授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【前編】

名古屋大学「地域における専門職連携教育 つるまい・名城IPE」

この企画では、学生から「面白い」「興味深い」と推薦のあった授業を編集部が取材し、読者の皆さんに紹介します!

多学部の学生同士が協力し、医療面接に臨む

授業は3時間で、オリエンテーション・ミニレクチャー・グループワーク・振り返りが行われます。メインとなるグループワークでは、多学部の学生同士が協力しながら、模擬患者への医療面接に臨みます。

各職種の得意分野を実感できる!

今回の模擬患者は、患者本人ではなくご家族という設定。それゆえ、情報がスムーズに引き出せるとは限らず、医・薬・看それぞれの観点から多様なアプローチが求められます。これにより、各職種の得意分野を実感できます。

現場で他職種に声をかけるきっかけにも

授業が進むにつれ各職種の距離が縮まり、情報共有や議論がスムーズに。この授業を機に、互いに対する遠慮や思い込みを解消できたという声も多く聞かれます。将来、現場で声をかけるハードルも下がるでしょう。

 

123
(写真左)多学部の学生同士が一堂に会します。
(写真中央)模擬患者さんとの面談で情報を収集します。
(写真右)実習中も互いに声をかけ合っていました。

 

授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【後編】

INTERVIEW 授業について先生にインタビュー

他者の意見を取り入れられる医師になってほしい

この授業は、名古屋大学の医学部医学科5年生、保健学科看護学専攻3~4年生と、名城大学・金城学院大学・愛知学院大学薬学部の5~6年生が共同で行っており、医学生にとっては臨床実習の一環です。2011年度に医・薬の2学科で開始し、2019年度に医・薬・看の3学科での実施が実現しました。

この授業の最も大きな特徴は、模擬患者参加型の多職種連携実習という点です。連携を実践的に体験してほしいという考えのもと、独自のシナリオの作成や、模擬患者の養成に力を入れています。特に、面接相手を患者本人でなく家族にするという工夫によって、多職種による情報収集がより重要となるため、連携に深みを持たせることに成功しています。また、実際の臨床実習の場と違って学生自身が試行錯誤できるのも、シミュレーション教育の利点です。

他学部の学生と共通の目標に取り組むことで、学生は各職種の得意分野を知ることができます。例えば、看護学生は人とのコミュニケーションに慣れていること、薬学生には豊富な薬の知識があることを体感できるのです。また協働を通して、それぞれが今の自分にできることに気付けるので、自信にもつながります。

医学生の皆さんには、この授業をきっかけに、他者ときちんとコミュニケーションができる医師を目指してほしいです。良いコミュニケーションは、患者さんやご家族の安心にもつながります。わかりやすく説明する能力や他者の意見を聴き入れる能力は、座学だけでは決して得られません。自分だけで完結するのではなく、他の人・他の職種の意見を聴きながら、チーム医療に取り組めるような医療者が育つことを期待します。

岡崎 研太郎先生
名古屋大学医学系研究科 地域医療教育学講座
講師

 

 

 

末松 三奈先生
名古屋大学医学系研究科 地域医療教育学講座
講師

 

 

 

高橋 徳幸先生
名古屋大学医学系研究科 地域医療教育学講座
助教

学生からの声

互いに助け合う重要性が実感できました

5年 福田 圭祐
日頃、他学部の学生と交流する機会はなく、共同の授業も初めての経験でした。いざワークに取り組んでみると、薬学や看護学を学んでいるからこその知識や態度に助けられる場面が多々ありました。互いに助け合う重要性が実感でき、将来現場で連携するイメージが湧きました。

それぞれの職種の視点の違いが新鮮でした

5年 吉田 英樹
この授業はコミュニケーションとアウトプットが求められるので、他の臨床実習よりも考えることが多かったです。互いに持っている知識が全く違うため、視点の違いが新鮮でした。特に、患者さんやご家族のサポートを重んじる看護学生の姿勢には多くのことを学びました。

現場での各職種の働きを知ることができました

5年 後藤 亮平
病状の伝え方から、その後の生活や薬の処方までを考える医療面接は初めての経験で、一人では情報を集めきれない設定には苦労しました。現場で各職種がどのように働き、医療に貢献しているのかを知ることができて、やはり多職種が補い合うのがベストだと再認識しました。

 

No.33