第5話 一人ひとりの医師を支える

 

 

地域の医療提供体制を守るためには、そこで働く医師たちを守っていくことが大前提となります。一人ひとりの医師を支え、働きやすい環境を構築していくことも、医師会の重要な役割であり使命です。医学生の皆さんも、友人や部活の先輩後輩のネットワークを活かし、互いに協力しながら試験勉強などに励んでいることでしょう。医師会も、医師たちのそうした互助的なネットワークとして機能している側面があります。

まんがで紹介した以外にも、医師会では、医師たちが安心して働くための様々な支援事業を展開しています。日本医師会・都道府県医師会・郡市区等医師会それぞれが事業を展開していますが、ここでは日本医師会が主体で行っている事業について見ていきましょう。

「日本医師会生涯教育制度」は、日進月歩の医学・医療を実践するために、生涯にわたって自らの知識を広げ、技能を磨き、常に研鑽する責務を負う医師の自己学習・研修を効果的に行えるよう支援するための制度です。

また、「日本医師会医師賠償責任保険制度」は、万一医事紛争が起こってしまった際、紛争解決の全面的なサポートを得ることができる制度です。医師・医療に詳しい弁護士・保険会社などから構成される中立的な機関が事件を調査し、賠償責任の有無や賠償金額を判断します。また、弁護士の手配を日本医師会が当事者に代わって行い、弁護士費用や和解・示談にかかる費用が補償される仕組みも備わっています。

さらに、「日本医師会年金」という積立型の私的年金も用意されています。医師は勤務先の変更が多いがゆえに、一般企業に勤務する人に比べて公的年金の受給額が低くなりがちと言われています。医師年金は、こういったデメリットをカバーして老後を安心して迎えるための終身年金制度です。

医師会では、育児や介護と仕事の両立を支援するための様々な事業も行っています。特に女性医師は、出産・育児等のライフイベントにより勤務環境に変化が生じます。「女性医師支援センター」では、「医学生・研修医等をサポートするための会」を始めとする各種講習会・研修会を通じて、先輩医師の体験談などを聴く機会やワーク・ライフ・バランスを考える場を提供するとともに、勤務環境の改善などについて普及・啓発に努めています。

また「日本医師会女性医師バンク」では、様々なライフステージに応じて無理なく就業を継続できるよう、専任コーディネーターが一人ひとりの就業希望条件にあった就業先の紹介を無料で行っています。

医学生の皆さんも、今後医師となって働くなかで、悩みや思いもよらない困難に直面することがあるかもしれません。そのようなときには、医師会に相談してみるということも、ぜひ選択肢の一つとして考えてみてください。