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日本医師会員のみなさまへ

診療情報の提供に関する指針[第2版]

2002.10.1

PDFはこちら(日医雑誌H.14.11.15号付録)PDF

平成14年10月
日本医師会

1 基本理念
1-1 この指針の目的

日本医師会は、医師が診療情報を積極的に提供することにより、患者が疾病と診療の内容を十分に理解し、医療の担い手である医師と医療を受ける患者とが、共同して疾病を克服し、医師、患者間のより良い信頼関係を築くことを目的として、会員の倫理規範の一つとして、この指針を制定する。

日本医師会のすべての会員は、この目的を達成するために、この指針の趣旨に沿って患者に診療情報を提供する。

2 定義および適用範囲
2-1 この指針で使う用語の意味

この指針で使う主な用語の意味は、以下のとおりである。

  • 1. 

    診療情報

    診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医師またはその指揮・監督下にある医療従事者が知り得た情報

  • 2. 

    診療録

    医師法第24条所定の文書

  • 3. 

    診療記録等

    診療録、手術記録、麻酔記録、各種検査記録、検査成績表、エックス線写真、助産録、看護記録、その他、診療の過程で患者の身体状況、病状等について作成、記録された書面、画像等の一切

  • 4. 

    診療記録等の開示

    患者など特定の者に対して、診療記録等の閲覧、謄写の求めに応ずること

3 診療情報の提供
3-1 診療情報提供の一般原則
  • a 

    医師は、患者に対して懇切に診療情報を説明・提供するよう努める。

  • b 

    診療情報は、口頭による説明、説明文書の交付、診療記録等の開示等、具体的状況に即した適切な方法により提供する。

3-2 診療の際の診療情報提供
  • a 

    診療中の患者に対する診療情報の説明・提供は、おおむね、次に掲げる事項を含むものとする。

    (1)現在の症状および診断病名

    (2)予後

    (3)処置および治療の方針

    (4)処方する薬剤については、薬剤名、服用方法、効能、特に注意を要する副作用

    (5)代替的治療法がある場合には、その内容および利害得失

    (6)手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要、危険性、実施しない場合の危険性、合併症の有無

  • b 

    患者が、「知らないでいたい希望」を表明した場合には、これを尊重する。

3-3 診療記録等の開示による情報提供
  • a 

    医師および医療施設の管理者は、患者が自己の診療録、その他の診療記録等の閲覧、謄写を求めた場合には、原則としてこれに応ずるものとする。

  • b 

    診療記録等の開示の際、患者が補足的な説明を求めたときは、医師はできる限り速やかにこれに応ずるものとする。

3-4 診療記録等の開示を求めうる者

診療記録等の開示を求めることができる者は、原則として次のとおりとする。

  • (1) 

    患者が成人で判断能力ある場合は、患者本人

  • (2) 

    患者に法定代理人がある場合は、法定代理人。ただし、満15歳以上の未成年者については、疾病の内容によっては本人のみの請求を認めることができる。

  • (3) 

    診療契約に関する代理権が付与されている任意後見人

  • (4) 

    患者本人から代理権を与えられた親族

  • (5) 

    患者が成人で判断能力に疑義がある場合は、現実に患者の世話をしている親族およびこれに準ずる縁故者

3-5 診療記録等の開示を求める手続き
  • a 

    診療記録等の開示を求めようとする者は、各医療施設が定めた方式にしたがって、医療施設の管理者に対して申し立てる。

  • b 

    前項の申立人は、自己が〔3-4〕に定める申立人であることを証明するものとする。

  • c 

    a項の申し立てを受けた医療施設の管理者は、速やかに診療記録等を開示するか否か等を決定し、これを申立人に通知する。

3-6 費用の請求

医療施設の管理者は、診療記録等の謄写に要した代金等の実費を、診療記録等の開示を求めた者に請求することができる。

3-7 医療施設における手続き規定の整備

医療施設の管理者は、診療記録等の開示請求、実施、費用請求等に関する規定および申し立て書等の書式を整備する。

3-8 診療記録等の開示などを拒みうる場合
  • a 

    医師および医療施設の管理者は、患者からの診療情報の提供、診療記録等の開示の申し立てが、次の事由に当たる場合には、〔3-1〕、〔3-2〕および〔3-3〕の定めにかかわらず、診療情報の提供、診療記録等の開示の全部または一部を拒むことができる。

    (1) 対象となる診療情報の提供、診療記録等の開示が、第三者の利益を害する恐れがあるとき

    (2) 診療情報の提供、診療記録等の開示が、患者本人の心身の状況を著しく損なう恐れがあるとき

    (3) 前二号のほか、診療情報の提供、診療記録等の開示を不適当とする相当な事由が存するとき

  • b 

    医師および医療施設の管理者が前項により申立の全部または一部を拒むときは、申立人に対して〔6-2〕に定める苦情処理機関があることを教示するものとする。

4 医師相互間の診療情報の提供
4-1 医師の求めによる診療情報の提供
  • a 

    医師は、患者の診療のため必要があるときは、患者の同意を得て、その患者を診療した若しくは現に診療している他の医師に対して直接に、診療情報の提供を求めることができる。

  • b 

    前項の求めを受けた医師は、患者の同意を確認したうえで、診療情報を提供するものとする。

5 遺族に対する診療情報の提供
5-1 遺族に対する診療情報の提供
  • a 

    医師および医療施設の管理者は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して死亡に至るまでの診療経過、死亡原因などについての診療情報を提供する。

  • b 

    前項の診療情報の提供については、〔3-1〕、〔3-3〕、〔3-5〕、〔3-6〕、〔3-7〕および〔3-8〕の定めを準用する。
    ただし、診療記録等の開示を求めることができる者は、患者の法定相続人とする。

6 その他
6-1 教育、研修

日本医師会および都道府県医師会は、医師がこの指針を遵守することを促すために、診療情報の提供、診療記録等の開示等に関する教育、研修などの措置を講ずる。

6-2 苦情処理機関の設置

医師と患者との間の診療情報の提供、診療記録等の開示に関する苦情受付の窓口および苦情処理機関を医師会の中に設置する。

6-3 指針の見直し

日本医師会は、この指針を、診療録その他の診療記録等の作成・管理に関する環境の整備、ならびに医療をめぐる諸条件の変化に適合させるため、2年ごとにその内容を見直す。ただし、必要があるときは、何時でも適宜、検討することができる。

附則(平成11年4月1日 制定)

  • 1.

    この指針は、平成12年1月1日から施行する。

  • 2.

    この指針は施行日以前になされた診療および作成された診療記録等については適用されない。

附則(平成14年10月22日 一部改定)

この改定指針は、平成15年1月1日から施行する。

付;指針の実施にあたって留意すべき点
指針1-1関係

1 この指針が働く場合

第一次的には、日常診療の中で起きる診療情報の提供、診療記録等開示の問題を扱う。第二次的には、日常診療が継続している場合に、患者が転医し、あるいは他の医師の意見を求めたいと望んだ場合の情報提供、診療記録等開示の問題を扱う。裁判問題を前提とする場合は、この指針の範囲外であり指針は働かない。

2 この指針の前提

この指針は、診療記録、特に診療録の記載方式が、千差万別である現状を前提にして作られている。診療録などの記載方式、管理の仕方等はできるだけ早く標準化する必要がある。特に、これまで、診療記録に医師自身の自筆による手書きを要求する旧厚生省の指導があったことなどが改革を妨げる大きな要因となっていた。厚生労働省等に対しては、診療録などの記載等の改革に早急に取り組むことを改めて要求するものである。

3 この指針の位置づけ

この指針は、日本医師会会員が守るべき「最小限基準」を定めたものである。したがって、それぞれの医師が、その責任において、この指針が定める以上の開示の道を選ぶことを禁ずる趣旨ではない。しかし、無用な混乱を避けるためには、会員が開設しまたは管理する同一医療施設内の基準は、統一されている必要がある。

指針3-1ないし3-8について

指針〔3-1〕から同〔3-8〕は、診療記録等の開示を含めて、患者に対する診療情報の提供について定めたものである。

指針〔3-1〕、同〔3-2〕が診療情報の提供についての一般原則、指針〔3-3〕から同〔3-8〕までが、主として診療記録等の開示についての定めである。

指針3-1 b関係

診療情報提供の際に診療経過の要約などの説明文書を交付する場合には、患者の理解できる平易な言葉で記載することが望ましい。

指針3-3関係

本項は、診療記録等の開示を求められた場合の対応について定めたものである。診療記録等を開示する際には、紛失等の事故を避けるために、原本を渡すべきではない。費用がかかっても写しを作成し、これを交付すべきである。

指針3-4関係

診療記録等の開示を求め得る者は、患者本人であることを、先ず、確認しておく必要がある。患者の同意がないのに、患者以外の者に対して診療記録等を開示することは、医師の守秘義務に反し、法律上の規定がある場合を除き許されない。

しかしながら、この指針で扱う診療情報の提供、診療記録等開示の趣旨が、患者の自己決定権を尊重し、診療の質を高め、医師・患者間の信頼関係強化を目的としていることから、代理人となりうる者の範囲を、「親族」に限っている。患者の診療情報が、代理権の付与を通じて、営利企業などに利用されることを防ぐとともに、代理人の範囲をここまで拡げておけば、十分実務的な対応ができるからである。もっとも、親族の範囲は、法律上、6親等という広範囲にわたるため、今後の状況を見て、将来的には、例えば扶養義務者とされる3親等内の親族および同居の親族に限ることも考えられる。

(2)号は、例えば未成年の場合の親権者、平成12年4月1日の民法改正に伴い発足した成年後見制度における成年後見人、診療契約に関する法定代理権を付与されている保佐人および補助人などがこれに当たる。

(2)号の但書きの満15歳以上の未成年者については、妊娠中絶等の事案で未成年者と親権者とが対立する場合が生じ、その場合の解決法如何が、諸外国でも問題になっている。欧米では、このような場合には、未成年者の意思を尊重すべきだとの意見が大勢であり、この指針も一応それにしたがった。なお、満15歳は、代諾養子を定めた民法第797条、遺言能力を定めた民法第961条等が、満15歳以上の未成年者に対して、これらについて行為能力を認めたことを参酌して選んだ年齢である。ちなみに、後者から、満15歳以上の未成年者も、移植のための臓器提供の意思を表明できるとの解釈が導かれている(平成9年10月8日健医発第1329号「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針-ガイドライン-参照)。

(3)号の「任意後見人」は、平成12年4月1日、任意後見制度が発足したことに伴い追加された。任意後見人の権限は任意後見契約に関する法律に基づき、公正証書によって作成される任意後見契約のなかで定められている。任意後見契約により診療契約に関する代理権が付与されている場合には、家庭裁判所による任意後見監督人の選任がなされた時点以降、任意後見人を法定代理人と同様に扱うものとした。

(5)号は、成人患者で判断能力に疑義がある場合である。

この指針は、これまでの経験から、現実に患者の世話をしている親族に開示等の道を開いた。しかし、内縁、事実上の養親子関係、実際に患者の世話をしている親族以外の縁故者などもあり得るので、これらの者を含める意味で「これに準ずる縁故者」にも道を開いている。もっとも、この場合の開示は、医師の守秘義務とも関係するので、「これに準ずる縁故者」と認定することには、慎重の上にも慎重を期することが必要である。

指針3-5および3-7関係

1 診療記録等の開示を求める手続き

手続きの問題は、医療施設の態様、規模等とも関係する。それぞれの施設が「指針〔3-7〕医療施設における手続き規定の整備」を考える際に、それぞれの施設に応じた方式を工夫する必要がある。その場合に、施設の大小を問わず、一般的には、申請の方式は書面による申請とすることが望ましい。後日のことを考えると、申請があったこと自体を記録しておく必要があるからである。

2 申請人の身分の証明

指針〔3-5〕bは、守秘義務を遵守するうえで重要である。しかし、身分の確認の問題も医療施設の大小等と関係する。住民の移動が少ない地方の診療所などにおいては、お互いが顔見知りであり、顔を見るだけで誰であるかを確認できるが、大都会の病院などでは、申請者が誰であるかを確認することは容易ではない。大規模医療施設などでは、これまでも必要がある場合には、印鑑証明書、運転免許証の写しの提出等によって、本人であることの確認をすることも行われているので、それらを参考にするとよい。

3 開示申し立てと理由の記載

患者の自由な申し立てを阻害しないために、申立理由の記載を要求することは、不適切である。

4 申し立てを受けた場合の措置

申し立てを受けた場合には、できるだけ早く、その可否を決定し、申請者に回答する必要がある。もっとも、閲覧、謄写を認める場合には、日常診療への影響を考慮して、日時、場所、方法等を指定できる。

なお、病院などの医療施設では、診療情報の提供、記録の閲覧等の申し立てを誰が受け、誰が決定し、誰が立ち会い、誰が説明するかなどの問題がある。申し立てを受ける名宛人は医師法の規定上、医療施設の管理者とすべきである。しかし、開示の可否を決定する場合には、医療施設の管理者は担当の医師の意見を聴くのが相当である。また、立ち会い説明は、診療を担当した医師が行うのが適切であると思われる。担当の医師が不在などの場合、医療施設の管理者である医師が対応しなければならない。謄写などを除き、医師以外の者に問題を委ねることは、不相当なことがあるので注意を要する。

指針3-6関係

1 実費負担について

この項は、診療記録等の閲覧、謄写などに要した代金の実費を、請求することができる旨を定めるものである。例えば、エックス線写真等の謄写に要する費用は、当然、患者など請求者の負担となる。記録の量が膨大な場合には、施設内で謄写をするために長時間、職員等を謄写業務に専念させる必要が生ずる。その場合の人件費を謄写費用のほかに加算できるかという問題があるが、合理的な範囲であれば許される。

2 診療情報提供の対価について

この指針では、診療情報提供の対価についての定めがない。これは、むしろ診療報酬体系の中で決める方が、妥当であると考えるからである。したがって、指針に定めがないことは、診療情報提供に対する報酬請求権を否定することを意味するものではない。

指針3-8関係

この項の(1)および(2)は、診療情報の提供、診療記録等の開示の求めを拒絶できる典型的な事例として、諸外国でも承認されている場合である。しかし、それ以外にも、診療情報の提供、診療記録等の開示を不適切とする場合があり得るので、その場合に備えて(3)を設けた。(3)の不適切事由は、(1)および(2)に匹敵する事由であることを要する。

指針4-1関係

この項は、日本医師会第IV次生命倫理懇談会報告の「4(2) 医師相互間の関係」の提案を明文化したものである。専門家と非専門家との協力、診療所と病院との連携、したがって、それに伴う転医が、病院と診療所相互間で、今後、益々盛んになることが予想される。また、患者が第二医の意見、第三医の意見を求めることを希望する場面も、今後、多くなるものと思われる。

それらの中で、転医先あるいは紹介先の医師等が、その患者を以前に診療した、若しくは現在診療している医師に対して、診療上必要とされる診療情報等の提供を求める際に、備えるべき条件と手続きについて定めたのがこの指針である。周知のとおり、医師は自分が診療した患者、患者情報等について、守秘義務を負っている。したがって、患者本人以外の第三者に診療情報を提供する場合には、原則として本人の同意が必要である。この原則は、医師が他の医師に診療情報を提供する場合にも当てはまる。そこで、医師が他の医師に対して、診療上必要とされる診療情報の提供を求める場合には、患者本人の同意を得て行うべきであるとしたのが、a項である。これに対して、b項は提供を求められた医師に、同意の存在の確認を求めるとともに、各種検査記録、エックス線写真などを含めて、提供を求める医師が必要とする診療情報を提供すべきことを定めたものである。医師相互間の診療情報の提供に際しては、診療記録等の管理者としての責任を全うし、円滑な診療情報の交換を推進するため、できる限り、医師相互間で直接に、検査記録等の写しの受け渡しをすることが望ましい。

指針〔4-1〕の精神は、他の医師へ患者を紹介する際の情報提供などについても参酌されるべきである。

指針5-1関係

平成14年の改定において新設されたものである。患者が死の転帰をたどった場合、従来から、死亡に至るまでの診療経過、死亡原因などについて、遺族に対して説明をする慣行があり、これは医師として当然の責務である。

患者・遺族および医師間の信頼関係をより強固なものとして維持し、高めるために、医師は従来にも増して一層積極的に懇切丁寧な説明-たとえば、診療上の諸記録を遺族に呈示しながらの説明-を遅滞なく実施する必要がある。

同時に、遺族(ただし法定相続人に限定)から診療記録等の開示を求められたときは、医療施設の管理者は、患者を対象とする本指針の定めに準じて、請求に応ずるべきものとした。

なお、本項に基づく説明および診療記録等の開示は、患者本人に対するものでないことから、本人の生前の意思、名誉等を十分に尊重することが必要である。特に遺族間に争いがある場合には、一層慎重な配慮が必要とされる。

指針6-1関係

指針〔1-1〕で述べたように、この指針は単なる宣言的指針ではなく、日本医師会、あるいは都道府県医師会などの倫理規範の一翼を構成することになる。したがって、日本医師会および都道府県医師会は、診療情報の提供に関する教育、研修を通じて、会員に対し、この指針の徹底を図るとともに、指針を守らない場合には、会の倫理規範に反するものとして、医師会の行う強力な指導、教育、研修などを受けさせる ものとした。

指針6-2関係

1 苦情受付窓口、苦情処理機関設置の必要

診療情報の提供、なかんずく診療記録等開示の請求をめぐって、医療施設の管理者・医師と患者との間に紛争が発生した場合の受け皿として、都道府県医師会内に、患者からの苦情相談を受け付ける窓口および苦情処理機関を設置することが有用である。苦情処理機関内に当事者と利害関係のない第三者が介在することによって、当事者の誤解が解消し、事態に即した円満な解決が期待されるからである。

2 苦情処理機関の公平性

苦情処理機関を設置する場合、法律家、その他の医師以外の学識経験者を含む構成とすることが望ましい。これにより、苦情処理機関の公平性が担保されるからである。

以 上