授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【前編】
宮崎大学「地域包括ケア実習」
4週間もの間、地域医療を体験できる!
5~6年の臨床実習の一環であるこの実習では、4週間もの間、地域医療の最前線で多職種との関わりや在宅・療養期の医療を体験できます。実習期間中は職員宿舎などに宿泊できるため、腰を据えて取り組めます。
地域住民や行政とも関わることができる!
実習施設は県内の大半の市町村にあり、様々な地域の、様々な規模の医療機関で実習を経験できます。医療機関の中だけでなく、地域住民や行政とも関わることで、その地域をどっぷり浸かって知ることができます。
受け入れ体制がしっかり整っている!
地域で医学生が有意義な実習を送れるのは、受け入れ体制がしっかり整っているから。すなわち、大学と市役所の担当者が調整を図り、地域の医師が情熱を持って教育にあたっているからこそ、実現できているのです。
(写真中央)宮崎県北の地域医療を守る会。学生も参加しました。
(写真右)左から、宮崎大学の桐ケ谷大淳先生、大貫診療所の榎本雄介先生、延岡市地域医療対策室の吉田昌史さん。
授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【後編】
INTERVIEW 授業について先生にインタビュー
教科書に書いていないことを感じ取って
私は、母校の大学に恩返しがしたい、後輩を育てる役に立ちたいという思いで、学生を受け入れています。
開業医の多くは大病院で勤務したことがある一方、大病院で働く医師には、地域の最前線にいる医師の思いや状況が見えにくいのが実情です。学生のうちから地域医療の現場を体験しておくことで、将来大病院で働くことになっても、両輪として地域を支えることのできる医師になれるのではないかと思います。
地域に出ていく意義は、教科書に書いていないことを肌で感じられることだと思います。地域の人たちが医療機関に何を期待し、どんな思いを抱いているのかを感じ取り、地域医療は医師だけで成り立っているわけではないこと、医療機関の敷居を低くし、地域のコミュニティの核となることが「地域を元気にする」という地域医療の本来の目的につながることなどを体感してほしいですね。
榎本 雄介先生
大貫診療所 院長
宮崎大学 医学部 臨床教授
地域の医師のあるべき姿を伝えたい
当院は地域の医療機関でありながら、高度な手術を伴う急性期医療も手掛けています。実習では主に、地域における急性期医療を経験してもらっています。私たちが指導しながら、採血や注射などの手技はもちろん、エコーやCT検査などの評価も学生が行います。技術を身につけて帰ることができたら、きっと医師になったときの自信になるからです。4週間の実習受け入れは大変ではありますが、後継者を育てたいという思いでやっています。学生というより研修医のつもりで教育していますね。
当院の医師は専門性を持って治療にあたっていますが、一方で専門ばかりとはいかないのが地域医療です。町の人の役に立ってこそ、医師である価値があると私は思います。病気だけでなく、患者さんの家族構成や家での生活のことまで知っているなど、地域で働く医師のあるべき姿を学生に伝えることで、地域医療に目覚めてもらえたらと思っています。
赤須 郁太郎先生
医療法人伸和会 共立病院 院長
宮崎大学 医学部 臨床教授
学生からの声
患者さんとの距離の近さを感じました
5年 渡部 和也
内科志望の僕は、一般病棟と回復期リハビリテーション病棟で実習しました。総合診療の外来ではインフルエンザのワクチンを打たせてもらったり、問診を取らせてもらったりしています。
この実習中に実感したのは、大学病院では見ることのできなかった、患者さんとの距離の近さです。患者さんが自宅に戻るためのカンファレンスで、患者さん・ご家族・主治医・リハビリ職が、みんなで今後について真剣に考え、帰った後の注意点を本人に伝え、ご家族とも話し合っていた様子が印象に残っています。患者さん一人ひとりに密着した医療はこういう場所でこそできると感じるとともに、患者さんのQOLを考える大切さを感じました。
知識と実践のつながりを実感できます
5年 永嶋 寛人
新しい患者さんの紹介など様々な業務に携わるので、チームの一員としての意識と、医療者としての責任を感じます。また、大学病院ではシミュレーションしかできないエコーの練習と実践を繰り返すことができ、非常に充実しています。研修医のように接してくださるので、自分の強みや弱みがわかり、モチベーションが上がるだけでなく、大学で学んだ知識と実践のつながりを実感しました。
実習中に出会った患者さんには、ちょっとした頭痛の方もいれば、重症の方もいました。患者さんやそのご家族と何回も話し合う先生の姿を見て、患者さんに合わせたきめ細かい治療ができるのは、中小規模の病院ならではだと感じました。
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