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東日本大震災に関連する情報

JMAT携行医薬品リスト Ver.1.0 コンセプト
 ※リストC,E,F,G,Hを含む

2013.7.11

平成25年7月10日

日本医師会 救急災害医療対策委員会 災害医療小委員会

JMAT携行医薬品リスト Ver.1.0

 

 JMAT(日本医師会災害医療チーム)が被災後1週間以内に被災地へ支援に行く場合、その初期に準備する薬剤の指針を提示する。東日本大震災時の避難所で多く見られた薬剤処方状況は、被災者は普段のように『いつものお薬が欲しい』と依頼することが多い。また風邪薬、口内炎の薬の依頼だけでなく、不眠になった被災者から寝られるためにお薬を欲しいという依頼も出てきた。このように多岐にわたる被災者への支援を可能とし、軽量コンパクトに、そして現場で迅速に処方できることが求められる。

コンセプト :携帯する薬剤選定に問われる必須3項目

 

(1)大多数の医療従事者が知っていて扱いやすいこと

 

(2)値段が安価であること

 

(3)流通上のフローとストックで確保しやすいこと

 ※搬送方法について:ハードやソフトのバッグやケースに入れ、かつジップロック等で小分けし種類別・薬剤別にすると便利である。

 ※薬品名について:ジェネリックも多く活用する場面があるかもしれないが、一般的に広く知られているもので統一すると分かりやすい

 

ハードケース ラベリング 小分け

 

このリストは大まかな薬剤リストであるため、

  • 先発JMATの所持する大まかな指針である。
  • 専門家チームではなく、多くの開業医でも使いやすい内容である。
  • 循環器系、糖尿病系および精神科系の薬剤に関しては、各地域および各個人で使いやすい、また確保しやすい薬剤があるため、このリストにこだわらず調整する必要がある。
  • 季節・災害の種類・感染症情報などにより、薬剤の種類及び数量は変更する。
  • 本薬剤リストは先発するJMATが携帯するためのものであり、被災地の患者情報、薬剤の供給・処方等の状況を基に、後続JMATが持ってくる薬剤を調整する必要がある。
  • 薬剤は半分にしたりして量を調節できるものはそれで代用し、薬価及び重量を下げた。
  • メルカゾールなど様々な薬剤追加のご意見があるが、今回は緊急性があるものや一般的に避難 所で処方数が多いと思われる薬剤をコンセプトに基づいて選択しているため、各団体で出たご意見は団体ごとに自由選択で薬剤を選定できる。
  • 様々なご意見を元に、リストの改訂作業は2年以内で定期的に行う必要がある。

 

 予想される首都直下型地震そして南海トラフ巨大地震では、3ー7日、状況によっては1ヶ月以上の薬剤の不足及び供給低下が予想され、それまでの間は携帯する薬剤で初期の避難所の巡回診療や被災者への医療活動を行うことが求められる。

 JMATの薬剤リストの強みは、単なる薬剤を意味するだけで無く、日本薬剤師会と協力して安定した薬剤供給体制のもと、システムとして対応することを目指している。さらに災害時の薬剤供給はその他生活必要品(水、食糧、その他)の供給と関連するため、医療にとどまらず総合的な被災者支援を視野に入れた活動が可能となる。

 

今回のAセット(成人基本セット)は

想定規模 およそ1000人の地域の避難所(5か所程度)へ支援に行き、300人程度を診察、1人あたり最大3日分処方する状況の1週間を想定
季節 春や秋を想定(梅雨および冬の想定ではない)
時間 緊急時である発災から2週間前後は、余裕がなければ全員に対して通常時のような手厚い処方体制は必ずしも必要ない(例:いつもの高血圧薬が欲しいなど)
参考情報 以下の情報を随時取り込み、改訂をする必要がある。
(1)各学会からのガイドライン、各医師会・学会・医会等からの意見(別紙参照)
 例:お薬手帳をなくした高血圧患者への初期の診察方法と処方方法など
(2)妊婦さん、授乳中の女性、小児・乳幼児への薬剤投与ガイドライン
(3)内服継続が必要な患者を見つけ出すこと
 例:ワーファリン内服中、抗けいれん薬内服中など(別紙参照)
検査 避難所において処方に検査が必要な被災者の対応として、現場では基本的に薬剤の確認のみとし、検査が必要と判断した場合や重症の場合は適宜病院へ相談する。

 

セット内容

成人基本セット
精神科セット
 これは一例であって、薬剤の種類および数量は各自で変更調整する必要がある。
 精神科専門ではないJMATが処方する場合を想定している。
妊婦緊急搬送キット(3セット) アフターピル3セット(必要なら警察に相談)
小児科セット
簡易診断セット
 テステープ(細菌や白血球も測定できるもの)、簡易血糖測定器(アルコール綿や備品も)
 場合によってインフルエンザ診断キット、等
緊急用薬剤セット(現場で迅速に処置が必要な患者のためのセット、病院搬入までのつなぎ)
  • 1型糖尿病→ノボリンR、50%ブドウ糖液、等
  • 緑内障→キサラタン点眼薬,マンニトール、等
  • アナフィラキシーショック→エピペン、適宜ステロイドと抗アレルギー薬、等
  • 喘息発作→電池式吸入器(吸入液はベネトリン吸入液、ビソルボン吸入液等)、サクシゾン注、テオフィリン注、定量噴霧式気管支拡張剤、等
  • てんかん・けいれん→Bセット
  • 切迫早産 陣痛→Cセット
  • 高カリウム血症→メイロン注、カルチコール注、カリメート、アーガメイトゼリー、等
  • ネフローゼ症候群→サクシゾン注、等
  • 心不全:ラシックス注、等
  • 心筋梗塞:ミオコールスプレー(バイアスピリン錠とパナルジン錠はAセット)、等
  • ショック:カタボン、ノルアドレナリン、等
  • CPA・不整脈→アドレナリン、アトロピン、キシロカイン、その他、抗不整脈薬を追加
  • 外傷処置:局所麻酔用キシロカイン、等
これらに輸液と注射セットを適宜追加
(破傷風トキソイド、インフルエンザワクチンなど、感染症に対する準備も考慮)
消毒関係
  • グルコン酸クロルヘキシジン(マスキン)
  • エタノール
  • ポピヨドン
  • 手指消毒用ヒビテンアルコール
  • 次亜塩素酸
これらに使いやすい薬剤を適宜追加
特殊災害関係
 (検討中)

 

今後の課題について

  • ICTによる効率的な薬剤や支援物資の供給のため、日本医師会・JAXAによるデモンストレーション及び衛星利用実証実験に関する協定も踏まえ、クラウド型災害医療情報システムの普及を併せて推進していく。
  • 地域の医師会と薬剤師会との連携により、薬剤師会が本リストに基づく医薬品を備蓄し、災害時に、薬剤師がこれを携行してJMATと同時出動・合流する仕組みを検討する必要がある。

■お問い合せ先:日本医師会地域医療第1課: