大久野病院地域連携課(医療ソーシャルワーカー)伊藤 正一さん
社会的困難を支援する
医療費が払えない、会社から退職を迫られている、通勤に支障が出るようになった…。疾患や外傷が原因となって患者さんに生活上の困難が発生することは少なくありません。こうした困難に対し、社会的資源を利用して支援するのが、医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker, MSW)の仕事です。大久野病院の伊藤正一さんにお話を伺いました。
MSWの多くは社会福祉士の資格を持っています。社会福祉士とは、高齢者や障害者、生活保護受給者など日常生活に支障のある人に、福祉や保健医療などのサービスを提案し、生活を支援する仕事です。この仕事のうち、MSWは主に病院内で患者さんと福祉・介護サービスをつなぐ役割を担います。特に急性期病院から回復期病院への転院や、在宅療養への移行などの際に関わることが多いそうです。
「我々の普段の生活は、基本的には一週間のスケジュールと、それに加えてお盆や正月といったイベント…という流れで動いています。私の場合、患者さんの生活スケジュールを一週間の表にして、そこに家族のスケジュールも書き込んで、どの時間にどんな困難が発生するか、そして誰が何を手伝えるのかを見ます。家族の負担も考慮し、介護保険などの支援が必要であればその手続きをお手伝いします。家屋調査を行い、周辺環境も含めて生活に支障がないかを見た上で、必要であれば役所や駅などの公共機関に支援を要請したりもします。」
家族の反対がある、在宅の受け入れ体制が整っていないなど、スムーズに自宅に帰れない場合も少なくありません。こうした場合でも、状況を見極めて最適な解決策を提案します。
「私たちの仕事は、患者さんだけでなくその家族も、みんながより幸せに過ごせるように支援すること。退院がゴールではなく、場合によっては5年、10年先までを予想して働きかけることもあり、ときには厳しいことを言わなければならないこともあります。そんな私たちが現場で強く求められるのはコミュニケーション能力。私たちは『手当て』をする専門職ではないからこそ、患者さんや家族の感情を汲み取るコミュニケーション能力を常に高めていかなければと思っています。そうやって信頼関係を築いてはじめて、福祉の専門知識を支援に活用していけるのだと考えています。」
世間的にはまだまだ認知度が高くない職種ですが、伊藤さんは積極的に多職種にも声をかけ、何ができるかを伝えています。
「私たちは病院内だけでなく、常に外にも目を向けていなければならないと思っています。医療とそれ以外の制度やサービスをつないでいくことが私たちの役割ですので、先生方も患者さんに何か社会的な困難がありそうだなと感じたときは、ぜひ私たちを活用してほしいです。」
※この記事は取材先の業務に即した内容となっていますので、施設や所属によって業務内容が異なる場合があります。
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