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各論的事項 №14
「利益相反(COI)」

村田 真一(弁護士)

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 利益相反(Conflict of Interest:COI)とは、一般的には、ある行為が、一方の利益になると同時に、他方の不利益になるような行為をいう。

 法律的には、さまざまな利益相反行為が禁止ないし制限されているが、医療との関係では、臨床研究における利益相反行為が重要である。臨床研究はヒトを対象とするため、被験者の生命、安全、人権を守るという観点から実施されなければならないと同時に、医師側は、臨床研究の実施において、資金提供者等との金銭的なかかわりを持つ場面が多いからである。

 世界医師会において作成されたヘルシンキ宣言によれば、医師は、医学研究実施のための資金提供者等との経済的なかかわり等を記載した申告書を実施計画書とともに当該施設の倫理委員会に提出し承認を得ることが必要であるとしている。

 わが国では、文部科学省の主導で検討がなされ、平成18年に「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」が策定され公表され、臨床研究を行う大学、研究機関、病院・診療所等において、経済的な利益などに関して相反状態にある個人や研究者が臨床研究を実施する場合のルール策定のための基本的な指針・情報が開示されている。

 同ガイドラインによれば、臨床研究に係る利益相反を管理する施設・機関は文書化された臨床研究における利益相反に関するポリシーを策定し、マネージメント体制を構築すべきであり、具体的には次のような項目を含むべきこととされている。

1)利益相反マネージメントのプロセス

 ヒト対象の臨床研究を実施する際には、当該研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時に利益相反自己申告書を機関の長へ提出し、施設・機関の長は臨床研究利益相反委員会および該当する臨床研究倫理委員会等へ諮問し、審議の結果についての答申を受けた後、申請者へ研究実施の承認の判断を行うものとする。

2)利益相反申告書

 自己申告書には、①申請研究者およびその家族について、当該臨床研究に関して利害関係が想定される企業・団体での活動の有無、収入の種類と額、②当該臨床研究に係る申請者の産学官連携活動の有無等、③産学連携活動の相手先のエクイティの種類と数量の記載、⑤インフォームドコンセントへの利益相反に関する記載の有無等が含まれるべきである。

3)自己申告書の提出プロセス

 倫理委員会と独立した臨床研究利益相反委員会を設置し、経済的な利益相反に係る評価結果を倫理委員会へ報告し、臨床研究実施に関する最終判断を求めることが望ましい。

4)臨床研究に係る利益相反委員会の役割

 臨床研究に係る利益相反の審査には,利益相反委員会とIRB や臨床研究倫理審査委員会との密な連携方法が明確化されるべきである。

5)評価基準

 各施設のポリシーに基づいて施設・機関ごとに規範や評価基準を策定し、定期的にポリシーの見直しを図りながら改善し対応して行くべきである。

6)委員会構成と運営

 当該委員会の構成員は、臨床研究を実施する施設内の研究者、利益相反問題に精通している者、関連する法律や規則などに詳しい者などを含めるべきである。

7)情報開示

 ヒト対象研究に携わる研究者或いは個人の経済的な利益相反状態に関する当該委員会の意見書または要約した報告書は、当該臨床研究に参加する被験者から要求があれば当該機関の長の責任のもとに開示されるべきである

8)利益相反ポリシーの遵守とモニタリング

  臨床研究に係る利益相反ポリシーは、施設・機関の全職員を対象に遵守を義務付けるとともに、臨床研究の実施において経済的な利益相反状態にある個人に対し当該臨床研究を許可する場合のモニタリングが重要である。

9)ポリシー違反への対応

 ポリシー違反に対しては、臨床研究利益相反委員会の報告を受けて、倫理審査委員会等が対応を決定することが考えられるが、その際には当該機関の長を介して上位の議決機関に上申し、最終判断を求める等の仕組みを整えることが重要である。