授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【前編】

今回は島根大学「生化学」

この企画では、学生から「面白い」「興味深い」と推薦のあった授業を編集部が取材し、読者の皆さんに紹介します!

いきなりディスカッションからスタート!

授業は3部構成で、ディスカッション・発表・講義を繰り返します。まずは各回のテーマについて10名程度でディスカッション。わからなかったことを一人ひとりが調べ、次の時間に発表。その後に講義を受けます。

学生が主体的に学び合える場

ディスカッションでは、学生が持ち回りで議長・書記を務め、自分たちで議論を進めるのがルール。与えられた課題を読み合わせながら、全員が今までに学んだ知識をフル活用し、意見や疑問を出し合います。

クリティカルシンキングが身につく

出てきた疑問は各自が持ち帰って自習時間に調べ、その成果を発表。ディスカッションでは静かに見守っていた先生からも、発表の内容や論理展開に対しては鋭いコメントが。より深い考察へと導いてくれます。

 

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(写真左)先生から症例が書かれたプリントが配られます。
(写真中央)皆が気兼ねなく意見を出し合える雰囲気です。
(写真右)担当者を決めて、板書された疑問点を調べます。

 

授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【後編】

INTERVIEW 授業について先生にインタビュー

自力でデータを集め、「何かおかしい」に向き合える医師に

実は、この授業を始めたきっかけは「指導者の講義コマを減らさなければいけない」というカリキュラム上の制約でした。それを逆手にとって、座学では頭に入りにくい生化学を、学生たち自身が考えたり話し合ったりしながら学べる時間にしたのです。ディスカッションから始まる構成は、学生に「お腹を空かせてもらう」ことを意図して決めました。初めから全てを与えられると、わからない、知りたいという知的欲求が消えてしまいます。教員はなるべく口を挟まず、学生たちの議論や発表を聞いたうえで、「ここだけは」と感じた部分を重点的に教えています。

この授業の特色は、ディスカッションという形式だけではありません。多くの医学部では、生化学は低学年次の科目です。しかし、解剖学、生理学を学び、人体をある程度理解してからの方が、生化学の理解度はより深まるのではないでしょうか。そう考えて、島根大学ではこの「生化学」を3年次の授業としました。覚えたはずの知識をディスカッションに使おうとして、「こんなに忘れているのか!」と痛感するのも学びのうちです。

学生のうちは試験に向けて覚えることが多いので、手っ取り早く答えを知りたいという気持ちもわかります。しかし、将来医師になった時、実際の患者さんに「解答」はついてきません。今後は診断や画像解析などをAIが担うともいわれていますが、人間の医師だからこそ感じる「何かおかしい」という違和感は、重要な判断材料になります。また、診断結果や治療方針を伝える場面では、言語的な表現スキルも欠かせません。自分の言葉で考える力や伝える力を磨いて、AI時代をサバイブできる医師や研究者になってください。

土屋 美加子先生
島根大学医学部
生化学講座(代謝生化学分野) 教授

浦野 健先生
島根大学医学部 
生化学講座(病態生化学分野) 教授

学生からの声

基礎と臨床のつながりがわかって良い復習に

3年 成田 恵
これまでに学んできた基礎医学の知識と、臨床的な事例とのつながりが感じられて面白いです。疑問を自分で調べて発表する時間も確保されているので、学んだ内容を整理できますし、発表では他の学生や先生とのやりとりを通じてさらに理解が深められます。

色々な可能性を考えることの重要さを実感しました

3年 辻 拓弥
過去の症例を知識として頭に入れることは大切ですが、それに頼りすぎると先入観にとらわれてワンパターンな診断を下しがちです。この授業では、同じ症例に対しても皆から様々な意見が出され、「そういう可能性もあるのか」と毎回はっとさせられます。

密度が高い、「これが本来の学びだ」と思える授業です

3年 織田 智
ディスカッションが先にあるおかげで、わかる部分とわからない部分が整理された状態で講義を受けることができ、授業全体の効果が上がっています。自分の意見をまとめたり、そのために周りの話を真剣に聴いたりと集中するので、時間が経つのが早く感じます。