授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【前編】

今回は大分大学「サージカルラボ『SOLINE』での手術手技実習」

この企画では、学生から「面白い」「興味深い」と推薦のあった授業を編集部が取材し、読者の皆さんに紹介します!

生きた動物での手術トレーニング!

この実習ではブタなどの動物に対し、内視鏡などを用いた手術トレーニングを行います。獣医師から倫理面の講義を受け、実際の手術と同じ設備で、生きた動物を執刀します。緊張感あふれる貴重な体験となるでしょう。

手術の一連の流れを体験できる!

麻酔を含め、一つの手術を最初から最後まで体験できる実習です。実際に手術を体験することで、講義や実習を実際の手術と結びつけて考えられるようになり、その後の深い学びにつながります。

交代で執刀医や助手を務められる!

チームは3人一組で、執刀医と第一助手、第二助手を交代で担当します。全ての役割を経験するため、それぞれの立場で求められることが理解できます。この経験は研修医になって実際に助手を務める際にも役立ちます。

 

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(写真左)動物での手術トレーニングができるサージカルラボ「SOLINE」は、2015年に開設されました。
(写真中央)手術前の学生たちと先生方。
(写真右)初めはぎこちないですが、徐々に様になってきます。

 

授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【後編】

INTERVIEW 授業について先生インタビュー

学生のうちに「SOLINE」を体験しよう

大分大学では、外科医に必要なものとして三つのS――知識(Science)・技術(Skill)・ハート(Spirit)を掲げており、これらを育めるよう、学生から研修医・専攻医・専門医のそれぞれを対象にしたシームレスな教育を行っています。シミュレーターのあるスキルスラボや、サージカルラボ「SOLINE」(アニマルラボ)での手術手技実習もその一環です。

アニマルラボでの実習は世界的に導入されていますし、国内にアニマルラボを持つ大学は他にもありますが、医学生のうちからアニマルラボがカリキュラムに組まれ、手術トレーニングを行える大学は、国内では大分大学だけです。私は、学生のうちから体験できる機会を設けることこそが大切なのではないかと考えています。

学生のうちに動物を用いたトレーニングをすることには多くの意義があります。まず、人の手術と同様に、生命と対峙する臨場感を味わうことができます。感受性の豊かな学生のうちに体験することで、その後の学びに深みがもたらされるでしょう。また執刀医を経験することで、その後の学習を実際の手術と結びつけることができるので、学習がより効果的になります。実際に、「学生時代にアニマルラボを経験した研修医は手術手技のレベルが高い」という評判も聞かれます。さらに大学としても、学生に実際に手術を体験してもらうことで、「外科は難しそう」というネガティブなイメージを払拭することができると思っています。

2018年7月現在、「SOLINE」での実習を体験した学生は延べ70名程度ですが、今後もより多くの方に利用してもらいたいと思います。他大学にも門戸を開いていますので、卒前教育に利用したい大学があれば、ぜひ声をかけていただきたいです。

猪股 雅史先生
大分大学医学部
消化器・小児外科学講座
教授

学生からの声

チームで取り組む大切さがわかります

6年 照山 直樹
この実習では3人一組になって実際の手術を体験します。シミュレーターでの練習は一人ですが、この実習では小さなチームで手術に取り組むので、周りとどう協力していくかを考えさせられる良い機会でした。この経験は、この先行うチーム医療にも活かせると思いました。

ポリクリで外科を回る決め手になりました

6年 中溝 めぐみ
私が選択ポリクリで外科を選んだのは「SOLINE」での実習があったからです。この体験を通じて、外科に対する心理的ハードルは下がったと思います。生きている動物は温かく、失敗できないという緊張感と臨場感がありました。実際に人を手術するときのことを想像できました。

シミュレーターより多くの学びがあります

6年 首藤 広恵
今まで手術の助手を何度か経験しましたが、思うように動けないこともありました。この実習で執刀してみて、助手にどう動いてもらうと手術がやりやすいかが実感できました。研修医になる前に、力加減など、シミュレーターではわからないことを経験できて良かったです。