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<優秀賞>
「私がなりたいお医者さん」
佐々 ゆかり(10) 東京都中野区・小学4年生

 私のそ父は、五年半前にくもまく下出血という病気でたおれました。春休みのある朝、頭がいたいと言って起きられなくなったそ父は、救急車で病院へ運ばれて行きました。あっという間の出来事でした。病院から電話を受けた母が心配そうな顔で、「手術することになったの。お父様はおじさんやおばさんといっしょに病院でつきそうことになったから」と教えてくれました。私はびっくりしました。だって夕べいっしょに庭でヘールバップすい星を見ていたのに……。ずっと空を見上げていたから頭がいたくなっちゃったのかな?

 そ父はその日のうちに何時間もかけて大手術をして、救命センターという所に入院しました。毎日交たいで父と母がお見まいに行きました。でも病室には三十分だけしかいられないし、子供は入れてもらえないので、私はそ父には会えませんでした。

 「これから一週間が山場です」と父がお医者さんからうかがってきました。母がため息をついていたり、父の暗い顔を見たりすると、家族みんなの心がしぼんだ風船のようになりました。でもそ父はがんばりました。ある日、「もう、ふ通の病とうにうつっても大丈夫」とお医者さんが話してくださった時、今度は家族みんなの顔が喜びいっぱいになり、私の心の中で花火がドカーンとばく発しました。私たち家族は悲しんだり、喜んだり、お医者さんの言葉はま法のようでした。

 たおれてから十か月、体の左側は動かなくなってしまったけれど、そ父は家に帰って来ました。ようち園から帰ってきてと父の部屋に行くと、びっくりぎょう天!病院にしかお医者さんはいらっしゃらないと思っていたのに、そ父の部屋にはお医者さんがいらっしゃったのです。診察に来て下さる先生は、大きくて重そうな黒いかばんを持ってきていました。いつもそ父の診察に来ると、はじめに、「佐々さん、今日はどうですか?」と耳元で声をかけます。それから、血圧をはかったり、脈をはかったりします。注しゃをするときは、そ父はいたそうに顔を真っ赤にします。でもその後は、安心してぐっすりねむってしまいます。

 真夜中にそ父が熱を出してしまったこともありました。すると、鳥のような速さでお医者さんがかけつけてくださいました。私はこの時から、お医者さんにきょう味を持ち始めました。あの黒いかばんの中には、ほかになにが入っているのだろう?どうしてそ父はお医者さんの声を聞くだけで安心してねむることができるのかな?先生が首から下げている聴診器をさわってみたいな。人間の体の中ってどんな音がするんだろう?どうしても聞きたい!お医者さんになれたらいいなあ。

 私は父の知り合いのお医者さんがちょうど家にいらした時に、どうしても聴診器がほしいということをお話ししました。「へえー、ゆかりちゃんお医者さんにきょう味があるんだ。外科のお医者さんは女の人がすくないからモテモテだよ。アハハ、じょう談、じょう談。外科のお医者さんになりなさい。がんばるんだよ。それじゃあ、今度聴診器を持ってきてあげよう」とおっしゃいました。

 そして一週間後……。「わーい!ピ、ピンクの聴診器だ!ありがとうございます!」。私は、まずはじめに自分のむねの音を聞いてみました。「トクトクトクッ、トクトクトクッ」。ゆっくりとワルツのような音がします。次にそ父のむねの音を聞いてみました。「ドクッ、ゴロロロロロ、ドクッ、ゴロロロ」。そ父のたんの音がかみなりのようです。

 こんな音だけで一体何が分かるのかな?音の速さで分かるのかな?それとも音の高さで分かるのかな? 不思議だなあ。お医者さんって、すごいな。これだけでそのかん者さんのじょうたいが分かってしまうのだから。レントゲンをとったり、けんさをしたり、むずかしい勉強が必要なんだろうな。

 お医者さんって、ま法使いみたいだな、と私は思います。お医者さんのたった一言がかん者さんや、私たち家族を安心させてくれます。お医者さんは、薬や治療だけではなく、言葉のま法も使うからです。言葉のま法ってすてきだなあ。そんなま法が使えるお医者さんになれたらどんなにいいだろう!

 お医者さんは人の命をあずかる仕事。お医者さんになるためには、たくさん医学の勉強もして、心配ごとをとりのぞいてあげられるような言葉のま法も勉強して、それからそれからそれから……。やる事はたくさんあるけれど、「またゆかり先生に診察してもらいたいな」と言ってもらえるような、すてきなお医者さんに私はなりたいと思います。


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