
筑波大学体育専門学群を卒業後、ガーナのNGOに勤務し、高知大学に編入学。昨年スタンフォード大学ヘルスハッカソンhealth++に参加。現在health++日本支部のリーダーとして運営に従事する。今夏にはケニアで臨床実習に参加。

※医学生の学年は取材当時のものです。