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各論的事項 №22
「医師主導治験について」

今村 定臣(日本医師会常任理事)

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 治験とは、薬事法において、「医薬品又は医療機器の製造販売をしようとする者は、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受ける必要があり、その承認を受けるために厚生労働省に提出する申請資料の中で、ヒトを対象に医薬品又は医療機器の効果(有効性)や副作用(安全性)を確認するための臨床試験」と示されている。従来は、製薬企業等しか行えなかった治験が平成15年7月に薬事法が改正され、医師等が自ら治験を企画・立案し、治験実施計画書、治験薬等概要書や同意説明文書等を作成し、あらかじめ、厚生労働大臣に治験の計画を届出ることにより、医薬品又は医療機器の効果(有効性)や副作用(安全性)を確認するための臨床試験を行えるようになった。これがいわゆる医師主導治験である。

 医師主導治験は、外国では承認されているが国内未承認で、採算性等の問題から製薬企業等が積極的に開発しない医薬品又は医療機器、あるいは国内で承認されているが適応外使用が一般的となっている医薬品又は医療機器について、医師自らが治験を計画し、医療機関において治験を実施し、治験の結果を取りまとめることで薬事法上の承認取得につなげるために行われている。これにより医療の質の向上やドラッグラグ・デバイスラグの解消につながるとして期待を集めている。

 医師主導治験を実施するにあたっては、製薬企業等が医療機関に依頼して実施する治験と同様に、被験者の人権、安全の保護と、その科学的な質と成績の信頼性の確保が必要不可欠であり、そのための基準としての「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28号。「GCP省令」)及び治験を実施中に発生した副作用等を厚生労働省に報告する通知等、その他関連法規等の遵守が義務付けられている。

 医師は、自ら治験を実施しようとする者及び実施医療機関が遵守しなければならない事項を全て網羅記載した治験実施計画書を作成し、必要に応じて、その治験実施計画書により医薬品又は医療機器の効果(有効性)を確認することが可能か、安全に治験が実施できるかについて医薬品医療機器総合機構の助言を受ける。また、治験薬の品質等を取りまとめた治験薬等概要書及び被験者候補に対して治験の内容(目的、方法、期待される効果、予想される副作用等)を説明し、文書による同意を得るための同意説明文書等治験の実施の準備として必要な書類を作成する。さらに、治験に参加した被験者に生じた健康被害の補償のために保険等へ加入する。その後、治験審査委員会において治験を実施することの承認を受けた後、治験の目的・方法等、治験責任医師名、実施医療機関名等を治験計画届書として厚生労働省へ提出し、治験を実施することができる。治験が開始されると治験薬の管理、治験実施中に発生した重篤な副作用情報等の収集や厚生労働省への報告及び記録の保存等治験の実施の管理に係る業務を行う。治験終了後、治験の成績を取りまとめた総括報告書を作成する。製薬企業等は、その総括報告書をもって製造販売承認を取得することとなる。

 医師主導治験が制度化されて約10年が経過し、既にいくつかの医薬品について医師主導治験による試験結果により新たな効能が承認されている。今後も、特に製薬企業等による開発の進まない希少疾病医薬品等に対しては、医師主導治験による試験結果によって承認されると考えられる。