明理会中央総合病院(言語聴覚士)川口 静さん

チーム医療のリーダーシップをとる医師。円滑なコミュニケーションのためには他職種について知ることが重要です。今回は、言語聴覚士の仕事を紹介します。

ニーズの高まる職種

言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist, ST)はリハビリ専門職のひとつで、国家資格になったのが1997年という新しい専門職です。今回は、明理会中央総合病院の川口静さんにお話を伺いました。

STの資格を得るためには、専門学校や大学で言語障害、聴覚障害、音声障害、嚥下障害といった、「話す」「聞く」「食べる」ことに関する障害について学びます。障害のメカニズムを熟知し、その検査・評価・訓練を行うプロなのです。

「授業では、失語症や構音障害といった言語障害について学ぶことが多かったです。また精神発達遅滞や自閉症のお子さんへの訓練を学ぶこともあります。進路は様々で、病院以外にも、補聴器メーカーや小児施設、介護施設などに就職する人もいます。」

このようにSTは、働く施設や発揮する知識・技術も様々な職種ですが、川口さんの勤務する急性期病院では、嚥下障害のリハビリが約7割と最も多いそうです。他には、脳卒中を起こした患者さんの言語障害のリハビリも行っています。高齢化に伴い、今後ますますニーズの高まる職種といえるでしょう。

「この病院では、誤嚥性肺炎の患者さんが多いことが問題になっていました。そこでNST(栄養サポートチーム)と医療安全委員会に付随して、ST4名を含む多職種からなる摂食嚥下サポートチームを作り、入院時に患者さんのスクリーニングを行うようにしました。例えば、『脳血管障害の既往あり』『誤嚥性肺炎で入院』などの項目をチェックし、リスクが高い患者さんのところへは毎日ラウンドしています。この取り組みにより、入院中の誤嚥性肺炎はかなり減りました。」

勉強会や研究会で周知

このような活動を自主的に行っていくためには、医師や看護師など他の様々な職種からの理解が欠かせません。川口さんはどのように信頼を得て来たのでしょうか。

「数年前から、NSTのドクターの勧めで、各病棟で看護師向けに10分程度の嚥下の勉強会を開いています。おかげで私への信頼も深まり、急変があったときもスムーズに対応してもらえるようになりました。

また、ドクターへの働きかけとしては、誤嚥が起きていないかをみる『嚥下造影検査』という検査を、勉強会や研究会などで周知しています。私たちが『誤嚥の危険がある』と判断する理由を画像で明確に提示することで、より多くのドクターに私たちの仕事を理解してもらえているように感じます。

嚥下障害では、検査や訓練自体に、むせたり息が詰まったりするリスクが伴います。患者さんの安全を守るためにも、ドクターからご家族にリスクをしっかりご説明いただいた上で訓練のオーダーを出してもらえたら、私たちもとても仕事がしやすいです。」


※この記事は取材先の業務に即した内容となっていますので、施設や所属によって業務内容が異なる場合があります。

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