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平成27年(2015年)12月5日(土) / 日医ニュース

「若年妊娠について」をテーマに

「若年妊娠について」をテーマに

「若年妊娠について」をテーマに

 平成27年度家族計画・母体保護法指導者講習会が11月28日、日医会館大講堂で開催された。
 今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(今村常任理事代読)は、国における少子化対策として、本年4月に「子ども・子育て支援新制度」が始まり、9月には安倍内閣が政策の目標として掲げた「新三本の矢」の一つに、夢をつむぐ子育て支援が盛り込まれたことを挙げ、期待を寄せた。その一方で、近年の性行動の低年齢化に伴い、望まない妊娠が増えている状況については、「妊娠から出産、子育てにわたるまでの総合的な相談や支援をワンストップで行える体制を構築する必要がある」とした。

講 演

 初めに、五十嵐隆国立成育医療研究センター理事長が、講演「わが国の成育医療の課題と健やか親子21の果たす役割」を行った。
 同理事長は、わが国の成育医療の現状や課題を概説した上で、思春期医療の整備の重要性を指摘。そのためには、小児科医が基本的スタンスを変更し思春期医療(米国では21歳まで)を担うことや、健康問題への早期対応ができる健診を若年成人にまで延長すること、健診は個別健診を基本とすることなどが望まれるとした。
 また、65歳以上の高齢者と20歳未満の小児では、国からの社会保障費、年金、医療費等の支出に著しい世代間格差(18対1)があることを示し、「成育基本法」の制定の必要性を強調した。

シンポジウム「若年妊娠について」

 安達知子総合母子保健センター愛育病院副院長・産婦人科部長は、「若年妊娠の全体像と課題」について講演。望まない若年妊娠・中絶をゼロに近づけるためには思春期からの性教育が重要であり、更に、不妊治療・高齢出産のリスクについても教育することが課題だとした。
 光田信明大阪府立母子保健総合医療センター産科主任部長は、「若年妊娠と児童虐待」について検証し、両者には関連性があると考察した。更に、若年妊娠は、医学的にも社会的にもハイリスクであり、教育並びに医療・保健・福祉の連携支援が必要との考えを示した。
 水主川(かこがわ)純聖マリアンナ医科大学病院産科副部長は、「若年妊娠者に対する社会的支援」について説明。若年妊婦はさまざまな社会的問題を抱えていることが多いことから、医療機関で、そうした問題を的確に把握し、評価することが重要であり、また、問題解決のためには、妊娠早期から多職種連携による切れ目のない社会的支援が行われることが望まれるとした。
 種部恭子女性クリニックWe!TOYAMA院長/富山県医師会常任理事は、「性教育でできること」と題して講演。「危機管理」を教えるのが性教育であるとした上で、望まない出産を防ぐためには、「早く妊娠に気づくためのスキルを教えること、相談できる環境を作ること、将来が描けるように導くこと」が大事だと指摘するとともに、望まない妊娠・貧困・暴力の世代間連鎖を断たなくてはいけないと主張した。
 また、「指定発言─行政の立場から」として、一瀬篤厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長が、若年妊婦からの相談に対応して行う出産への経済的支援、社会的養護または婦人保護の制度による保護・支援について概説し、更なる理解と協力を求めた。
 それぞれの講演の後、シンポジストと参加者の間で活発な質疑応答が行われ、講習会は終了となった。

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