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中高生の部
<最優秀賞>
「妹の病を乗り越えて」
福本 咲季(13歳)東京都新宿区・中学2年


 私は将来、医師を志している。

 きっかけは、私の妹が赤ちゃんの頃から重症のアトピーを患っていたことにある。妹は激しいかゆみと炎症でつらい日々を何年も何年も過ごしてきた。私も妹の苦しみが少しでも軽減できるようにと、世話をし励まし続けてきた。

 朝起きるとまず、妹をお風呂に連れて行き、じゅくじゅくした肌に貼りついたパジャマをお湯でゆっくりはがしてやることから一日が始まった。

 日中も常にかゆがる妹をさすり続けながら、私も小さいながらに妹を気の毒に思いつつ、(この先良くなっていくのだろうか)と途方に暮れることもあった。

 母は元来明るく元気な人だったが、睡眠不足とストレスで、体調を崩すことも多くいつも疲れ果てた顔をしていた。

 そのような日々を過ごす中、私たちはアトピーに良いと聞くと、遠くの先生を訪ねたり、温泉の水を取り寄せたり、サプリメントやシャンプーなどの日用品もすべて特別なものを使っていた。これらの努力が報われたのか、一時的に妹の症状が改善されることもあったが、またすぐ悪化するという一進一退を繰り返す日々であった。

 妹が幼稚園に入る頃には、妹も自分の病気を自覚し始め、周囲の友達からも「気持ち悪い」「近寄るな」など、心ない言葉を浴びせられ、傷つくようになっていった。私としては(気持ち悪いなど全く感じたこともないが、他人から見るとそのように思うのだろうか)と、妹の心を踏みにじるようなみんなの言葉に憤りを感じた。

 妹だって好きでアトピーになった訳ではない。治そうと家族一丸になって頑張っているのに。長くて暗いトンネルの中にいるような生活が、その後もしばらく続くのであった。

 しかし、そんな私たちに一筋の希望の光を与えてくれる先生との出会いが訪れた。

 その方は、叔父から紹介された金沢大学教授のT先生だった。私たちは早速飛行機に乗り、T先生の元へ診察に伺ったが、驚いたことに診察室の前は、全国から来た患者で溢れていた。

 T先生が直々に妹を診察してくださり、妹の全身の状態をじっくり見た後、まず第一声に「今まで大変でしたね。よく頑張りましたね」とおっしゃってくださった。

 母はその途端胸のつかえがとれたかのように、泣きくずれてしまった。T先生は教授でお忙しい立場にもかかわらず、「午後から時間をとるので、ゆっくりお話ししましょう」と、おっしゃってくださり、私たちは一旦診察室を後にした。

 午後再び伺った際には、今までどんな生活や治療を行ってきたか、どんな思いをしてきたかなど、ただただ親身に聞いてくださった。

 私はこの時、病気や怪我を治すことだけが医師の仕事ではない、患者本人や家族の心のケア、そして話を聞いてあげることも、重要な役目だということを悟った。

 妹はT先生の適切な治療のおかげでみるみるうちに症状が改善し、今では楽しい生活が送れるようになり、家族みんなで心から感謝している。普通の生活が送れるということが、こんなにも幸せなことなんだということを感じられるのは、8年間という苦労があったからこそだろう。

 このようなこともあり、私は一生医療分野で貢献できる人間になりたいと考えるようになった。医療には様々な分野があり、普通にイメージする診察や手術という臨床だけでなく、基礎的な研究(解剖、生化学など)や教育の分野までとても幅広いと聞いている。

 今は具体的に自分がどの道に進めているかという予想はつかないが、能力やその時の生活環境などで制約はあったとしても、信念を貫いてベストを尽くしたいと思っている。

 今後も努力し頑張ることが、妹を病から救い、心の支えとなってくださった先生への感謝の気持ちなのだ。そして私は、妹からこの言葉をかけられる度に力がわいてくる。

「いつも傍にいて優しくしてくれたことを一生忘れないよ」と……。

 いつの日か医師となり、今度は私が、病気や怪我で苦しむ人々を笑顔にできるように役に立ちたいと心から願う。


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