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【呼吸器内科】虎澤 匡洋先生
(順天堂大学医学部附属浦安病院 呼吸器内科)-(前編)

山内先生

――虎澤先生はなぜ呼吸器内科を選ばれたのですか?

虎澤(以下、虎):学生時代から内科志望でしたが、呼吸器に興味を持ち始めたのは臨床実習の頃です。分子標的薬が肺がんに劇的に効いているCT写真を見て感動したことが一つのきっかけでした。がんをはじめ、感染症やアレルギー疾患、膠原病肺など全身に関わる疾患を診ることから、「とても内科らしい内科だな」と魅力を感じました。

――臨床研修先は聖路加国際病院を選ばれたのですね。

:はい。大学時代はわりと楽な方に流されてしまっていたので、臨床研修では周囲と切磋琢磨できる環境に身を置こうと思ったんです。聖路加の内科研修では、循環器・呼吸器・消化器内科はそれぞれ科ごとに回るのですが、それ以外は病棟ごとに回ります。血液内科、神経内科、糖尿病内科など、様々な患者さんを同時期に診ることで、ホスピタリスト的なトレーニングを積むことができました。内科全体を概観でき、今後に活きる研修だったと思います。

――呼吸器内科志望の人は、臨床研修で呼吸器内科を回っておいた方がよいのでしょうか?

:呼吸器を絶対に回る必要はないと思います。むしろ、関連する他科、例えば病理科や、間質性肺炎の治療に関係する膠原病科などを回っておくと有意義なのではないでしょうか。また、感染症内科的な発想も重要ですね。単なる細菌性肺炎だと思っていたら耐性菌に感染していた、ということもありますから。

――3年目も、聖路加国際病院の内科で研修をされたのですね。

:はい。3年目は母校である順天堂大学の医局に入局しましたが、病院ローテーションの一環としてそのまま聖路加に勤務させていただきました。臨床研修の時と同様に内科の各科を回っていくのですが、専門研修医は「病棟長」を任され、病棟のほとんどのプロブレムを、研修医と協力して解決することになります。病棟長の下には研修医が2名いて、それぞれ15人ほど患者さんを持つため、常に30人前後をマネジメントしていました。最初は大変でしたが、次第に研修医の力量を見極め、「ここまでは任せよう」と判断できるようになりました。

――4年目以降はどのような経験を積まれていますか?

:4年目は順天堂に戻り、大学病院の本院で、5年目の今は分院の浦安病院に勤務しています。大学病院に戻ってからは、患者さんのマネジメントの負荷はかなり下がりました。ただ、5年目から外来や外勤を任されるようになり、病棟業務にあてられる時間が少なくなったので、かえって忙しくなったかもしれません。また、病棟では主にがんや肺炎の患者さんを診ていましたが、外来では喘息やCOPDを診ることが多くなりました。入院管理と外来での長期管理は全く違うので、今は一から勉強している感じです。

 

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【呼吸器内科】虎澤 匡洋先生
(順天堂大学医学部附属浦安病院 呼吸器内科)-(後編)

――印象的な症例がありましたらお聞かせください。

:たくさんありますが、1年目の時、間質性肺炎の急性増悪で入院してきた方の症例でしょうか。色々と手を尽くしたものの効果がなく、最終的には呼吸苦を和らげるためにモルヒネを投与しました。それでも苦痛を取り除くことはできず、苦しみながら亡くなっていかれました。それまでも亡くなる方はたくさん見てきましたが、穏やかな最期の方が多かったので、もっとできることはなかったかと悔やんでも悔やみきれない気持ちでした。

間質性肺炎には、ステロイドや免疫抑制剤を使う以上の標準的な治療法は特になく、試行錯誤で治療しなければなりません。この症例を通じて、研究して新たな治療法を見つけるところにも関心を持ち始めました。

――それでは、今後は研究の道に進まれるのですか?

:大学院で研究したいと思っていますが、最終的には臨床に戻るつもりでいます。今は臨床研究と基礎研究のどちらを選ぶかで迷っていますね。臨床に携わるなかで抱いた疑問の解決や、肺がんの臨床研究にも惹かれますが、既存の概念を覆せるのはやはり基礎研究です。10年間はしっかり臨床経験を積んで、一つの区切りを迎えた頃、臨床医としての視点を活かしながら基礎研究にあたるのもいいかな、とも考えています。

また、聖路加時代から屋根瓦式で後輩を教えてきたこともあり、教育にも関心があります。数年後、後進の育成にあたっていられたら嬉しいですね。

 

医学部卒業2015年
順天堂大学医学部 卒業
がん診療に興味があったので、学生時代には血液内科などに進むことも考えていました。
卒後1年目 聖路加国際病院
臨床研修
聖路加の先生方はとても教育的に接してくださいます。また、年次の近い先輩や後輩にも優秀な人が多く、非常に刺激的な環境でした。
卒後3年目順天堂大学医学部
呼吸器内科学講座 入局
聖路加国際病院 内科
卒後4年目順天堂大学医学部附属
順天堂医院 呼吸器内科
卒後5年目順天堂大学医学部附属
浦安病院
呼吸器内科
今年から外来を持つようになりました。大学病院の本院では、かなり上の年次にならないと外来を任されないため、こうして早めに経験を積めることはありがたいです。

 

1week
虎澤 匡洋先生
2015年
順天堂大学医学部 卒業
2019年7月現在
順天堂大学医学部附属浦安病院 呼吸器内科