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平成27年(2015年)10月20日(火) / 南から北から / 日医ニュース

進化するトイレ

 先日、保育園で聞いた話。入園してきた児が、蛇口の下に手を出したまま立ち尽くしていたという。水が出てこない。園の蛇口は自動ではないので、どうしたらよいのか分からなかったのだ。
 数年前に小学校の先生から聞いた話。便器に便だけがあり、そこにトイレットペーパーはなかった。先生方が集まって、この生徒はどのようにしてお尻を拭いたのだろうかとの議論になったという。きっと、自宅ではウォシュレットでお尻を洗い、乾燥させているので、紙で拭くことを知らなかったのではないだろうか、という話になったとのこと。
 子どものことと笑っていられない。誰でも同様なことを何度か経験しているのではないだろうか。ホテルやレストランの洗面台で手を洗おうとして、どのようにすれば水が出るのか迷ったことはないだろうか。自動か手動か、時には足踏み式かを考える。手動となれば、例えばバーを前に引くか横に動かすか。
 便器に水を流す時に、どのボタンスイッチを押したら良いのか迷った人も多いと思う。センサー部に手をかざすことで、水が流れるタイプもある。目が不自由な人や字が読めない人はどうやって対応しているのだろうか? トイレに入る前には、必ず老眼鏡を携帯しているか確認するという友人もいる。自宅で自動洗浄の便器に慣れてしまうと、他所(よそ)で用を足した後に、洗浄ボタンを押すのを忘れて恥ずかしい経験をしたという話も聞く。
 ユニバーサルデザインという名の下に、お年寄り・体の不自由な方のためにということで、次々デザインが変わっていく。製品の目新しさ・便利さが強調され、「人に優しいデザインです」という言葉で全てが許されているように思う。次世代を担う子どもの能力を奪うことなく、世界中からの観光客にも分かりやすいものを、各メーカーが協力して考えていって欲しい。
 人は不便な環境を改善しようとする中で進化してきた。便利さばかりを求め、誰かがつくった快適な環境をただ享受しているだけでは、進化は止まってしまう。

広島県 佐伯地区医師会会報 No.500号より

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