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【小児外科】宮嵜 航先生
(佐賀県医療センター好生館 小児外科)-(前編)

佐久間先生

――宮嵜先生はどうして小児外科医になられたのですか?

宮嵜(以下、宮)):両親が歯科医で医療職に馴染みがあったことと、喘息でよく小児科に通っていたことから、小児科医を志して医学部に進学しました。ただ、臨床実習を通じて外科にも興味を持つようになり、小児医療に携われる外科ということで小児外科を選びました。

――臨床研修はどのように回られたのですか?

:小児科に特化したプログラムではなかったのですが、小児科を3か月、新生児科を3か月、小児外科を5か月と、ほぼ1年間は小児医療に携わっていました。その他、成人の外科も3か月回りました。

――その後、九州大学の小児外科に入局されたのですね。

:はい。入局初年度は大学の小児外科に所属し、病棟管理や術前術後管理、手術の助手などをしていました。一口に病棟といっても、小児の一般病棟からNICUにPICUまで様々なところに受け持ちの患者さんがいるため、よく考えて効率的に回らなければならず大変でした。翌年は市中病院で、成人の外科の各科をローテ―トして経験を積みました。入局3年目である現在は、市中病院の小児外科に勤めています。部長と若手の上司、私の3人体制なので、基本的にすべての手術に入ります。また、新患外来も担当しており、難しい症例でない場合は、診断から手術、術前術後管理まですべて自分で担当します。

――小児外科では、一般的にどのような領域を扱うのですか?

:主に呼吸器と消化器、泌尿器です。脳・心臓・骨・感覚器・筋肉系以外、と言ってもいいかもしれません。かなりジェネラルな科で、覚えなければならない手術も多いです。

症例数が最も多いのは鼠径ヘルニアで、入局初年度から執刀経験を積み始めます。他に市中病院でよく扱う疾患は、臍ヘルニア、停留精巣、急性虫垂炎などです。このような疾患以外は年間で数例あるかないかです。教授クラスの医師でも、初めての症例に出会うことが数年に一度はあるようです。

――小児外科と成人外科で、大きく違う部分はありますか?

:小児外科も解剖学的な部分は一緒ですから、基本的な手技や技術は成人外科と変わりません。ただ、成人外科の先生方の方が各臓器について熟知されていますから、そこから学ぶことは多いですね。

外科を経験してから小児外科に進むという人もいますが、自分の場合はまず小児外科を1年回り、概要をある程度把握したうえで、成人の領域で解剖学的な知識を深めることができました。現在の小児外科診療にフィードバックできる部分も多くあると感じます。

――印象に残った症例はありますか?

:ハイポガングリオノーシス*1という難病の子の症例です。腸管の神経節細胞が少ないために重篤な腸閉塞を起こしてしまうもので、ヒルシュスプルング病*2の類縁疾患です。ヒルシュスプルング病の場合、原則的には神経節細胞がない範囲の腸管を切除して、正常な腸管と肛門をつなげれば快方に向かうことが多いのです。しかし、ハイポガングリオノーシスの場合は、神経節細胞の減少が広範囲に及んでいて、根治が困難です。

私が担当したその子は、当時2歳で、体重はわずか3キロ。静脈栄養からなかなか離脱できず、中心静脈でもルートの確保が難しくなっていました。また、うっ滞性腸炎の予防のため、毎日人工肛門からチューブを入れて腸洗浄もする必要がありました。感染症も起こして泣いているその子に「ごめんね、ごめんね」と声をかけながら、点滴の針を刺したり腸洗浄をしたりするのは辛かったですね。

九州大学では、この疾患に対して、再生医療で腸管の機能を取り戻す研究をしています。自分もいつか新しい治療の研究に取り組みたいと思っています。

 

*1ハイポガングリオノーシス…腸管神経節細胞僅少症。
*2ヒルシュスプルング病…腸の神経節細胞が肛門から連続して欠如するために、便秘や腸閉塞を生じる疾患。