レジデントロード

番外編 特殊な使命を持つ大学の卒業生に聴く
【防衛医科大学校】西井 慎先生
(陸上自衛隊3等陸佐 防衛医科大学校医学教育部医学研究科
消化器病学)-(前編)

羽田野先生

――防衛医科大学校での学生生活の特色を教えてください。

西井(以下、西):「防衛医学」の授業があること、訓練課程が設けられていることが大きな特徴です。防衛医学では、例えば、CBRNE*1によるテロ・災害が発生した場合に備え、危険物の基礎知識や医学的な対処を学ぶ授業、マス・カジュアルティ*2が発生した場合のトリアージや初期対応などを学ぶ授業があります。訓練課程では、普段の基本教練の他に部隊実習の機会があり、硫黄島訓練・富士山行軍・遠泳訓練などを経験しました。

授業以外の学生生活も特徴的です。全寮制で、先輩と二人部屋で生活し、点呼や国旗掲揚、朝礼、掃除などの日課が規則正しく定められています。周囲と協力して寮を運営し生活する体験も、自衛官としての学びにつながっていると感じました。

私は中央観閲式*3の観閲行進で梯隊長を務め、梯隊を指揮しました。また水泳部や東医体の活動、男子シンクロ(WATER防医s)公演の立ち上げ、体育祭・文化祭の運営、アメリカ軍保健科学大学への留学など、学生生活を存分に謳歌していたなと思います。

――卒後は医師と自衛隊医官のキャリアを並行して積むのですね。

西:はい。6年生の時点で、診療科を決めると同時に陸・海・空のどの幕に所属するかも決めます。私は陸を選びました。

幕の選択は診療科選択と同じくらい重要です。なぜなら、卒後3年目・7年目では部隊等に配属されるのですが、幕によって部隊の配属地や勤務内容が大きく異なってくるからです。また、訓練中はけがや体調不良の隊員の初期対応を行い、一般の患者さんに接することはありません。そのため、自分の専門領域を学びに近くの部外病院に週2回通う「通修」の制度があるのですが、幕選びは通修状況にも関わってきます。例えば、陸では山での訓練がありますが、都市部への配属が比較的多く、通修へ行きやすいと思います。海では自衛隊病院の配属が多く、病院での診療に加えて護衛艦に乗艦することがあります。空では自衛隊病院や基地の配属となります。

――卒後の歩みについて教えてください。

西:卒後は自衛隊の幹部候補生としての教育を経て、6月から臨床研修が始まります。基本的には防衛医科大学校病院と自衛隊中央病院で研修します。

3~4年目は専門研修に進むのではなく、部隊配属になります。私は兵庫県伊丹市の中部方面衛生隊に配属され、管轄地域内の山中で、野外病院を設営して患者を搬送・治療する訓練にあたりました。また、衛生隊の隊員に医学的知識や治療方法などを教える役割も担っていました。専門領域についても、通修の間に必死に勉強しました。

5年目からは防衛医科大学校病院で専門研修をし、7年目からは自衛隊阪神病院に配属となりました。8年目からは防衛医科大学校医学研究科に入り、研究の傍ら、外来・内視鏡処置などの診療にも注力しています。

――医官として災害派遣などに従事することもありますか?

西:はい。陸上自衛隊は全国を5つの方面に区分しており、災害が生じた場合には、管轄の方面隊がまず出動します。私が3~4年目に所属していた中部方面衛生隊では、北陸・中部・関西・中国・四国の2府19県を担当しており、私は2014年8月の広島豪雨、2018年7月の西日本豪雨の際に災害派遣活動に従事しました。この時は、周囲の病院機能自体は保たれていたため、主に自隊救護として隊員の診療にあたりました。周囲の病院機能が停止してしまうほどの大規模災害が生じた場合は、現地の診療体制を整えることになると思います。

 

*1 CBRNE…化学(Chemical)・生物(Biological)・放射性物質(Radiological)・核(Nuclear)・爆発物(Explosive)の略。

*2マス・カジュアルティ…災害や事件・事故、紛争などで、同時に多くの死傷者が発生すること。Mass casualty。

*3中央観閲式…陸上自衛隊が3年に1度行う式典。観閲官として内閣総理大臣が出席する。観閲行進には防衛医科大学校・防衛大学校の学生も参加する。