医療者のための情報リテラシー
情報化社会のシステムを知り、上手に活用するために
医学生のAくんは、実習をしている病棟で有名な女優が入院しているのを見かけました。大ファンだった彼は、嬉しくて「実習先で好きな女優に会った!」とツイッターに書きました。親しい友だちしか見てないし、ぼかしているから大丈夫だと思ったためです。
するとすぐに友人のBさんが、「Aくんの実習先って◯◯病院だよね?」というリプライをしてきました。そんなこと書くなよ…、と困惑していると、さらに知らない人から、「もしかしてその女優って××ですか?」と名前をずばり当てたリプライまで来てしまいました。
Aくんは慌てて自分のツイートを消しましたが、そのときすでにこれらのやりとりはネット上に広まっており、「女優××が◯◯病院に入院!?」「医学生が情報漏洩!?」などと、ネット上で大騒ぎ…。大変なことになりました。
SNSだからこそ起きること
なぜAくんのツイートが、このような問題に発展したのでしょうか?
一番大きな原因は、SNS上には「友だち」のつながりがあるということです。この事例でも、Bさんが病院名を明かしたことが騒ぎのきっかけとなりました。
SNSの使い方は人それぞれ違います。Aくんのようにこっそり使いたい人から、Bさんのように無頓着でオープンな人まで。SNS上の情報は、自分だけでなく「友だち」のSNSの使い方にも左右されるので、コントロールはほぼできません。
さらにこのような感覚の違いがあるため、内輪のつもりで、ときには閲覧の制限までして書いたことすら、それを見た「友だち」が引用したり画像として保存したりしてしまえば、全世界に公開される可能性があります。この例でも、AくんのツイートはBさんなどの「友だち」から、直接の知り合い以外にまで広まったと考えられます。
そうなってから慌てて元の書き込みを削除しても、すべてを消したことにはなりません。そして、そのようなSNS上に残っている断片的な情報だけでも、総合すると想像以上に細かいことまでわかってしまうものです。Aくんはきっと、過去に「好きな女優」について何気なく書き込んでいたのでしょうね。
もちろん、実生活でも口から出た言葉は取り返せませんし、情報がどのように広まるか、身の回りの人がどのような倫理観をもっているかといったことはわかりません。ネット上ではそれよりもっともっと予測がつかないのです。
情報を守るために
Aくんの事例は創作ですが、今年実際に、診療情報管理士が自分の勤める病院でとあるサッカー選手の通院記録を見つけたことを、名前を一文字伏字にした程度でツイートしてしまったという事件がありました。守秘義務違反だとネット上ですぐに話題になり、病院が謝罪する事態となりました。
このようなことが起きないようにするためになにより重要なのは、個人情報を保護しようという心構えです。この実際の事件ではそれすら足りていなかったようですが、現代の情報化社会ではさらに、ネットやSNSについての知識をきちんと身につける必要があります。
「SNS上だからこそ起きる」事態を避け、Aくんのようにならないためにも、怖がるだけでなく、リスクがあることをよく理解し、意識をもって情報を守っていってください。
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