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各論的事項 №19
「MRの活動における倫理(業者側の対応)」

仲谷 博明(日本製薬工業協会専務理事)

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 日本においてMR(medical representative, 製薬会社からの医療情報提供担当者)が活動を開始したのは1912年と記されている1)。そして100年が経過した今、日本全国で6万人をこえるMR2)が医薬品の適正な使用と普及を通じて国民医療に貢献すべく、情報の提供、収集、伝達という活動を行っている。

 MRには、医薬品の適正使用情報をお届けするという仕事の性格上高い倫理観が求められるのは当然だが、MRであるまえに企業人としての資質を備えている必要があり、そもそも企業人であるまえに一社会人として様々な法律、規則を守る義務を果たせていなければならない。

 ここに公益財団法人MR認定センターが実施したMR実態調査報告書がある3)。病院、医院、診療所の先生方2,129名から回答を得ている。

 「薬剤を新たに処方する際に最も影響を与える情報源」という問いに、多い順にMR、研究会・講演会、医学書・専門誌、同僚などの他の医師となっている。

 「MRが医療の一翼を担うために必要と思う能力」との問いに対する回答として、1番が人柄、マナー、人間的な信頼性であり、2番目が中立的に情報を提供(長所のみならず短所も説明)、3番目が迅速に対応できる(問合せ回答など)、4番は自社医薬品の学術的な知識の広さ・深さ(エビデンスなど)となっているが、いずれの能力も70%前後の先生方が必要な能力として求めている。

 「MRから伝えてほしい情報」について、1番多い回答が自社医薬品の最新情報(効果、安全性、ガイドラインなど)で2番目が自身の専門領域に関する最新情報、この2項目で約85%のウェイトをしめており、次がインフォームド・コンセントや服薬指導など、患者指導に役立つ情報と続く。同じ質問をMR(13,727人)に投げかけ、先生方がMRに何を伝えてほしいと考えているかを確認したところ、1番目2番目は同じ項目で合わせて76.8%を占めていた。

 最後にMR・所長など(16,827名)と他産業の一般営業職(1,000人)で情報提供や営業上で心がけていることを3つあげてもらうと、大きく違うのが倫理感(40.2:12.0)、社会貢献(29.3:5.8)、サービス精神(9.7:26.8)であった。MR・所長などと他産業の一般営業職とでは仕事に取り組む時の心構えの違いが如実に見て取れる結果となっている。

 これら4問の結果からMRの活動における倫理について考えてみると、医療担当者の方々はMRの人間性をしっかりと見抜き、信頼に足るMRからの医薬品情報および専門領域での医薬品関連の情報に期待するところが少なくなく、もって患者さんに最適な医療を行うことに繋がる存在であることを期待している。また、MR側も高い倫理観をもって適正医療の実現に関わらせてもらうことを通じて社会に貢献したいという自覚を持っていると言える。そしてその実現のために、MRは絶えず最新の医療を学び、そこでの薬物療法につき自社医薬品に限らず知識の蓄積に努めている。

 最後に自身のMRとしての経験から一例を紹介する。場面はある大学病院の医局。術後感染予防も含め感染症治療が薬物療法の重要な地位を築いていた頃、薬物選択の結果は体温の推移等で比較的短期間に確認できていた。抗生物質の業績アップで多くの企業が競っている最中だが、私は医師と私の間に患者さんが居ると想定しながら、何とかその患者さんを治したいという想いで議論をし治療方針について意見交換した。当然のことながら、自社品では無くライバル会社の製品を勧めることも少なくなかった。それでも良い、患者さんが一日も早く治ってくれれば。若い医師とのこのような議論を通じて信頼を勝ち取ることに繋がったと思っているし、質問してもらえるようにもなった。

 そしてこれこそがMRの活動における倫理であると今でも確信している。

 

  • 参考文献
  • 竹原 潤:MR百年史.第1部 通史 MR100年の歩み 序章.薬事日報社,2012
  • MR百年史 第3部 資料編 わが国MR数の経年変化.薬事日報社,2012
  • MR誕生100周年記念「MR実態調査」.公益財団法人MR認定センター,2012