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平成27年(2015年)12月5日(土) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

医療における適切な財源確保を強く求める

 横倉義武会長は、財政制度等審議会財政制度分科会が11月16日に開催され、来年度の予算編成において、厚生労働省が概算要求で見込んでいる高齢化等に伴う増加額の6700億円を5000億円弱にまで削るように提言すると一部で報じられたことを受けて、日医の見解を説明した。
 冒頭、同会長は、高齢化等に伴う増加額の内、医療以外の介護、年金、その他の約3800億円は改定や制度改正がなく支出額が削減できないことから、財政審が主張するように5000億円にすると、平成28年度に診療報酬改定がある医療のみが大きく削減されることとなり、地域医療の崩壊を招きかねないとの危惧を示した(図1)

 次に、過去3年間の社会保障関係費の伸びを示しつつ、2014年度には診療報酬改定で1700億円、2015年度には介護報酬改定等で1700億円を抑制するなど、診療報酬・介護報酬で厳しい抑制が行われてきたと指摘(図2)。こうした過去の経緯を踏まえて閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針2015)」におけるこれまで3年間の社会保障関係費の伸び(1・5兆円程度)の基調を継続していくことは、決定過程の議論を重視し、あくまでも「目安」であるとした。
医療における適切な財源確保を強く求める 医療における適切な財源確保を強く求める  その上で、医療は技術革新により高度化しており、高齢化以外にも、「医療用消耗品」「医療機器」「電子カルテの保守料」などが増加要因となっているとして、それぞれの増加要因について、「手術用特殊縫合糸等手術材料費の高騰」「CT等放射線診断機器の保守管理費用増大やMRIで使用するヘリウムの価格高騰」「電子カルテ導入への支援と既に導入済みの医療機関に対するセキュリティの強固化や地域連携を進めるための保守管理費用等」を挙げて説明した。
 また、中医協の診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(10月30日開催)において、学会等から提出された提案(現在737件)について、新規医療技術の評価及び既存技術の再評価が検討されていることにも触れ、「患者さんに医療の高度化による新しい技術を早く届けるためにも、安全性と有効性が確認されることを前提に、より多くの技術が保険収載されなくてはならない」とした。
 更に、これら高齢化以外の要因は、いずれも技術料から包括して償還されているため、その上昇が医療従事者の人件費を圧迫した結果、医療機関の費用に占める人件費の割合は、2000年度に50・2%だったものが、2012年度には46・4%にまで低下し、約1割減少していること、また、医療機関には約300万人が従事しており、医療の雇用誘発効果は他の産業よりも高くなっていることを示し、医療に財源を投入すれば、特に医療従事者の比率が高い地方では経済の活性化により経済成長を促し、地方創生への多大な貢献につながると説明した。
 最後に横倉会長は、「医療、介護等を中心に今後も増加が見込まれる社会保障費については、財政を緊縮しようとする立場から、成長戦略や規制緩和の名の下に、保険給付範囲を狭める圧力が続くことが予想されるが、未曾有(みぞう)の少子高齢社会の進展と人口減少の中で国民皆保険を堅持していくためには、我々医療側から、過不足ない医療提供ができる適切な医療、例えばロコモティブシンドローム対策や糖尿病、COPD等の生活習慣病対策などを提言していく必要がある」と述べた。
 その一方で、医療経済実態調査の結果でも明らかなように、病院・診療所は厳しい経営状況に置かれており、厚労省が概算要求で見込んだ高齢化等に伴う増加額の6700億円は過不足のない医療提供に必要な財源であると強調。
 その上で、「"財源ありき"ということでの無理な削減によって、医療現場の混乱のみならず、地域での医療機関の経営破綻が現実化する等医療崩壊の再来を招き、国民が必要とする医療が過不足なく提供できなくなるような事態を招くことのないよう、政府に対しては必要な財源の確保を引き続き強く求めていく」と主張した。

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