開頭手術か血管内手術か
患者さんにとってベストな方を選択したい
【脳神経外科】根本 哲宏医師
(IMS(イムス)グループ
横浜新都市脳神経外科病院 脳神経外科)-(前編)
人間の神秘に魅せられて
――脳神経外科を目指したのはいつごろからでしょうか。
根本(以下、根):5年生のころだと思います。はじめは救命救急に興味があったのですが、病院実習を回るうちに、何か「これが専門だ」と言える部分を持ちたいなと思うようになりました。そんなとき、脳神経外科の手術の見学で脳を見せてもらう機会があったんです。学生の自分にとって、ヒトの脳を手術するってことはすごく衝撃で。しかも顕微鏡を通して脳を見たら、光の反射でキラキラしていてすごく美しかったんですよ。その瞬間に「これだ」と思いました。人間の神秘のようなものを感じて、それから脳神経外科を目指すようになりました。
――大学を出た後、医局に入らずに脳神経外科の単科病院に就職されていますね。
根:はい。医局にも脳神経外科はあったのですが、北原脳神経外科病院に勤務していたラグビー部の先輩が紹介してくれたんです。理事長に直接声をかけていただいたこともあり、就職を決めました。
――新人の頃の勤務はどのような感じでしたか?
根:はじめは本当に右も左もわからないので、救急外来に呼ばれて難しくない手術を手伝ったり、勉強のために看護師さんにお願いして採血をやらせてもらったり…という感じで一から学びました。脳の手術で最初に入ったのは慢性硬膜下血腫の手術だったと思います。
とにかく頭よりも先に体が動くようにと教えられてきました。目の前に患者さんが来たときに、すぐに動けない医師では困りますからね。「体で考えろ」みたいな感じでした。
――どのくらいの数の手術を経験してきたのでしょうか。
根:正直なところ、あまり覚えていません。もうとにかく忙しくて、脇目もふらず仕事をしていたという感じだったので。毎日あっという間に時間が過ぎて、一日が終わったら決まった飲み屋に飲みに行く…という生活がずっと続いていました(笑)。休みもほとんどなかったけれど、そういうものだと思っていましたね。
開頭手術か血管内手術か
患者さんにとってベストな方を選択したい
【脳神経外科】根本 哲宏医師
(IMS(イムス)グループ
横浜新都市脳神経外科病院 脳神経外科)-(後編)
理想のリーダー像
――現在の病院に移ったきっかけは何だったのでしょうか?
根:当時一緒に働いていた先輩が横浜新都市脳神経外科病院の院長に就任することになり、その院長の下で働きたいと思ったんです。
もともと珍しい病気を治せる医師というより、誰にでも起こりうる普通の病気を確実に治療できる医師になりたいという気持ちがありました。もちろん大学で、特殊で珍しい疾患を学ぶことも大事ですが、自分の目指す姿はそこじゃないなと。だから大学医局にも所属せず、臨床でずっとやってきました。この病院は、自分で手を動かしてしっかり経験を積むことができるので、僕に合っているなと感じます。
――今の病院では、院長と若手とのちょうど中間ぐらいの立場にあたると思うのですが、そろそろチームを率いるということを意識しますか?
根:いや、まだまだですね。8年目に脳神経外科専門医資格はとったものの、手術も最初から最後まで自分ひとりでできるものばかりではないですし、カンファレンスで自分の考え方や知識を話してみても、まだまだだなと。10年目ぐらいになれば、全部一人でバンバンできて、後輩もどんどん指導できて…という姿を思い描いていたんですけど、全然そこまで辿り着いていないです。
今の院長は出会った時、今の僕の5つ上の年齢だったけれど、自分の考え方をしっかり持っていて、その考えを下に示しながらチームを率いていた。本当にすごいなと思いますし、自分の5年後を考えたら、かなり焦ります(笑)。僕の目標とするリーダー像は、今の院長ですね。
貪欲に学ぶ姿勢が大事
――今後のキャリアについて、どのように考えていますか?
根:僕は今、術者としては開頭手術をメインにやっているのですが、いずれは血管内手術に関しても一人前になって、患者さんにとってより適切な方を選択できるようになりたいです。片方のエキスパートになるというのも一つの道だと思うんですが、僕にとっては両方できるのが理想なので、いずれは脳血管内治療専門医資格も取りたいと思っています。自分で両方できるようになるという目標もありつつ、最終的に患者さんにとってベストな治療を提供することができるのであれば、自分の腕だけにこだわらず、いいチームを作ってそこで価値が出せればいいとも考えています。
――これから脳神経外科に進みたいと思っている学生に、何かアドバイスをお願いします。
根:休む暇もないぐらい忙しくて、疲れることも多いと思いますが、何でもポジティブに捉えてほしいなと思います。辛くてもそれを表に出さず、振られたものには何でも挑戦して、一つひとつから貪欲に学んでいく姿勢が大事なのかなと。どこにどんなチャンスが紛れ込んでいるかわかりませんから、がむしゃらに立ち向かっていくのがいいと思いますね。
2003年 杏林大学医学部卒業
2013年4月現在 IMS(イムス)グループ 横浜新都市脳神経外科病院 脳神経外科
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