FACE to FACE

山下 さくら × 河野 大地

各方面で活躍する医学生の素顔を、同じ医学生のインタビュアーが描き出します。

 

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河野(以下、河):山下さんは医学連の委員長として、2018年の医学部不正入試問題や医師の過重労働をテーマにした調査に取り組まれました。まず、不正入試問題をテーマにされたのはどうしてですか?

山下(以下、山):問題が発覚した当初は、単に受験生の問題だと思っていました。ですが、調べていくうちに、今まで私がモヤモヤしていたことにも、同じ背景があると気付いたんです。例えば、「女性だから」という理由でライフプランとキャリアの兼ね合いを考えなければならないのは、何だかおかしいなと感じていました。そして、きっとこれは私だけの問題ではなく、医学生全体や、将来働く医療現場の問題でもあるはずだから、絶対にどうにかしたい、何かやらなければと思いました。

:調査では、全国の大学医学部にアンケートを行い、2千人以上の医学生から回答を得たうえ、記者会見も行いましたよね。そこまで積極的になれたのはどうしてでしょうか。

:初めは、私と同じ考えの人が少なかったらどうしようと不安でしたが、アンケートを取ってみると、多少の差はあれど、みんな苦しんでいたんだとわかりました。そして、学生たちがこんなに苦しんでいるということを社会に伝えなければと思い、記者会見を行うことにしました。

自分の名前を出して意見を言うことには怖さもありました。というのも、医学連は全国の医学生を代表する立場で、委員長である私の仕事は代弁をすることだと思ってきたからです。ただ、自分の意見を言わないと何も変わらないし、同じ思いの人がいると思うと、「やりたい」という気持ちの方が勝りました。医学連の仲間たちも背中を押してくれました。

バッシングもありましたが、あえて私が出る杭となったことで、これまで表に出てこなかった意見も出てきたと思います。また、意見をぶつけ合いながらも、互いの一致点を探ることを大事にしてきたので、反対意見を持つ人ともしっかり対話することができました。この調査を通じて、みんなが対話の機会を持つことができたのは、とても良かったと思っています。

:今後の医師の働き方についての意見をお聞かせください。

:性別で人を判断しないようになってほしいというのが一番ですね。「入試で女子を制限するということは、逆に男性を安価でたくさん働く労働者として見ていて、男性の方がかわいそう」という意見が出た時、一理あるなと思いました。“男だから”“女だから”ではなく、各々が自分の生きたいように生きながら、医師需給のバランスも考えつつ、無理なく楽しく働けたらいいのにな、と思います。

とはいえ、道のりは長そうだとも感じます。この状況が変わらない原因は、自分の働き方について深く考える機会のないまま医師になってしまう私たち医学生にもあるのではないでしょうか。もう少し働き方についてしっかり議論する時間を作って、自分のこととして捉えないと、本質は変わっていかないのではないかと思います。

:長時間勤務を美談にしたり、かっこいいと思ってしまう風潮が、まだありますよね。

:そうなんです。でも私は、患者さんは疲弊した医師に診てもらいたくないと思うし、医療者が健康でなければ皆が健康になれないと思います。だから、もっと医療界全体、そして日本全体が「早く帰れる方がかっこいい」という考え方になったらいいなと思っています。

山下 さくら(宮崎大学6年)
宮崎県出身。大学3年生で宮崎大学学生会の執行委員となり、自治会活動に初めて参加。大学5年生で全日本医学生自治会連合の中央執行委員長を務め、入試差別問題に関して全国の医学生にアンケート調査を実施し、省庁交渉や記者会見などを通じて社会に医学生の声を伝える活動を行った。将来は地域の人が求める医療や社会を地域の人たちと一緒に創りたい。

河野 大地(宮崎大学3年)
さくら先輩とは学生会や吹奏楽部などの活動でご一緒していますが、僕にとっては遠い存在のように感じていました。今回のインタビューを通して、先輩の多くの業績は、先輩が私たちと同じように出る杭になることに対する不安を抱えながらも、自分なりの信念を曲げずに行動してきた結果なのだとわかりました。僕も自分の信念を大切にして、これから生きていきたいと思います。

※医学生の学年は取材当時のものです。