噛む力を維持・向上させよう

2軒目の訪問先である神谷家。かたいものが食べにくくなった夫に合わせ、夫婦でやわらかい食事を摂っています。四堂先生は、噛む力に合わせた食事を摂るだけでなく、咀嚼機能そのものを向上させたいと考えます。

 

 

神谷 進 84歳
70歳の頃総入れ歯に。孫の成長を見るのが楽しみだが、昔のように頻繁に顔を見せてくれなくなり、少し寂しく思っている。

神谷 節子 80歳
真面目で遠慮深い性格。夫のことを献身的に介護している。最近の悩みは、好物の漬け物が食べにくくなったこと。

畑中 久美子 52歳
専業主婦。神谷夫妻の次女。神谷夫妻の家から車で10分程度のところに、夫と息子と暮らしている。

「噛めない」のはなぜ?

神谷進さんは総入れ歯で、最近「かたいものは痛くて食べられない」と訴えるようになりました。妻の節子さんは、進さんの訴えに応じてやわらかい食事を用意するようになりました。しかし、実際は入れ歯が合わなくなったために痛みが出ている可能性もあります。その場合やわらかい食事を摂り続けることが、かえって残っている噛む力を衰えさせることになりかねません。

歯が抜けると、歯茎は少しずつ痩せていくため、当初はフィットしていた入れ歯が、次第に合わなくなってくることも少なくありません。「かたいものが食べにくい=咀嚼機能の低下」と決めつけることなく、広い視野に立って原因を探る必要があります。

続いて、妻の節子さんに注目してみましょう。今のところ歯や口の状態に大きな問題はありませんが、進さんに合わせてやわらかいものばかり食べているようです。このままでは咀嚼筋が衰え、次第に食べられるものが減り、さらに筋肉が落ち、話す機能や嚥下機能まで低下する、という悪循環に陥ってしまう可能性があります。

食べることに限らず、高齢者の健康維持には、「使える機能はできるだけ使って衰えを防ぐ」というアプローチが重要です。噛む習慣づけや咀嚼訓練はもちろん、噛む必要がある料理を毎日の食事に取り入れるなど、多角的な支援が求められます。

 

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