地域医療ルポ
良いと思ったらすぐ取り組み、地域の医療をリード

群馬県沼田市 内田病院 内田 好司先生

群馬県沼田市
利根川水系が形成した河岸段丘対岸に位置し、四方を囲む名山や豊かな自然が魅力のリゾート地としても親しまれる。高齢化率は32%を超え、本年度から「健康増進計画 健康ぬまた21(第2次)」に基づいて健康寿命の延伸に取り組んでいる。
先生

高速道路を降りるとすぐ、ゴルフ場や温泉宿の看板と並んで内田病院の案内が見える。程近くに山々を望みながら国道を進むと、畑の中に病院や介護施設が立ち並ぶ一角が現れた。今年84歳になる内田先生は、娘に理事長を譲ってはいるが、今もなお週1回の外来と手術を担当し、警察医も引き受ける現役だ。

「半世紀以上の医師人生で一番苦労したのは、この病院を建てた頃でした。高齢化が問題となるなか、病院と家庭の中間施設を作るという厚生省(当時)の構想を知り『これだ』と思った私は、いち早く建物を設計しました。しかし県から待ったがかかり、空きフロアが二つもできてしまったのです。」

数年後、そのフロアは県内初の認知症専門棟となることが決まり、何とか採算が取れるようになったという。

「経営はとても厳しく、やっていけないと思い詰めたこともあったけれど、この時の苦労は私にとって転機になりました。

医師になりたての頃は私自身向こうっ気が強く、外科の先輩方も『俺が診る患者は幸せだ』という思想だったので、そういうものかなと思っていたのです。けれど自身が辛い思いをしてみて、人としてどのように患者さんに向き合うべきか、改めて考えさせられました。医療はサービス業とよく言われますが、その真意は、自分のやることに自負を持ちつつ、相手を尊重する姿勢にあると私は思います。」

以降、内田先生は関連施設として有料老人ホームやグループホームなどを建設し、地域の高齢者医療をリードする存在となっていく。特に、抑制をなくすケアと、安全でおいしいソフト食の提供には、全国的にもかなり早い段階で取り組んだ。

「どちらも、先進的に取り組む人の本や記事を読んで『これだ』と感じたのです。すぐ筆者に連絡して病院まで来てもらい、一から教えてもらいました。」

常にアンテナを張り、良いと思ったことにはすぐ取り組んできた内田先生。その思想は次の世代にも引き継がれている。

「娘は私よりも発想力が豊かで、近年は地域の子どもとお年寄り、そして障害のある方が一緒に過ごせる施設を運営しています。この地域は人口減少が進んでいるけれど、こうした取り組みは地域の価値を上げることにもつながると思います。」

最後に、これからを担う若い世代へのメッセージを聞いた。

「医学は覚えることが多いけれど、それだけでなく、世界にあまねく目を向けてほしいですね。色々なことを知り経験するほど、懐の深い、温かみのある医師になれると思いますよ。」

 

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(写真左)著書の『肛門疾患アトラス』は絶版だが、今もこの本を評価する医師は少なくないそうだ。
(写真中央)病院外観。周辺には関連施設が立ち並ぶ。
(写真右)田畑に囲まれたのどかな立地。