FACE to FACE

Sopak Supakul ソパック・スパグン(パック)× 後藤 郁子

各方面で活躍する医学生の素顔を、同じ医学生のインタビュアーが描き出します。

 

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後藤(以下、後):パックさんとはAMSA*1の活動で一緒に研究発表をしましたが、他にも様々な活動に参加されていて、とても尊敬しています。学外活動に参加する最初のきっかけは何だったのでしょうか?

(以下パ):最初のきっかけは、1年生から参加している、学内のHealth Sciences Leadership Programというプログラムです。このプログラムを通じて公衆衛生やグローバルヘルスに興味を持つようになり、3年生の時には日本医療政策機構のグローバルヘルスのプログラムに参加し、北京大学でフィールドワークを行いました。さらに4年生の時にはソウル大学に2か月留学しました。

:留学中はどのような活動をしたのですか?

:統計学などを教わりながら、ベトナムの非感染性疾患に関する大規模調査の分析・解析を行いました。この研究は私にとって、初めての公衆衛生分野での正式な研究になりました。この結果は帰国後2年かけて、論文にまとめることができました。

:学外活動と勉強との両立は、どうしているのですか?

:医学部にいる以上、常に医学の勉強を優先することを心がけていました。研究などの学外活動は、私にとっては部活みたいなものだと思っています。

:それでも、パックさんほど精力的に活動をしている学生は少ないように思います。そのモチベーションはどこから来るのでしょうか?

:たくさんの人の支えがあると感じるからですね。特に、統計データなどを用いて研究を行う場合、そのデータを集める過程には様々な人の努力があります。だからこそ、途中で投げ出さず、必ず終わらせようと思いながら研究をしてきました。

:卒業後はどのような進路をお考えですか?

:まずは基礎研究の大学院に進む予定です。4年生まで所属していた細胞生理学のラボで骨の再生医療を研究していたのですが、より深く学びたいと思い、臨床研修を行わずにすぐ大学院に進むことに決めました。研究者を目指してMD-PhDコース*2に進んだ同級生はいますが、私のような進路選択は珍しいです。その後の長期的なビジョンは今のところ持っていませんが、進んだ先で一生懸命やれば、次のステップが見えてくると思っています。

最終的には、臨床もやりつつ研究もできる医師になることが理想です。私の指導医がそのような先生だったので、ロールモデルになっています。医療はエビデンスが重要なので、そのエビデンスを作る側になりたいという思いと、それを使って患者さんに医療を届けたいという思いが両方あります。エビデンスが作れて、臨床もできて、公衆衛生にも詳しければ、医療をミクロからマクロまで一貫して見ることができると思うのです。

もちろん、いずれどれかを選ばなければならない時は来ると思いますが、私の知識はまだまだ浅いので、様々な経験を積んでいきたいと思っています。

:最後に、後輩たちにメッセージをお願いします。

:何かに興味を持ったら、とにかく自分のコンフォートゾーンから一歩踏み出してみることが大切だと思います。もし想像と違っていたら途中でやめてもいいので、学生のうちに多くを経験することをお勧めします。様々な経験をすると、自分が良いと思うことや、将来やりたいことにきっと出会えます。そうすれば、自分の将来がイメージできるようになると思いますよ。

*1 AMSA…Asian Medical Students’Association(アジア医学生連絡協議会)

*2 MD-PhDコース…東京医科歯科大学のプログラムの一つ。医学科4年次あるいは5年次修了後に医学科を休学して博士課程に入学し、体系立った高度の医学研究を経験することを目的とする。

mainSopak Supakul
ソパック・スパグン(パック)
(東京医科歯科大学6年)

タイ出身。文部科学省国費外国人留学生に採用され、2013年に来日。大阪大学で1年間の日本語研修修了後、2014年東京医科歯科大学医学部に入学。在学中、グローバルヘルスに関する様々な国内外のプログラムへの参加、公衆衛生に関する研究および論文執筆に加え、AMSA-International (AMSA本部)のDirector of Public Healthを務めた。また基礎研究にも取り組み、骨の再生医療のプロジェクトで論文投稿を行った。今春、神経の再生医療に関する研究をテーマに慶應義塾大学大学院に進学予定。

後藤 郁子(島根大学4年)
インタビューを通じて、パックさんのバイタリティの源を垣間見られた気がします。私を含め多くの医学生は、勉強に部活にバイトにと時間に追われる生活を送りがちですが、時間がないことを言い訳にせず、興味を持ったことには積極的に取り組んでいくべきだと改めて思いました。

※医学生の学年は取材当時のものです。

No.33