「食べる」×「健康」

「食べる」×「健康」を考える④(前編)

「食べる」「噛む」を支えるために学生のうちから連携したい

今回は、「食べる」ことと、「噛む」ことについて、多職種の学生たちの座談会の内容を振り返ります。

私たちにとっての「食べる」

私たちにとって、「食べる」という行為はどのような意味を持っているでしょうか。友人との会話を楽しみながらランチを共にしたり、家族とその日一日の出来事を話しながら夕食を食べたりすることもあれば、手早く栄養を摂取して、時間を他のことに使いたいという日もあるかもしれません。自分へのご褒美やお祝いで、少し贅沢な食事をすることもあるでしょう。

このように、私たちが普段当たり前に行っている「食べる」ことには、健康を維持するために必要な栄養を摂取するというだけでなく、食事そのものの楽しみや、人とのコミュニケーションの機会といった役割があります。私たちにとって食事とは、社会的なつながりという側面から見ても、とても重要なものなのです。

口腔機能と口腔衛生

「食べる」ことには、「咀嚼・嚥下」という口腔機能と、これらの機能が発揮される場の環境として「口腔衛生が保たれている」という要素が関わっています。

近年は、口腔内の状態悪化が社会生活の質の低下を招き、ひいてはサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)や低栄養などによる身体機能の低下につながる危険性が指摘されています。むし歯(う蝕)や歯周病が治療されないままになっていたり、入れ歯(義歯)が合わなくなっているなど、様々な理由でうまく噛めない状況が続くと、噛む力は低下してしまいます。すると硬い物が食べにくくなり、柔らかい物を好むようになり、ますます噛む力は下がってしまいます。また、うまく噛むことができないと、食べられない物が増え、それが食事量の減少や食欲の減退を引き起こし、栄養を摂取しづらくなります。そうして身体が弱ってしまうことで、食べること・噛むことがさらに難しくなる悪循環に陥ってしまうのです。

「食べる」を多職種で支える

さて、ここで「食べる」ということを要素に分解し、どの職種が関わるかを振り返ります。

①食事を用意する

②口まで食事を運ぶ

③咀嚼・嚥下する

④消化・吸収する

まず、①食事を用意する場面では、経済的・身体的な不自由がある人のために、福祉サービスの調整や食材の買い出し、調理の支援が必要です。そこにはソーシャルワーカーやケアマネジャー、介護職が関わります。

食事を用意できても、食器から口まで運ぶことができなければ食べることはできません。②の口まで食事を運ぶことへの支援としては、理学療法士や作業療法士が、食べ物をこぼさず口に運ぶためのリハビリを行っています。食事を自力で口に運ぶのが難しい場合は、介護職が介助をします。

食事を口まで運ぶことができたら、食べ物を③咀嚼し、飲み込む(嚥下する)必要があります。嚥下については耳鼻咽喉科医が深く関わっており、歯科医師や歯科衛生士は、できるだけ自分の歯で食べられるよう支援し、難しい場合には入れ歯を作り調整します。また、言語聴覚士は、飲み込む機能を主に支援するリハビリ専門職です。そうして体内に入った食物が、④消化・吸収され、栄養として取り込まれているかを評価し、必要に応じてカロリーの調整を管理栄養士や薬剤師と行うのが、医師・看護師です。

これまで見てきたように、「食べること」「噛むこと」の支援には、多職種が関わることが非常に重要となっています。

学生のうちから連携を意識

本企画では、「食べる」を支える多職種連携について、学生のうちにどのようなことができるか、何を学びたいかということについて議論してきました。今後は、学生たちから出てきたアイデアや要望をもとに、「食べる」ことを支える多職種連携に関して、学生が地域での活動や学習などを行える取り組みについて、より具体的に紹介していきたいと考えています。

 

「医師になる」ということ。 読者アンケートはこちら