医学生×カメラマン
同世代のリアリティー
カメラマン 編(前編)
今回のテーマは「カメラマン」
今回は、同世代の若手カメラマン3名に集まっていただきました。どうしてこの仕事を選んだのか、どうやって専門的な技術を学ぶのか、どんなキャリアを歩むのかなど、詳しくお話を聞きました。
カメラマンになるにはどうすればいい?
飯島(以下、飯):皆さんはどんな仕事をされているんですか?
澤平(以下、澤):僕は今フリーランスのカメラマンとして、別のカメラマンのアシスタントをしたり、自分で撮影をしています。ミュージックビデオや人物の撮影が主な仕事です。
岡野(以下、岡):私も同じくフリーランスでアシスタントや撮影をしています。有名人のインタビューなどに行くこともありますが、好きな分野はファッションです。
野口(以下、野):私は最近まで他のカメラマンのアシスタントをしていました。夏頃から自分でも撮りたいと思い、会社の撮影部に入って社内カメラマンとしてアルバイトをしています。それ以外にも、保育園の運動会やキッズダンスなどの撮影をしています。希望のジャンルは音楽系です。
印南(以下、印):カメラマンになるには、どういう教育や訓練を受けるんでしょうか?
澤:色々ありますが、専門学校や大学を卒業後、撮影スタジオに就職して、技術を学ぶのが一般的ですね。僕たち3人は同じスタジオで出会ったのですが、そのスタジオの場合は、基本的には2年3か月で一通りの技術を学び終わって、巣立つことになります。
パック(以下、パ):具体的にはどんなことを学ぶのでしょうか?
野:スタジオでライトを組み、モデルさんが立ち、写真を撮るという一連の流れを学ぶことができます。クライアントがどんな写真を撮りたいかに応じて、どういう照明を使えばそれが実現できるかを学ぶという感じですね。
印:スタジオで写真を評価してもらう機会はあるんですか?
岡:評価は、専門学校や大学など写真を学び始める段階には受けますが、スタジオに就職した後に受けることはないですね。
飯:卒業試験や国家試験がある医学生とは違いますね。
やりたい仕事に近づくために
飯:スタジオを出た後はどうされるんですか?
澤:その後の進路は自分たちで決めます。好きなカメラマンや付きたいと思うカメラマンを探して、その人に付くこともできますし、フリーランスで働くこともできます。スタジオでずっと働くという選択もあります。
岡:誰かに付く人と、フリーランスになる人の割合は、だいたい半々ぐらいだと思います。
野:誰かに付くときには自分の撮っている写真を見せて、「自分はこういう写真が撮りたいです」とアピールしたりします。人に付くと、もちろん教えてもらえますし、自分も撮らせてもらえる可能性があります。ただ、師匠と弟子の関係はなかなか大変です。相性もあるし、自分の時間が結構なくなります。
澤:その点、フリーランスは自分の思うように撮ることができるから楽しいですね。
岡:ただ、それまで培ってきた関係性からしか仕事はもらえないので、最初から自分がやりたい分野の写真が撮れるとは限りません。95%くらいはつながらないのかな、と感じています。
印:カメラマンに人気のジャンルなどはあるんですか?
澤:ジャンルの選択は人それぞれなので、あまりないですね。ただキャリアとしては、WEBの次に雑誌などの紙媒体、その次に広告、という感じで規模が大きくなっていきます。有名な雑誌や有名な女優さん、大企業の広告などが撮れるようになったら、一気に箔が付きますね。
飯:作品を撮って個展を開催するような写真家を目指す方は多いですか?
澤:そういう道もありますが、金銭的には厳しいことを覚悟する必要があると思います。
野:雑誌や広告で活躍しているカメラマンでも、商業的に撮るのとは全く違う、好きな分野の作品をずっと撮っている人もいます。作家一本より、そういう人の方が多いように思いますね。
パ:フリーランスの場合、どうやって仕事をもらうんですか?
澤:自分のフォトブックをまとめて、「こういう仕事ができます」と発信するのが基本ですね。
野:まずは顔と名前を覚えてもらうことが大切です。アシスタントで現場に入る時は特に、その現場でどんな気遣いができるか、どうすれば自分が気に入られるかは常に考えています。
岡:カメラマンとしての技術だけでなく、人間性や、面白くて現場が和むからという理由でクライアントから仕事をもらえることもあります。自分から個性や魅力をアピールすることが大事だと思います。
医学生×カメラマン
同世代のリアリティー
カメラマン 編(後編)
カメラマンを目指したきっかけは?
印:皆さんはどうしてカメラマンを目指したんですか?
澤:僕は中高時代にインターネットで昔のミュージックビデオなどを見るようになったのがきっかけで、映像の大学に進学しました。そして大学の課題で撮ったおじいちゃんのポートレートを評価されたのが自信になり、この仕事に決めました。
岡:私は工業高校でデザイン系を学んでいて、卒業後に就職するかどうか悩んでいました。すると、私が当時携帯でいつも写真を撮っていたのを知っていた親から、「写真の道に進んだら?」と言われたんです。それで専門学校に体験入学に行ったら、白いスタジオにモデルさんがいて、ファッションの撮影をさせてもらいました。その瞬間に「あ、これだ」と思いました。
野:私は中学時代、友達とうまくいかず、学校に行けなくなりました。その時に私を救ってくれたのが音楽です。中学3年生で初めて行ったライブに感激し、人生でこんなに楽しいものがあるんだ、と思いました。後日、音楽誌でそのライブの写真を見たら、ライブを思い出して感動すると同時に、その夜の記録が残っていることにも感動したんです。その時からライブを撮りたいと思い続けています。死ぬまでに撮りたいアーティストが三組ぐらい決まっています。
飯:皆さん印象的な瞬間があったのですね。
将来どんな風になっていたい?
印:皆さんの将来の展望について教えてください。
澤:定年退職もないので、死ぬまで撮り続けたいですね。
岡:嫌いにならない限りは続けたいです。仕事を辞めたとしても、趣味で撮り続けるかなと。
野:私は目標のアーティストを撮るまでは諦めたくないと思っています。曲げられない目標があるので、仕事としても辞めたくないと思っていますね。
飯:今、医療業界には働き方改革の波が来ているのですが、カメラマンの働き方はどんな感じですか?
澤:フリーランスなので、働き方は自分でコントロールできるのかなと思いますね。
野:私たちの上の世代では、産休・育休に入っている女性カメラマンも多いですよ。
岡:ただ、その人たちは既に有名だったり、「この人にお願いしたい」と言われるところまで行った人です。私も、出産後でも仕事を頼みたいと言われるようになれたら一番なのですが。
野:そこにたどり着くまでが難しいよね。
写真にはその人の生き方が反映される
パ:実は私は写真部だったのですが、最近は忙しくてあまり撮っていません。皆さんはプライベートでも写真を撮りますか?
岡:仕事とは別に、フィルムで写真を撮っています。溜まったら現像に出して、見返して思い出すのも楽しいですね。
飯:SNSなどで写真を載せる人も多いですが、何か物申したいと思うことは…?
野:ありません(笑)。私の友達も写真をSNSに載せていますが、上手だなと思いますし、楽しんで撮っていることが伝わってきますよね。
印:写真を撮るときに心がけていることはありますか?
澤:一枚の写真を撮った時、なぜこの写真を撮ったんだろうと自問自答し、考えています。自分が生きてきた過程が、撮ることの理由になっているはずなので、それを考えていけば、自ずと自分の撮りたいものが見つかるのではと思っています。
飯:すごい。そんなこと、考えたことありませんでした。
澤:何をしているかで撮れる写真も変わってくると思うんです。医師には医師の視点がありますから、それで写真を撮れたら素晴らしいと思います。写真家としては、自分には撮れないものがあってうらやましいですね。
自分ならではの視点で写真を撮りに行こう
印:今日は、カメラマンという仕事の中にも色々な分野の仕事があることを知ることができました。また、自分の積み重ねてきたものを写真に反映できるという考えにも魅力を感じました。私も自分ならではの視点で写真を撮ってみようと思います。
飯:今まで異業種に目を向ける機会がなかったので、とても有意義でした。医師の視点がうらやましいと言っていただくなど、こちらからはとても想像できない考え方があるのも、興味深かったです。
パ:社会人としての自己アピールの重要性なども学ばせていただいて、とても良かったです。私も放置していたカメラを引っぱり出して、撮りに行こうかなと思いました。どうもありがとうございました。
※この内容は、今回参加した社会人のお話に基づくものです。
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